ピエール・ブーレーズを偲んで: 二つのオケコン

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バルトーク: 管弦楽のための協奏曲 ほか
ピエール・ブーレーズ指揮 シカゴ交響楽団(1992年 録音)

Bartok 2
バルトーク: 管弦楽のための協奏曲 ほか
ピエール・ブーレーズ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック (1972年 録音)

現代を代表する作曲家で、指揮者としても幅広く活躍したピエール・ブーレーズが1月5日に90歳で亡くなった。

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作曲家としては、十二音音楽の理論をさらに推し進めたセリー技法の完成者として有名だが、理論に偏ったように見えるその音楽は、彼の作品で家に唯一あったピアノ・ソナタ第2番(ピアノはマウリツィオ・ポリーニ)を聴いても、あまり魅力的とは思えない。

Sonata 2

指揮活動も作曲に劣らず活発に行い、BBC響の首席指揮者やニューヨーク・フィルの音楽監督などの主要ポストを務め、CBSグラモフォンなどに膨大な録音も行っている。

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 1973年、ニューヨーク・フィルの音楽監督在任中のブーレーズ

録音に残されたレパートリーは、モーツァルトベートーヴェンなどのドイツ古典派音楽こそないものの、得意の近現代の音楽はもとより、ワーグナーのオペラまで幅広い。

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大きな話題を呼んだバイロイト音楽祭でのニーベルンクの指環の全曲録音

その音楽作りは、自身の作品同様、感情に流されない、いわゆる理知的なイメージが強く、晩年に録音したマーラーの交響曲などは、バーンスタインなどの演奏とは対極にあるかのようなクールな演奏で、あまりマーラーらしさを感じさせないものになっているが、ストラヴィンスキーやバルトーク、それにラヴェルなどの演奏は、彼の特質が最大限に発揮された素晴らしい演奏の数々を残してくれた。

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 最晩年の指揮姿

私がその中でも愛聴しているのが、バルトークの代表作である管弦楽のための協奏曲の録音。ニューヨーク・フィルの音楽監督を務めている頃、1972年に録音されたものと、その20年後、1992年にシカゴ響を指揮して録音した盤の2種類が残されていて、いずれも名盤として知られている。

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 同時代の作曲家仲間たち、ルイジ・ノーノカールハインツ・シュトックハウゼン

マルチ・チャンネルで効果的に響くように、特殊な楽器配置を行った上で録音した1972年盤(楽器配置はCDジャケット参照)は、各声部の明確な描き分けと歯切れの良さが身上。一方で、1992年盤は各声部の明瞭さはそのままに、ゆったりとしたテンポでスケールの大きさも合わせ持つ、まさに円熟の演奏。どちらの演奏も好きだが、シカゴ響の優秀な機能性を生かし切った92年盤に軍杯が上がるだろうか。でも、二つとも是非聴いて欲しい録音です!

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     ニューヨーク・フィルの前任の音楽監督だったレナード・バーンスタイン
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テーマ : 音楽のある生活
ジャンル : 音楽

二人のピアノのミューズ: ユジャ・ワン と アリス=紗良・オット

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トランスフォーメーション〜ストラヴィンスキー、スカルラッティ、ブラームス、ラヴェル
ストラヴィンスキー: ペトルーシュカからの3楽章
スカルラッティ: ピアノ・ソナタ ホ長調 K.380
ブラームス: パガニーニの主題による変奏曲
スカルラッティ: ピアノ・ソナタ ヘ短調 K.466
ラヴェル: ラ・ヴァルス
ユジャ・ワン (ピアノ)


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リスト: 超絶技巧練習曲集
アリス=紗良・オット (ピアノ)

11月末から12月初旬にかけて、現在注目度上昇中の若手実力派ピアニスト二人がニューヨークでリサイタルを開く予定。

北京生まれのユジャ・ワンは現在27歳。6歳からピアノを始め、北京中央音楽院で学んだ後、2001年に仙台国際音楽コンクールで第3位、審査委員特別賞もあわせて受賞し、2002年から2008年までフィラデルフィアカーティス音楽院で学び、在学中の2003年にチューリッヒデイヴィッド・ジンマン指揮のチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団と共演してデビューを果たしている。

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評論家の故・吉田秀和氏も感心した超絶技巧で評判を呼び、現在世界中でソロ・リサイタルや一流オーケストラとの共演など、華々しい活躍をしている。

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このアルバムは、クラシックの名門、グラモフォン・レーベルと契約後、2010年にリリースされた第2弾のアルバムで、彼女の超絶技巧を披露するのに好適なレパートリーが選ばれている。

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ストラヴィンスキーバレエ音楽「ペトルーシュカ」の音楽をピアノ曲にした「ペトルーシュカからの3楽章」は、ポリーニ若き頃の凄まじい演奏が有名だが、切れ味鋭いポリーニに較べ、彼女の演奏はなたでばっさり切ったような豪快な演奏!最後のラヴェルも超絶技巧全開・華やかさ満開の演奏で、スポーツの試合を見るかのような感覚が味わえる。

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ここのところ毎年カーネギー・ホールに客演している彼女だが、コンサートの都度進化した演奏を聴かせてくれていて、技巧だけでなく、昨年のリサイタルでは、ショパンのソナタでの抒情的な旋律の歌わせ方も素晴らしかった。今や疑いなく、若手ピアニストのトップの存在の彼女、今年のリサイタルではどのような演奏を聴かせてくれるか楽しみ!

⇒ 昨シーズンのリサイタル感想

一方のアリス=紗良・オットは、1988年生まれの26歳。ドイツ人の父親と日本人の母親の下、ドイツで生まれ育ち、子供の頃から各種コンクールで優勝するなど、子供の頃からその才能は注目されていた。彼女も2008年にグラモフォンとレコーディング契約を結んで注目され、すでに日本でも人気の高い若手ピアニストとなっている。

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このCDは彼女のデビュー盤で、ユジャ同様、素晴らしい技巧で難曲ぞろいのこのリストの曲集を弾きこなしている。彼女もリストでデビューしたせいか、技巧の勝ったピアニストという印象が強いが、シューベルトベートーヴェンのソナタを聴いても、構成力の確かさや旋律の歌わせ方はなかなかで、ユジャとも甲乙つけがたい感じ。

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昨シーズンにニューヨークに来演した彼女だが、ライブハウスでの演奏で、ピアノの状況も良くなく、彼女のピアノの魅力を知るには物足りないコンサートだったが、今年も日曜の午前中のミニ・コンサート。是非、フル・コンサートで彼女の真価を発揮してもらいたいものなのだが...

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⇒ 昨シーズンのライブ感想

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

フランス・ブリュッヘンを偲んで ~ 古楽の演奏領域を広げた先駆者

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モーツァルト: 交響曲第40番/ベートーヴェン: 交響曲第1番
モーツァルト: 交響曲第40番ト短調, K550
ベートーヴェン: 交響曲第1番ハ長調, Op. 21
フランス・ブリュッヘン指揮 18世紀オーケストラ (1985年ライブ録音)


リコーダー奏者、指揮者として、現代における古楽器演奏の領域を大きく広げるパイオニアとして活躍してきたフランス・ブリュッヘンが8月13日に、79歳で亡くなった。

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1950年代から70年代にかけて、天才リコーダー奏者としてキャリアをスタートさせたブリュッヘン、当時まだクラシック音楽愛好家になじみの薄かった中世・ルネッサンスからバロックにかけての音楽を紹介するパイオニアの一人だった。

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「リコーダーのパガニーニ」と呼ばれたその超絶技巧を駆使してバロック音楽の名曲を録音した「涙のパヴァーヌ」など、当時としては異例のベストセラーとなったものだ。
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そのブリュッヘンがリコーダー奏者として引退する事を発表し、古典派・ロマン派の名曲をピリオド楽器で演奏する事を目的に、18世紀オーケストラを結成したのが1981年。 このCDは、確かその第1弾としてリリースされた録音だったと思うが、当時は引き締まったテンポ、ノン・ビブラート奏法によるピリオド楽器の清新な響きで一大センセーションを巻き起こしたものだった。

その後アーノンクールガーディナーらにより、ピリオド楽器によるモーツァルトベートーヴェンの音楽の演奏が普通となった今でも、この盤のフレッシュさは少しも色あせていない。特にベートーヴェンの最初の交響曲は、きびきびしたテンポ、細部まで見通しの良さと力強さ・推進力を高い次元でバランスさせた名演で、まさに初演時にはこのような響きがしていたのではないかと思わせるような演奏で、今回久しぶりに聴き返してみて、その魅力はいささかも減じていない事を痛感しました!

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ワーグナー: 「リング」ハイライト ~ 指揮者ロリン・マゼールを偲んで

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ワーグナー: 「ニーベルングの指環」オーケストラ・ハイライト
ロリン・マゼール指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (1987年録音)

アメリカ出身の指揮者、ロリン・マゼールが7月13日に死去。享年84歳だった。早くから神童と呼ばれ、世界のトップ・オーケストラを指揮していた割には、カラヤンバーンスタイン、はたまた同年代のクラウディオ・アバドらに較べても、名声で劣っていたようなイメージのある指揮者だった。

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巨匠然とした堂々とした演奏をしたかと思えば、スタンダードなレパートリーで、エッと思わせるような奇妙な演奏をしたりと、音楽スタイルがつかみどころのない感じだったのが災いしたのだろうか。

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それでもクリーブランド管弦楽団の音楽監督時代(1972~82年)には、クオリティの高い録音を数々リリースしていた。個人的には、ブラームスの交響曲全集など、今でもトップクラスの録音だと思う。

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クリーヴランド以降もウィーン国立歌劇場(1982~84年)ニューヨーク・フィル(2002~09年)などの音楽監督を務めたが、今ひとつ高い評価を得る事が出来なかった。録音も玉石混交の感があるが、その中ではベルリン・フィルを指揮して、ワーグナーのニーベルングの指環の聞きどころをオーケストラ演奏用にまとめたこの1枚は、オーケストラの優秀さを存分に生かしたスケールの大きな演奏で光っている。リリースされた時には録音の優秀でも話題になった1枚でした。

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ニューヨーク・フィルの音楽監督退任後も、度々客演していたマゼール、私も今回2度ほど聞く機会があったが、その中では、悠然としたテンポで押し切ったシベリウスの交響曲第2番の独特な演奏が強く印象に残っています。

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⇒ ニューヨーク・フィル演奏会 感想

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

祝・初演100周年! ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」

ストラヴィンスキー: バレエ音楽「春の祭典」
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サー・ゲオルク・ショルティ指揮シカゴ交響楽団 (1974年録音)

本日5月29日は、ストラヴィンスキーの傑作、「春の祭典(通称“ハルサイ”)」の記念すべき初演100周年! 数々の大作曲家とのコラボレーションにより、20世紀のクラシック音楽史上を飾る名作を生み出すもととなったセルゲイ・ディアギレフが、彼の率いるロシア・バレエ団の公演のために委嘱した本作は、1913年5月29日にパリ・シャンゼリゼ劇場で初演された際には、その原始的なリズムと強烈な不協和音の連続で一大スキャンダルを引き起こし、けが人が多数出る大騒ぎとなったほど。

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 初演時の舞台の様子

そのハルサイも、今ではすっかりコンサート・レパートリーの中核を占める作品となるほどポピュラーな存在となってしまった。今回、手元にあったこの曲のCDを聴き直してみて、改めて気に入ったのが今は亡きハンガリーの名指揮者、ショルティ(1912~97年)が当時の手兵、シカゴ交響楽団を指揮したもの。70年代半ばにリリースされた時は、彼が鍛え上げた同響の緻密なアンサンブル、とりわけ当時世界一といわれたブラス・セクションの威力を存分に生かしたストレートで豪快、かつ野性味あふれる演奏と、録音の良さで大きな話題を呼んだものだった。クラシック愛好者のみならず、ジャズやロック・ファンにもこの曲の素晴らしさを知らしめた名盤だが、今聴いても、やはりその素晴らしい演奏は数あるこの曲の演奏のなかでも筆頭に来るものと感じた。

当時のシカゴ響は鬼軍曹のショルティに徹底的に鍛え上げられていて、楽団員は、陰では彼の事を「絶叫する頭蓋骨(!)」と呼んでいたそうな。

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 ショルティ

その他、手元にあったCDの感想を簡単に:

<小澤征爾/ボストン響(1979年録音)>
小澤らしく、リズム感の良さが際立った演奏で、スピード感あふれる切れ味の良い演奏。この盤も当時録音の良さで話題となった。

<アンタル・ドラティ/デトロイト響(1981年録音)>
ハンガリーの名指揮者、ドラティの晩年の録音で、レコード・アカデミー賞を受賞した名盤。どっしりと構えていながら、豪快さ・歯切れの良さを兼ね備えた大家の演奏。

<ピエール・ブーレーズ/クリーヴランド管(1991年録音)>
作曲家でもあるブーレーズらしく、隅々まで整理された演奏。興奮感はないが、それでも迫力は十分。

<ケント・ナガノ/ロンドン・フィル(1991年録音)>
極めて真っ当で、スタイリッシュな演奏。

<エサ・ペッカ・サロネン/ロサンゼルス・フィル(2005年録音)>
これも作曲家のサロネンらしく、従来の演奏では聴こえてこなかったようなパッセージや響きが聴かれるのが面白い!

<ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン/オランダ放送フィル(2006年録音)>
新世代のハルサイを強く印象付ける、新鮮な響きとドライヴ感に満ち溢れた演奏。これもレコード・アカデミー賞を受賞している。

この他にも、LPで持っていたアバド/ロンドン響ティルソン・トーマス/ボストン響などのものも印象に残っている。テンポの極端さが話題を呼んだマゼール/ウィーン・フィルの異色の演奏なんてのも持っていましたが...

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