椿姫 〜 進境著しいヨンチェヴァのヴィオレッタ!

すっかりメトでもお馴染みになったウィリー・デッカー演出の「椿姫」。今シーズンはブルガリアのソプラノ、ソーニャ・ヨンチェヴァヴィオレッタに迎えての公演。

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2013年のリゴレットでのジルダ役メト・デビューして以来、ボエームのミミオテロのデスデーモナなど、順調に主要な役をこなしてきているヨンチェヴァヴィオレッタは2014-15年シーズンにすでにメトで歌っている(私は未聴)のだが、今回のメト出演ではさらに進化した歌を聴かせてくれた!

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彼女の声は、どちらかと言えば硬質な感じなのだが、低声域から高声域までムラがなく、トップノートでも輝かしく力強い。そういう意味では、病弱なというよりも、生命への欲求を感じさせるヴィオレッタなのだが、感情表現もなかなか細やかで、3幕それぞれ異なった歌唱表現が要求される屈指の難役を素晴らしく歌いこなしていた。細かいところは、まだまだ良くなっていくだろうし、これからもメトでの活躍が本当に楽しみ!

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アルフレード役アメリカの若手テナー、マイケル・ファビアーノ。こちらはトップノートの力強さはまずまずだが、見た感じ同様、ちょっと神経質なアルフレードといった感じ。

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アルフレードの父ジェルモン役はベテラン、トーマス・ハンプソン。前半の舞台で体調不良のため降板したりして心配していたが、当日は無事に出演。かっての威力あるバリトン声ではなくなって久しいが、抑えた歌いぶりが、かえってこの役に相応しい感じだった。

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タクトを取ったのは、サンフランシスコ歌劇場の音楽監督を務めるニコラ・ルイゾッティで、こちらは活気のあるテンポで、過不足のないサポートぶり。

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2005年のザルツブルク音楽祭アンナ・ネトレブコを一躍スターダムに押し上げたウィリー・デッカーの舞台は、主役のヴィオレッタに演技力が要求されるものだが、ヨンチェヴァはここでも無難にこなしていた。

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La Traviata (1853年、ヴェネツィア・フェニーチェ劇場にて初演)
演出: Willy Decker
指揮: Nicola Luisotti
Violetta: Sonya Yoncheva
Alfredo: Michael Fabiano
Germont: Thomas Hampson ほか
2017年3月11日、メトロポリタン歌劇場


⇒ 2012-13年シーズンのメト「椿姫」感想

⇒ ヨンチェヴァ出演のメト「オテロ」感想

⇒ ファビアーノ出演のメト「ラ・ボエーム」感想

⇒ ハンプソン出演のメト「ホフマン物語」感想
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テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

ウェルテル @ メトロポリタン・オペラ 〜 グリゴーロを聴きに行ったと思ったら。。。

先日の「ロメオとジュリエット」の好唱で、すっかりメトの次代を担うスターとなったヴィットリオ・グリゴーロ。その彼が続けて出演したのが、「マノン」と並ぶマスネの代表作、「ウェルテル」。こちらの歌唱も評判が良く、楽しみにメトへ!

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と思ったら、公演最終日だったこの日は、グリゴーロが出演していない事をプログラムを見て知る… 当日は、フランスのテナー、ジャン=フランソワ・ボラスがウェルテル役だった。相手役のシャルロットイザベル・レナード

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さて、気を取り直してそのボラス。すでに2014年のメトの公演でこの役を歌ってメト・デビューしており(その時は未聴)、ヨーロッパを中心に各地の歌劇場での実績も十分。リリックな声質だが声量・高音の伸びも十分で、なかなかの歌唱で、観客からも盛大な拍手を受けていた。惜しむらくは、フォルテで声を全開にしている時は良いのだが、ピアノからメゾフォルテ、かつ中〜低声域では歌唱が不安定に聴こえ、メロディー・ラインが綺麗に浮かび上がってこないきらいがあった事だろうか。

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ウェルテルが恋い焦がれるシャルロット役のレナード、メトで活躍し始めた頃は、声量が小さめという事もあるのか、メトの広大な空間では、表現の幅が狭いように聴こえるきらいがあったのだが、最近は情感を上手に歌に込められるようになってきたように感じる。本日のシャルロット役も感情のこもった歌唱で、印象的だった!

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二人の主役を支える他のキャスト、シャルロットの妹ソフィー役のアンナ・クリスティシャルロットの夫アルベール役のデイヴィッド・ビジックらも丁寧な歌いぶりで好印象。

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指揮はイングリッシュ・ナショナル・オペラの音楽監督を2015年まで務め、現在はベルゲン・フィルの音楽監督であるエドワード・ガードナーマスネの音楽はフランス・オペラらしい流麗でロマンチックな旋律の中に、ワーグナーを色濃く思わせる響きが感じられる独特なものだが、その音楽を十分に表現しきれていない感じで、もどかしさが残った。

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2014年にプレミエ上演されたリチャード・エアの演出は、このロマンチックなオペラを楽しむのに過不足のないもの。もっと上演されてもいい優れたオペラだと思うのだが、私が足を運んだ日がメトでは87回目の上演だった。

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Werther (1892年、ウィーン宮廷劇場にて初演)
演出: Richard Eyre
指揮: Edward Gardner
Werther: Jean-Francois Borras
Charlotte: Isabel Leonard
Sophie: Anna Christy
The Baliff: Maurizio Muraro
Albert: David Bizic ほか
2017年3月9日、メトロポリタン歌劇場


⇒ カウフマンが出演した2014年のメト「ウェルテル」感想

⇒ レナード出演のメト「フィガロの結婚」感想

⇒ ガードナー指揮のメト「ばらの騎士」感想

テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

ボストン交響楽団 演奏会

シーズンに数回、カーネギー・ホールに客演するボストン交響楽団。今シーズンも音楽監督のアンドリス・ネルソンスと共に2月28日から3日にわたってカーネギー・ホールに来演!

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私が訪れたのは2月28日の回で、当日のプログラムはグバイドゥーリナの3重協奏曲に、「レニングラード」の通称で知られるショスタコーヴィチの長大な交響曲第7番

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ロシア・タタールスタン共和国出身のグバイドゥーリナの新作で、本日の演奏会に先立って 2月23日にボストンで同じコンビによって初演されたばかりの3重協奏曲、ヴァイオリンとチェロに加えて、彼女が好んで使っているロシアの民俗楽器でアコーデオンの仲間であるバヤンを使用しているのが面白い。

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そのバヤンのどことなく幻想的な音色から始められるこの曲、25分ちょっとの演奏時間の中で、3つの楽器が絡み合いながら曲が進められていくが、ところどころ響きにグバイドゥーリナらしさを感じさせる部分があるものの、どことなく取り止めがない印象。ソリストはバヤンエルスベス・モーザー、ヴァイオリンのバイバ・スクリデ、チェロのハリエット・クリーヒと全員女性だった。

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第二次世界大戦中、ナチス・ドイツ軍とのレニングラード包囲戦のさなかで作曲されたこの長大なシンフォニー、第1楽章が30分近くと、他の3楽章(合わせて45分前後)に比べ圧倒的に長いという、特異な構成で、その第1楽章途中から小太鼓の切れ目ないリズムに乗って展開される「戦争の主題」は凄まじい迫力。

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ネルソンスは小太鼓を際立たせる事によって大軍勢が進撃しているかのような圧倒的な音響を作り出しているが、その比類ない迫力の反面、どことなく音楽が空虚に響いている感じも受ける。この第1楽章に比し、残りの3楽章は、ショスタコーヴィチとしてはやや音楽の密度が低い感じもあり、ネルソンスとオーケストラの熱演もあって、演奏終了後はブラボーの声と共に満場割れんばかりの拍手に会場が包まれたものの、個人的にはあまり満足感は得られなかった。

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ショスタコーヴィチの15ある交響曲の中で、本作は傑作/駄作の評価が分かれる曲のようだが、私は駄作とまでは言わないものの、どちらかといえば、後者の意見。

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ボストン交響楽団 演奏会
指揮: Andris Nelsons
Gubaidulina: Triple Concerto for Violin, Cello, and Bayan (2017、ニューヨーク初演)
ヴァイオリン独奏: Baiba Skride
チェロ独奏: Harriet Krijgh
バヤン独奏: Elsbeth Moser
Shostakovich: Symphony No. 7 in C Major, Op. 60
2017年2月28日、カーネギー・ホール


⇒ 2015年のボストン響カーネギーホール公演 感想

テーマ : ニューヨーク
ジャンル : 海外情報

清教徒 @ メトロポリタン・オペラ 〜 美声の競演!

本日のメトの演目は、ベルカント・オペラの傑作とされながら上演頻度はそれほど高くない、ベッリーニ最後のオペラ「清教徒」

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2013-14年シーズン以来、3年ぶりの上演となった今回の舞台は、ハヴィエル・カマレーナディアナ・ダムラウという注目の顔合わせ!

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先日のメト「セヴィリアの理髪師」をもって、アルマヴィーヴァ伯爵役からの引退を発表したカマレーナ、これからより重い声の役へとレパートリーを広げていく事が期待されているが、まずはベルカント・オペラ屈指のテノールの難役として知られるこのアルトゥーロ役

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ハイCはおろか、第3幕ではハイFまで要求されるとんでもない役だが、実演でハイFを実際に歌う人はほとんどおらず、この日のカマレーナも聴衆からの期待をよそに、安全運転に徹したのか、音を下げて歌っていた。先日のセヴィリアの理髪師ではやや高音の伸びやかさに欠いている感じで、今回も最高域での声の輝かしさ・力強さはいつもの彼からすると、やや物足りない感じがしたのだが、アジリタは安定していて、ハイDまできっちりと歌いきっていたのには感嘆!盛大な拍手の中、「ハイFは?」というヤジが聴こえたが、それは酷というものだろう。

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対するエルヴィーラ役ダムラウ、最近はメトでの主要な役は彼女が歌う事が多くなってきていて、メトの大黒柱的存在となった感がある彼女、先日の「ロメオとジュリエット」では、やや声が疲れているような印象を受け、今回も出だしはそういう感じだったのだが、尻上がりに調子を上げてきて、特に3幕のカマレーナとのデュエットは素晴らしく感動的で、ベルカント・オペラの醍醐味を堪能させてくれた!

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主役二人をサポートする重要な役割を担うバリトンの二人、ジョルジョ役ルカ・ピサローニリッカルド役アレクセイ・マルコフは共に堅実な歌唱だったが、主役二人の充実ぶりに比べると少し影が薄い感じ。

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指揮はメトではおなじみのマウリツィオ・ベニーニ。安全運転に徹したサポートぶりという感じだったが、ロッシーニベルカント系のレパートリー、たまには他の指揮者でも聴いてみたい!

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1976年にプレミエ上演が行われたサンドロ・セクイの舞台は昔のメトらしい、伝統的なものだが、ベルカントものを歌える素晴らしい歌手が増えてきた現在、そろそろ新しい演出を期待したいところ。

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I Puritani (1835年、パリ・イタリア劇場にて初演)
演出: Sandro Sequi
指揮: Maurizio Benini
Elvira: Diana Damrau
Arturo: Javier Camarena
Riccardo: Alexey Markov
Giorgio: Luca Pisaroni
Bruno: Eduardo Valdes ほか
2017年2月10日、メトロポリタン歌劇場


⇒ 2014年の前回上演感想

⇒ カマレーナ出演のメト「セヴィリアの理髪師」感想

⇒ ダムラウ出演のメト「ロメオとジュリエット」感想

⇒ ピサローニ出演のメト「フィガロの結婚」感想

⇒ マルコフ出演のメト「イル・トロヴァトーレ」感想

テーマ : ニューヨーク
ジャンル : 海外情報

ニューヨーク・フィル定期演奏会 〜 ビシュコフ渾身のチャイコ!

最近、ニューヨーク・フィルへの客演頻度が高まってきたセミヨン・ビシュコフ、今シーズンはチャイコフスキー・フェスティヴァルと銘打って、3回の演奏会にわたってチャイコフスキーの交響曲を演奏!

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シリーズ初日にあたる本日は滅多に演奏されないピアノ協奏曲第2番に、交響曲第5番というプログラム。

1880年に完成したピアノ協奏曲第2番は演奏時間40分の大作だが、ポピュラー名曲である第1番に比べ、圧倒的に演奏頻度が少ない。私も今回初めて聴いたのだが、チャイコフスキーらしさは十分感じさせる曲ながら、いかんせんメロディの魅力に乏しく、それが日陰者的存在になっている大きな理由かも知れない。今回の独奏はイェフム・ブロンフマンで、持ち前の技巧を生かした華麗でスケールの大きな演奏ながら、やはり曲の魅力のなさを完全に補うには至っていない。

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それにしても、観客の熱狂的な拍手ぶりを見ると、彼の人気ぶりが伺える。休憩時間が終わった時に、観客席が空いたような感じだったのだが、ブロンフマンだけを観に来たお客さんが多かったのだろうか。

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後半はあまりにもポピュラーな名曲、交響曲第5番。これが圧倒的な名演だった!

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落ち着いたテンポで進められていく演奏だったが、メロディのセンスの良い歌わせ方、ここぞという時の比類のない迫力、それでいて、決してやり過ぎと感じさせない絶妙なバランス感覚と、私にとってはこの曲の理想的な演奏で、ビシュコフの実力の程を遺憾なく発揮。これには観客もブラボーの嵐でした!他にプログラムの冒頭に、グリンカの管弦楽作品、幻想的ワルツが演奏された。

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第16,187回 ニューヨーク・フィルハーモニック定期演奏会
指揮: Semyon Bychkov
Beloved Friend - Tchaikovsky and his World: A Philharmonic Festival
Glinka: Valse-Fantaisie
Tchaikovsky: Piano Concerto No. 2 in G Major, Op. 44
(ピアノ独奏: Yefim Bronfman)
Tchaikovsky: Symphony No. 5 in E minor, Op. 64
2017年1月26日、デイヴィッド・ゲフィン・ホール


⇒ ビシュコフ指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管 演奏会感想

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