ウェルテル @ メトロポリタン・オペラ 〜 グリゴーロを聴きに行ったと思ったら。。。

先日の「ロメオとジュリエット」の好唱で、すっかりメトの次代を担うスターとなったヴィットリオ・グリゴーロ。その彼が続けて出演したのが、「マノン」と並ぶマスネの代表作、「ウェルテル」。こちらの歌唱も評判が良く、楽しみにメトへ!

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と思ったら、公演最終日だったこの日は、グリゴーロが出演していない事をプログラムを見て知る… 当日は、フランスのテナー、ジャン=フランソワ・ボラスがウェルテル役だった。相手役のシャルロットイザベル・レナード

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さて、気を取り直してそのボラス。すでに2014年のメトの公演でこの役を歌ってメト・デビューしており(その時は未聴)、ヨーロッパを中心に各地の歌劇場での実績も十分。リリックな声質だが声量・高音の伸びも十分で、なかなかの歌唱で、観客からも盛大な拍手を受けていた。惜しむらくは、フォルテで声を全開にしている時は良いのだが、ピアノからメゾフォルテ、かつ中〜低声域では歌唱が不安定に聴こえ、メロディー・ラインが綺麗に浮かび上がってこないきらいがあった事だろうか。

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ウェルテルが恋い焦がれるシャルロット役のレナード、メトで活躍し始めた頃は、声量が小さめという事もあるのか、メトの広大な空間では、表現の幅が狭いように聴こえるきらいがあったのだが、最近は情感を上手に歌に込められるようになってきたように感じる。本日のシャルロット役も感情のこもった歌唱で、印象的だった!

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二人の主役を支える他のキャスト、シャルロットの妹ソフィー役のアンナ・クリスティシャルロットの夫アルベール役のデイヴィッド・ビジックらも丁寧な歌いぶりで好印象。

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指揮はイングリッシュ・ナショナル・オペラの音楽監督を2015年まで務め、現在はベルゲン・フィルの音楽監督であるエドワード・ガードナーマスネの音楽はフランス・オペラらしい流麗でロマンチックな旋律の中に、ワーグナーを色濃く思わせる響きが感じられる独特なものだが、その音楽を十分に表現しきれていない感じで、もどかしさが残った。

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2014年にプレミエ上演されたリチャード・エアの演出は、このロマンチックなオペラを楽しむのに過不足のないもの。もっと上演されてもいい優れたオペラだと思うのだが、私が足を運んだ日がメトでは87回目の上演だった。

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Werther (1892年、ウィーン宮廷劇場にて初演)
演出: Richard Eyre
指揮: Edward Gardner
Werther: Jean-Francois Borras
Charlotte: Isabel Leonard
Sophie: Anna Christy
The Baliff: Maurizio Muraro
Albert: David Bizic ほか
2017年3月9日、メトロポリタン歌劇場


⇒ カウフマンが出演した2014年のメト「ウェルテル」感想

⇒ レナード出演のメト「フィガロの結婚」感想

⇒ ガードナー指揮のメト「ばらの騎士」感想
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テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

清教徒 @ メトロポリタン・オペラ 〜 美声の競演!

本日のメトの演目は、ベルカント・オペラの傑作とされながら上演頻度はそれほど高くない、ベッリーニ最後のオペラ「清教徒」

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2013-14年シーズン以来、3年ぶりの上演となった今回の舞台は、ハヴィエル・カマレーナディアナ・ダムラウという注目の顔合わせ!

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先日のメト「セヴィリアの理髪師」をもって、アルマヴィーヴァ伯爵役からの引退を発表したカマレーナ、これからより重い声の役へとレパートリーを広げていく事が期待されているが、まずはベルカント・オペラ屈指のテノールの難役として知られるこのアルトゥーロ役

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ハイCはおろか、第3幕ではハイFまで要求されるとんでもない役だが、実演でハイFを実際に歌う人はほとんどおらず、この日のカマレーナも聴衆からの期待をよそに、安全運転に徹したのか、音を下げて歌っていた。先日のセヴィリアの理髪師ではやや高音の伸びやかさに欠いている感じで、今回も最高域での声の輝かしさ・力強さはいつもの彼からすると、やや物足りない感じがしたのだが、アジリタは安定していて、ハイDまできっちりと歌いきっていたのには感嘆!盛大な拍手の中、「ハイFは?」というヤジが聴こえたが、それは酷というものだろう。

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対するエルヴィーラ役ダムラウ、最近はメトでの主要な役は彼女が歌う事が多くなってきていて、メトの大黒柱的存在となった感がある彼女、先日の「ロメオとジュリエット」では、やや声が疲れているような印象を受け、今回も出だしはそういう感じだったのだが、尻上がりに調子を上げてきて、特に3幕のカマレーナとのデュエットは素晴らしく感動的で、ベルカント・オペラの醍醐味を堪能させてくれた!

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主役二人をサポートする重要な役割を担うバリトンの二人、ジョルジョ役ルカ・ピサローニリッカルド役アレクセイ・マルコフは共に堅実な歌唱だったが、主役二人の充実ぶりに比べると少し影が薄い感じ。

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指揮はメトではおなじみのマウリツィオ・ベニーニ。安全運転に徹したサポートぶりという感じだったが、ロッシーニベルカント系のレパートリー、たまには他の指揮者でも聴いてみたい!

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1976年にプレミエ上演が行われたサンドロ・セクイの舞台は昔のメトらしい、伝統的なものだが、ベルカントものを歌える素晴らしい歌手が増えてきた現在、そろそろ新しい演出を期待したいところ。

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I Puritani (1835年、パリ・イタリア劇場にて初演)
演出: Sandro Sequi
指揮: Maurizio Benini
Elvira: Diana Damrau
Arturo: Javier Camarena
Riccardo: Alexey Markov
Giorgio: Luca Pisaroni
Bruno: Eduardo Valdes ほか
2017年2月10日、メトロポリタン歌劇場


⇒ 2014年の前回上演感想

⇒ カマレーナ出演のメト「セヴィリアの理髪師」感想

⇒ ダムラウ出演のメト「ロメオとジュリエット」感想

⇒ ピサローニ出演のメト「フィガロの結婚」感想

⇒ マルコフ出演のメト「イル・トロヴァトーレ」感想

テーマ : ニューヨーク
ジャンル : 海外情報

ロメオとジュリエット @ メトロポリタン・オペラ 〜 注目の新演出とスターの地位を確立したヴィットリオ・グリゴーロ

あまりにも有名なシェイクスピアの名作をオペラ化したグノーのロマンチックな作品、ロメオとジュリエット。比較的マイナーなオペラの割にはメトでは人気の高いこの作品、2011年以来6年ぶりとなる今シーズンの舞台はバートレット・シャーによる新演出となった。

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今回の恋人たちを演じるのは、ヴィットリオ・グリゴーロディアナ・ダムラウという、注目の顔合わせ。

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まずはロメオ役のグリゴーロ「パヴァロッティ2世」との触れ込みで登場した2010年のメト・デビュー(ラ・ボエ−ム)時は、声のコントロールが十分ではなく、やや不安定な歌いぶりだったが、最近は安定感が増し、今回は持ち前のイタリアン・テナーらしい美声と豊かな声量で、若々しく情熱的にこの役を歌っていた!

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そしてジュリエット役のダムラウ。いつも安定感抜群の彼女なのだが、今回は声帯がやや疲れているような感じで、高音域で少し声が硬くなり、詰まり気味に聞こえるなど、ムラのある歌いぶりと感じたが、それでも存在感はさすがで、情感豊かにこの役を歌いきっていた。

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ロマンチックなデュエットのシーンなどは二人の息もピッタリで聴きごたえ十分、よほど満足のいく舞台だったのか、終演後にグリゴーロが思わずダムラウを抱き上げたほど!

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基本的にこの二人中心に展開されるオペラだが、脇を固める歌手陣もローレンス神父ミハイル・ペトレンコらが手堅い歌唱で主役を盛り立てていた。中でも、狂言回し的存在のステファーノ役のヴィルジニー・ヴェレスの伸びやかな歌唱が印象的だった。

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指揮は日本でもおなじみのジャナンドレア・ノセダ。フランス音楽のイメージはあまりない人だが、持ち前のダイナミックな音楽づくりはそのままに、グノーのロマンチックな旋律もよく歌わせていた。

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メトでもすっかりおなじみの存在のシャーの舞台は、すでに2008年のザルツブルク音楽祭でプレミエ上演され、ミラノ・スカラ座などでも上演されたものだが、少し平凡な感じだろうか。個人的には、以前のギイ・ ヨーステンのロマンチックさ満点の舞台の方が好み。

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今回の上演で、グリゴーロの時代を担うイタリアン・テナーとしての地位を確立させた感じ。今後も楽しみです!

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Romeo et Juliette (1867年、パリ・リリック劇場にて初演)
演出: Bartlett Sher
指揮: Gianandrea Noseda
Juliette: Diana Damrau
Romeo: Vittorio Grigolo
Frere Laurent: Mikhail Petrenko
Stephano: Virginie Verrez
Tybalt: Diego Silva
Paris: David Crawford
Capulet: Laurent Naouri
Mercutio: Elliot Madore
Gertrude: Diana Montague
Gregorio: Jeongcheol Cha
Benvolio: Tony Stevenson ほか
2017年1月21日、メトロポリタン歌劇場


⇒ 2011年公演感想

⇒ シェア演出のメト「オテロ」感想

⇒ グリゴーロ出演・シェア演出のメト「愛の妙薬」感想

⇒ ダムラウ出演メト「真珠採り」感想

⇒ ペトレンコ出演・シェア演出のメト「セヴィリアの理髪師」感想

テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

セヴィリアの理髪師 @ メトロポリタン・オペラ 〜 カマレーナ最後の伯爵役!

今やすっかりメトの人気舞台の一つとなった、バートレット・シャー演出のセヴィリアの理髪師

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今シーズンは、アルマヴィーヴァ伯爵に今やすっかりスターとなったハヴィエル・カマレーナフィガロにこの役を得意とするペーテル・マッテイ、ロジーナに、近年注目を集めている南アフリカ出身の新星、プリティ・イェンデという、メトならではの豪華キャスト!

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やはり注目は、今回のメト公演を最後に、アルマヴィーヴァ伯爵役から引退すると宣言しているカマレーナ。あのフローレスをも凌ぐ力強いコロラトゥーラで一躍スターダムに上がった彼だが、私が行った日はやや不調だったのか、声のコントロールにムラがあったような印象。それでもメトパヴァロッティを超える3度のアンコールに応えた輝かしく伸びやかな美声はやはり素晴らしく、観客から盛大な拍手を浴びていた。この後に控えている清教徒も楽しみ!

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フィガロ役のマッテイも、声の威力は相変わらずで素晴らしい歌唱。いつもに比べ、少し歌が粗い感じもしたが、最近はなかなか彼のようなフィガロの歌唱には出会えない!

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本来はメゾソプラノ役のロジーナを歌ったのは、リリック・ソプラノとして最近注目を集めている南アフリカ出身のプリティ・イェンデ。伸びやかな美声はなかなかのものだが、この役は私としてはメゾソプラノの方が好み。。。

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ドン・バルトロ役のマウリツィオ・ムラーロドン・バジリオ役のミハイル・ペトレンコはそれぞれ芸達者ぶりを存分に発揮していて、こういったところにも隙がないのが、メトの凄いところ!

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指揮はメトロッシーニものをほぼ一手に引き受けている感があるベテランのマウリツィオ・ベニーニ。彼の指揮ではすでにこのオペラを数回聴いているのだが、今回は速い部分が妙にせわしなく早すぎる感があり、音楽の収まりが悪い印象。どうしたのだろうか。

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Il Barbiere di Siviglia (1816年、ローマ・アルジェンティーナ劇場にて初演)
演出: Bartlett Sher
指揮: Maurizio Benini
Figaro: Peter Mattei
Rosina: Pretty Yende
Almaviva: Javier Camarena
Dr. Bartolo: Maurizio Muraro
Don Basilio: Mikhail Petrenko ほか
2017年1月18日、メトロポリタン歌劇場


⇒ 2014年公演感想

⇒ ベニーニ指揮のメト「ロベルト・デヴリュー」感想

⇒ マッテイ出演のメト「タンホイザー」感想

⇒ カマレーナがアンコールに応えたメト「ドン・パスクワーレ」感想

テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

ナブッコ @ メトロポリタン・オペラ 〜 全盛期のレヴァインを思わせる熱演!

2016年最後のメトでのオペラは、ヴェルディの出世作、ナブッコ

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今回の上演は、前音楽監督のジェームズ・レヴァインに、タイトル・ロールにはプラシド・ドミンゴという、かってのゴールデン・コンビの共演が目玉だったのだが、ドミンゴヴェルディ・バリトン役にどうしても違和感を拭えない私は、ジェリコ・ルチッチが出演した日を選択。

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そのルチッチだが、声の威力はなかなかなのだが、相変わらず感情表現の幅が感じられない薄口の歌唱。2015年11月のリゴレットでは、一皮むけたかと思われたのだが、また元に戻ってしまったようで残念。やはりドミンゴの回にすればよかったか…

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ナブッコと並んで、このオペラで重要な役割を果たすアビガイッレ役ウクライナのソプラノ、リュドミラ・モナスティルスカ。私が彼女を聴いたのはメト・デビューだった2012年12月のアイーダ。その後もメトに出演していたにもかかわらず、何故か聴く機会に恵まれなかったのだが、今回久しぶりに彼女の歌唱を聴いたが、持ち前のスケールの大きさ、声の美しさに加え、この役に必要な激しい感情表現も十分で印象深かった!

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この他、フェネーナ役ジェイミー・バートンイズマエーレ役ラッセル・トーマスザッカリア役ドミトリー・ベロセルスキーは、それぞれ安定した歌唱。特にトーマスの伸びやかな歌声が好ましかった。

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実はこの日一番目立ったのは指揮のレヴァイン。全盛期を彷彿とさせる気力みなぎる音楽作りで、ヴェルディの雄弁な音楽をものの見事に表現していた! この前聞いた「アルジェのイタリア女」では、音楽に生気が欠ける印象を受けたのが気がかりだったのだが、少し安心。

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そして忘れてはならないのが合唱。イタリアの第二の国家と言われる「わが想いよ、金色の翼に乗って行け」メトの合唱団が感動的に歌ってくれて、観客の盛大な拍手に応えてアンコールも!2001年にプレミエ上演が行われたエリジャ・モシンスキーの大がかりな舞台は、この作品のスケールにふさわしいものと感じられる。

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Nabucco (1842年、ミラノ・スカラ座にて初演)
演出: Elijah Moshinsky
指揮: James Levine
Nabucco: Zeljko Lucic
Abigaille: Liudmyla Monastyrska
Fenena: Jamie Barton
Ismaele: Russell Thomas
Zaccaria: Dmitry Belosselskiy
2016年12月30日、メトロポリタン歌劇場


⇒ 2011年10月の前回上演感想

⇒ ルチッチ出演のメト「サロメ」感想

⇒ モナスティルスカ出演のメト「アイーダ」感想

⇒ レヴァイン指揮のメト「アルジェのイタリア女」感想

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