魔笛 @ メトロポリタン・オペラ 〜 歌手を支えるレヴァインの熟練の指揮!

少し気温が上昇した土曜日の昼下がり、メトのマチネー公演に出向く。本日の公演は「魔笛」

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最近のメトではクリスマスから年末にかけてのホリデー・シーズンに、ファミリー向けにセリフを英語にして全体も短縮したバージョンを上演するようになったため、逆にオリジナルの上演頻度が下がったのが残念。今回はオリジナルとしては、2014年以来3年ぶりの上演で、歌手陣の顔ぶれは前回観た時からはかなり変わっている。指揮は前音楽監督のジェームズ・レヴァイン

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今回の公演でまず印象的だったのは、レヴァインの指揮。一時期少し不調かな、と感じさせる時期があったのだが、今回の公演では、かってのエネルギッシュさは後退した感じではあったものの、その分精妙さが際立ち、歌手たちを万全に支えて、モーツァルトの音楽の素晴らしさを十全に伝えてくれた!

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歌手陣は総じて高水準の歌唱。その中でも目(耳?)を引いたのが、今回がメト・デビューとなったパミーナ役の南アフリカ出身のソプラノ、ゴルダ・シュルツ。温かみを感じさせる伸びやかで美しい声で、安定感も十分。素晴らしい歌唱で、同郷で一足先にメト・デビューし、注目度上昇中のプリティ・エンデと共に、今後の活躍が楽しみ!

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対するタミーノ役はアメリカ出身のテナー、チャールズ・カストロノーヴォ。こちらはバリトンを思わせるような声質がこの役に合っていない感じがしたのだが、破綻のない歌いぶりでまずまず。

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夜の女王はアメリカの若手キャスリン・レヴェク。2014年の魔笛でもこの役を歌っていたらしいのだが、私が行った回は別の人が歌っていて、彼女の歌を聴くのは今回が初めてだったのだが、破綻のないコロラトゥーラ、超高声域でも無理のなく伸びていく美声で素晴らしかった!こちらも今後もっと聴いてみたい歌手!

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パパゲーノ役は前回に引き続きオーストリアのバリトン、マーカス・ウェルバで、すっかりこなれたコミカルな演技と安定した歌唱で満足のいく出来。

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ザラストロ役のルネ・パーペ、彼が歌うと舞台全体が引き締まるのは相変わらずで、威厳のある歌唱はこの役にぴったり。この役で彼の歌をもっと聴いたイメージがあったのだが、今回が初めてだった!

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このほか、モノスタートス役のグレッグ・フェッダーリー弁者役のクリスチャン・ヴァン・ホーンらも手堅い歌唱。

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彼女が手がけた大ヒット・ミュージカル、ライオン・キングと歌舞伎のいでたちを融合させたようなジュリー・テイモアの舞台は、相変わらずメルヘンチックだが、不思議に愉しさがあまり伝わってこない舞台。それでも、この傑作オペラの素晴らしさを味わうのには十分!

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Die Zauberflote (1791年、ウィーン・ヴィーデン劇場にて初演)
演出: Julie Taymor
指揮: James Levine
Tamino: Charles Castronovo
Pamina: Golda Schultz
Papageno: Markus Werba
Papagena: Ashley Emerson
Queen of the Night: Kathryn Lewek
Zarastro: Rene Pape
Monostatos: Greg Fedderly
The Speaker: Christian Van Horn ほか
2017年10月14日、メトロポリタン歌劇場


⇒ 2014〜15年シーズンの公演 感想

⇒ レヴァイン指揮のメト「イドメネオ」感想

⇒ パーペ出演のメト「トリスタンとイゾルデ」感想
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テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

ノルマ @ メトロポリタン・オペラ 〜 メトもシーズン開幕!

メトの新しいシーズンは新演出のベッリーニのノルマで始まったが、私は夏の陽気が戻ったかのような土曜日、マチネー公演に足を運んだ。

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今回の新演出は、メトではドニゼッティのテューダー三部作の演出等を担当したイギリスの演出家デヴィッド・マクヴィカーの手になるもので、タイトル・ロールに、前回2013年の上演でこの役のメト・デビューを果たしたソンドラ・ラドヴァノフスキーアダルジーザ役ジョイス・ディドナートポリオーネ役ジョセフ・カレヤという注目のキャスト。前回上演時では、アンジェラ・ミードノルマを歌った舞台に行ったので、ラドヴァノフスキーが歌うのを聴くのは今回が初めて!

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さて、そのラドヴァノフスキーノルマだが、ドラマティックな歌唱力と高度なコロラトゥーラの技術、それに細やかな感情表現が必要とされるこの難役を見事に歌いこなしていて、素晴らしかった。かっては声量があるスケールの大きな歌ではあるものの、時折コントロールが粗くなる印象があったのだが、2016年の「ロベルト・デヴリュー」、そして今回のノルマと、声のコントロールと高声域の美しさ、感情表現の細やかさの両立が一段と成熟してきた感があり、観客からも万雷の拍手を受けていた!

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対するアダルジーザディドナートラドヴァノフスキーに一歩も引けを取らない歌唱で、こちらも素晴らしい出来!

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ポリオーネ役カレヤは、いつもの伸びのある声でそつなくポリオーネを歌っていたが、1幕1場の聴かせどころ、「彼女を連れてヴィーナスの祭壇へ」で、まだ声が温まっていなかったのか、高音が潰れてしまったのが残念。

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ノルマの父オロヴェーゾ役マシュー・ローズは手堅い歌唱で、主役3人をきっちりと支えていた。

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個々のアリアと合唱が緊密に結びついているこのオペラでは、合唱団の出来が重要になってくるのだが、そこはメトの合唱団、相変わらずの素晴らしさでオペラを盛り立てていた!

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マクヴィカーの演出は、全体的に彼が演出したメトテューダー三部作同様、暗いトーンで統一されていて、ややモノトーンな感じ。突飛なところは何もなく、安心して観れる舞台だが、逆にもう少し新鮮味が欲しいところ。

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指揮は主にヨーロッパの歌劇場で活躍するカルロ・リッツィ。安定した音楽運びはさすがで、歌手たちを万全にサポートしていたが、もう少し生き生きとした感情を引き起こさせるものが欲しいような感じも、と言ったら贅沢だろうか。

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何れにしても、主役3人の素晴らしい歌唱でこのオペラの魅力を存分に味わう事が出来た公演。同じベルカント・オペラの名作、ドニゼッティのルチアと並ぶ傑作であるこの作品、メトでは私が観た公演が通算160回目の上演と、これまで599回と、なぜか大きく引き離されている。もっと上演して欲しい演目なのですが…

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Norma (1831年、ミラノ・スカラ座にて初演)
演出: Sir David McVicar
指揮: Carlo Rizzi
Norma: Sondra Radvanovsky
Polione: Joseph Calleja
Adalgisa: Joyce DiDonato
Oroveso: Matthew Rose
Flavio: Adam Diegel
Clotilde: Michelle Bradley ほか
2017年10月7日、メトロポリタン歌劇場


⇒ 2013年の前回上演感想

⇒ マクヴィカー演出・ラドヴァノフスキー、ディドナート出演のメト「ロベルト・デヴリュー」感想

⇒ カレヤ出演のメト「マクベス」感想

テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

ばらの騎士 @ メトロポリタン・オペラ 〜 ルネ・フレミング最後の元帥夫人!

今シーズン最後のメトは、新演出となったR・シュトラウスの傑作、ばらの騎士

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カナダの演出家、ロバート・カーセンによる新演出となった今回の舞台だが、それ以上に話題となったのが、長年にわたり世界中のオペラハウスで活躍してきた名ソプラノ、ルネ・フレミングにとって最後となる元帥夫人

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最近では声の衰えを巧みな歌い口でカバーしてさすがと思わせる歌唱を披露してくれていたフレミングだが、彼女の当たり役の一つであるこの元帥夫人では、歌い口の美しさはもちろん、情感のこもった気品溢れる歌唱で、さすがだった!私が行ったのは最終日の公演だったのだが、終演後舞台上から紙吹雪が撒かれ、観客からも惜しみない拍手が注がれていた。

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オクタヴィアンは当代きっての人気メゾ、エリーナ・ガランチャ。美声の持ち主ではあるものの、かっては薄口な表現が物足りなかったものだが、最近は感情表現にも奥行きを感じるようになり、この役はそれほど深い感情表現が要求されるわけではないとはいえ、こちらも情感のこもった歌で盛り上げていた。

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ゾフィー役は若手コロラトゥーラ・ソプラノのエリン・モーリーだが、こちらは役に相応しい可憐な歌唱!

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オックス男爵役はオーストリア出身のバス、ギュンター・グロイスベック。声量は十分だが、やや真面目な感じのオックス男爵といった感じだった。

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この他では、テノール歌手役を務めたマシュー・ポレンザーニが伸びやかな美声で聴衆を魅了していた。

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カーセンの舞台は、時代設定や舞台背景などを変えたりせず、意外にオーソドックスで洗練されたものになっていて、フレミングの晴れ舞台に相応しいものだった。

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最後に指揮のセバスティアン・ヴァイグレ。2008年よりフランクフルト歌劇場の音楽監督を務め、ヨーロッパを中心に活躍している指揮者だが、メトにも先般上演されていたフィデリオを始め、これまでに数度客演している。今まではどちらかといえば、それほど印象に残った指揮者ではなかったのだが、今回はニュアンスに富んだ、素晴らしい出来栄えで、この名作オペラを堪能するのに相応しい音楽作りだった!

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ばらの騎士(1911年、ドレスデン王立劇場にて初演)
演出: Robert Carsen
指揮: Sebastian Weigle
The Marschallin: Renee Fleming
Octavian: Elina Garanca
Sophie: Erin Morley
Baron Ochs: Gunther Groissbock
Italian Singer: Matthew Polenzani ほか
2017年5月13日、メトロポリタン歌劇場


⇒ 2013 - 14年シーズンのメト「ばらの騎士」感想

⇒ カーセン演出のメト「ファルスタッフ」感想

⇒ ヴァイグレ指揮のメト「フィデリオ」感想

⇒ フレミング出演のメト「メリー・ウィドウ」感想

⇒ ガランチャ出演のメト「ロベルト・デヴリュー」感想

⇒ モーリー出演のメト「ホフマン物語」感想

⇒ グロイスベック出演のメト「タンホイザー」感想

⇒ ポレンザーニ出演のメト「イドメネオ」感想

テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

シラノ・ド・ベルジュラック @ メトロポリタン・オペラ 〜 アラーニャが珍しいアルファーノのオペラを熱唱!

シーズンもラスト・ストレッチに入ったメト。本日は、珍しいアルファーノのオペラ、シラノ・ド・ベルジュラック

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プッチーニの遺作「トゥーランドット」を補筆完成させた作曲家として知られているアルファーノだが、代表作とされるこのシラノを含め、その作品はほとんど知られていない。今回のメト公演でタイトル・ロールを務めるロベルト・アラーニャプラシド・ドミンゴが近年、上演に尽力したおかげで次第に知られるようになってきたこのオペラ、メト初演も2005年と本当に最近の話。今回の上演は、アラーニャがタイトル・ロールを務める他、ロクサーヌ役は当初パトリシア・ラセットが歌う予定だったのが、病気キャンセルのため、若手ソプラノのジェニファー・ロウリーが代役として起用されている。

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エドモンド・ロスタンの有名な同名戯曲をアルファーノが1936年にオペラ化したこの作品、ローマでの初演はイタリア語版だったが、今回のメトでの上演は、その4ヶ月後にパリで上演された、ロスタンの原作を生かしたフランス語版。その音楽は印象派の影響を受けたアルファーノの作品らしく、洗練された響きやメロディーに彩られているが、一回聴いたら忘れないようなアリア等はなく、少し印象が弱い感じ。

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さて、この作品の復活に尽力したアラーニャによるシラノ、さすがフランス人だけあって、フランス語のディクションは美しく、持ち前の流麗なカンタービレを生かした流麗かつ情熱的な歌唱はさすがだった。大きな鼻をつけての歌唱は呼吸が難しくて大変だったらしいが、その健闘に拍手!

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シラノが密かに思いを寄せるロクサーヌ役のロウリーは、伸びやかな美声を生かしたなかなかの歌いぶりで、アラーニャを相手に一方も引かない歌唱。これからが楽しみなソプラノ!

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ロクサーヌが思いを寄せるクリスチャン役はブラジルのテノール、アターラ・アヤンで、こちらもまずまずの歌いぶり。

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指揮はメトでおなじみのマルコ・アルミリアートだが、あまりパッとしない感じ。それが音楽のせいなのか、指揮のせいなのかは良く分からないが…

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2005年のメト初演から使われているフランチェスカ・ザンベッロの舞台はオペラの時代背景に忠実なもの。全体的に楽しめる作品で、特にアラーニャロウリーの歌唱が光っていました!

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Cyrano de Bergerac (1936年、ローマ・王室歌劇場にて初演)
演出: Francesca Zanbello
指揮: Marco Armiliato
Cyrano: Roberto Alagna
Roxane: Jennifer Rowley
Christian: Atalla Ayan
Ragueneau: Roberto de Candia
Montfleury: Tony Stevens
Le Bret: David Pittsinger ほか
2017年5月6日、メトロポリタン・オペラ


⇒ アラーニャ出演のメト「蝶々夫人」感想

⇒ アルミリアート指揮のメト「マノン・レスコー」感想

テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

さまよえるオランダ人 @ メトロポリタン・オペラ 〜 ネゼ=セギャン登場!

昨年6月に、これまで40年間音楽監督の座にあったジェームズ・レヴァインの後継として、2020−21年シーズンからメトの音楽監督に就任する事が発表された、カナダの俊英ヤニック・ネゼ=セギャンワーグナーのさまよえるオランダ人の公演で、就任発表後、メト初登場!

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2009-10年シーズン以来の上演となった今回の公演、演出は1989年以来のアウグスト・エファーディングのもので、タイトル・ロールには、ドイツ物を歌わせたら第一人者との評価が固まりつつあるミヒャエル・ヴォッレが満を持しての登場!

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まずはネゼ=セギャンの指揮。これがとにかく素晴らしかった! これまでこのオペラで、これだけ雄弁に、ニュアンス豊かにオーケストラが鳴り響いたのは聴いた事がなく、メトで聴いた彼の演奏の中で、疑いなく最上の演奏で、本当に感動した!

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オランダ人ヴォッレは、朗々たる声を生かした堂々の歌唱は素晴らしかったのだが、割合明るい声質なので、ダークなオランダ人とはちょっとキャラクターの違いを感じるところもあった。

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ゼンタ役は、アメリカの若手ソプラノ、アンバー・ワグナーだったが、こちらは豊かな声量と美しい声で、期待を上回る歌唱。メトへの出演は2011年以来との事だが、もっと出演して欲しい歌手!

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この他では、強靭な声でダーラント役を歌ったフランツ=ヨーゼフ・セリグとリリカルなテナーのベン・ブリスによるエリックが印象的だった。

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今は亡きドイツの名演出家エファーディングの舞台も、時代設定を新しくはしているものの、オペラに沿ったオーソドックスな舞台。それにしてもネゼ=セギャンの指揮には感嘆した。フィラデルフィア管の音楽監督職をはじめ、世界各地で引っ張りだこな彼、来シーズンもパルジファルだけの出演だが、今から音楽監督着任が待ち遠しい!

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Der Fliegende Hollander (1843年、ドレスデン・宮廷劇場にて初演)
演出: August Everding
指揮: Yannick Nezet-Seguin
The Dutchman: Michael Volle
Daland: Franz-Joseph Selig
Senta: Amber Wagner
Erik: Ben Bliss
2017年5月4日、メトロポリタン歌劇場


⇒ 2009-10年シーズンの公演感想

⇒ ネゼ=セギャン指揮のメト「オテロ」感想

⇒ ヴォッレ出演のメト「ニュルンベルクのマイスタージンガー」感想

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