ファントム・スレッド 〜 ポール・トーマス・アンダーソン監督とダニエル=デイ・ルイスによる香り高いロマンス映画

ポール・トーマス・アンダーソン監督が、アカデミー賞2部門を獲得した「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(08年)に引き続き、同作で主演男優賞に輝いたダニエル=デイ・ルイスを再び主演に起用し、1950年代のイギリスのファッション業界を舞台にしたロマンス映画。デイ=ルイスは、本作を最後に俳優業から引退する事を発表した。全米では2017年12月に限定公開され、今年のアカデミー賞では、作品賞・監督賞をはじめ6部門でノミネートされ、衣装デザイン賞を受賞している。

      Phantom Thread Poster

1950年代のロンドンイギリス・ファッション界で名を知られている有名デザイナーのレイノルズ・ウッドコック(デイ=ルイス: アカデミー主演男優賞ノミネート)は、ある日、たまたま立ち寄った郊外のレストランで、ウエイトレスのアルマ(ヴィッキー・クリープス)に目が止まった彼は、彼女をミューズとしてファッションの世界に引き入れる。

 Phantom 1

レイノルズの姉で、会社を切り盛りするシリル(レスリー・マンヴィル: 助演女優賞ノミネート)の心配をよそに、アルマは次第にレイノルズを恋するようになるが、その事が規則正しかったレイノルズの日常を変えていくのだった…

 Phantom 2

貧しいウェイトレスの女性が裕福な初老の男性と出会って変身するというと、何やら「マイ・フェア・レディ」のようなストーリーだが、そこは鬼才アンダーソン監督、物語の始まりは同じでも、そこから独自の世界を構築して、優雅さと狂気が同居した一風変わった、しかし香り高いロマンス映画を作り出しているのはさすがの手腕!

 Phantom 3

そして、アンダーソン監督が築き上げたこの世界をしっかりと支えているのが、ダニエル=デイ・ルイスの演技。この役を演じるために、1年間デザイナーの元に通って修行したそうで、優雅な雰囲気を漂わせながら、気難しくルーティンを何よりも大切にする初老のイギリス紳士を見事に演じている。

 Phantom 4

アルマ役を演じた新星のグリーヴスデイ=ルイスに一歩も引けを取らない演技で、こちらも印象的。そしてマンヴィルが、映画での役柄そのままに、落ち着いた演技でこの二人を支えている。それにしてもデイ=ルイスがこれで引退してしまうのが惜しい!  ⇒ 9/10点

 Phantom 5

ファントム・スレッド
Phantom Thread (2017年・アメリカ)
監督: Paul Thomas Anderson
キャスト: Daniel Day-Lewis, Vicky Krieps, Lesley Manville, Camilla Rutherford, Gina McKee, Brian Gleeson, Harriet Sansom Harris, Lujza Richter, Julia Davis, Nicholas Mander, Philip Franks, Phyllis MacMahon, Silas Carson, Richard Graham, Martin Dew, Ian Harrod, Jane Perry ほか
上映時間: 130分


⇒ アンダーソン監督の個性全開の前作「インヒアレント・ヴァイス」(14年)感想

⇒ デイ=ルイスがアカデミー主演男優賞を受賞したスピルバーグ監督の「リンカーン」(12年)感想
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リメンバー・ミー 〜 温かい気持ちで一杯になるピクサーの最新アニメ

ディズニー/ピクサーによる最新長編アニメ。「トイ・ストーリー3」(10年)リー・アンクリッチ監督による本作は、「死者の日」を迎えるメキシコのある村が舞台。全米では2017年11月に公開され、公開週より3週連続で興行ランキングのトップに立つヒット作となった。今年のアカデミー賞では長編アニメ映画賞と主題歌賞の2部門でノミネートされ、両部門とも受賞を果たしている。

      Coco Poster

音楽が何よりも好きだが、家族に起きた過去の出来事が原因で、家族ともども音楽を禁止されている少年ミゲル(声: アンソニー・ゴンザレス。どうしても音楽が諦めきれない彼は、先祖が家族に会いにくるという死者の日に開催される音楽コンテストに、家族に内緒で出ることを決める。

 Coco 1

ところが、出場する前に家族に見つかり、ギターを取り上げられてしまった彼は、地元の伝説的ミュージシャンで憧れのエルネスト・デラクルス(声: ベンジャミン・ブラットの霊廟に飾られたギターを手にして出場するが、それを弾いた瞬間にミゲルは死者の国に迷い込んでしまう。

 Coco 2

ミゲルが元の世界に戻れずに困っていると、デラクルスの友人だというヘクター(声: ガエル・ガルシア・ベルナルが現れ、ミゲルデラクルスに会わせてくれると言うのだが…

 Coco 3

メキシコを舞台にしたピクサーの最新作、まずはキャッチーなメロディの音楽、死者・生者を問わず陽気なキャラクターたち、極彩色でファンタジー感あふれる映像で観る者を映画の中に引き込む。

 Coco 4

ストーリーは割と単純で、後半のドンデン返しも何となく予想がつくものなのだが、ストーリー展開のテンポが良いため、最後まで飽きずに観る事ができる。

 Coco 5

一見単純で陽気なストーリーの底に流れているのは、家族への愛、亡くなった者への愛で、見終わった時には、温かい気持ちで心が一杯になっているという、心憎い演出。ピクサーは本当にストリーテリングが巧みで、今回もコロリとやられてしまいました(笑)  ⇒ 9/10点

リメンバー・ミー
Coco (2017年・アメリカ)
監督: Lee Unkrich
声の出演: Anthony Gonzalez, Gael García Bernal, Benjamin Bratt, Alanna Ubach, Renée Victor, Ana Ofelia Murguía, Edward James Olmos, Alfonso Arau, Selene Luna, Dyana Ortellí, Herbert Sigüenza, Jaime Camil, Sofía Espinosa, Luis Valdez, Lombardo Boyar, Octavio Solis, Gabriel Iglesias, Cheech Marin, Carla Medina, Blanca Araceli, Natalia Cordova-Buckley, Salvador Reyes, John Ratzenberger ほか
上映時間: 105分


⇒ ピクサーの「ファインディング・ドリー」(16年)感想オススメ!

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レディ・バード 〜 グレタ・ガーウィグが監督したアカデミー賞ノミネート作

「インディ映画の女王」からすっかりメジャーな存在となったグレタ・ガーウィグが、自伝的要素を取り入れながら監督・脚本を手掛けた青春ドラマ。2017年のテルライド映画祭でプレミエ上映され高い評判を得た後、全米では11月に限定公開され、上映館数が拡大された公開4週目に興行ランキングの8位にランクインしている。今年のアカデミー賞では作品賞・監督賞(ガーウィグは女性監督としてアカデミー史上5人目のノミネート)をはじめ5部門にノミネートされたが受賞はならなかった。

      Lady Bird Poster

自らをレディ・バードと名乗り、周囲にもそう呼ばせているサクラメントの高校生、クリスティン(シアーシャ・ローナン)。看護師の母マリオン(ローリー・メトカーフ)との関係はずっとギクシャクしていて、親友と呼べるのもジュリー(ビーニー・フェルドスタイン)くらい。

 Lady Bird 1

授業の一環として演劇のオーディションを受けた二人は、そこでダニー(ルーカス・ヘッジズ)という青年と出会い、レディ・バードは彼と急速に親密となっていくのだが…

 Lady Bird 2

これは好きな映画。今やすっかりメジャーな女優となったグレタ・ガーウィグだが、今回は出演はせずに監督に専念。ところが、これが初めての本格的監督作品とは思えないほど、青春映画として完成度が高い。

 Lady Bird 3

大人になった人は誰でも経験したであろう、うまく行かない事の方が多い青春時代を本当に瑞々しく再現している。「ブルックリン」(15年)でもそうだったのだが、ここでもシアーシャ・ローナン(アカデミー主演女優賞にノミネート)の等身大の演技がとっても印象的。この人はエマ・ストーンと並んで若手女優の中ではピカイチの存在に成長していると思うが、脚本にも恵まれている。引きの強さも実力のうちかも知れないが。

 Lady Bird 4

ガーウィグフランソワ・トリュフォーの名作「大人は判ってくれない」(59年)リチャード・リンクレイター監督の「6才のボクが、大人になるまで。」(14年)の女性版のような作品にしようと思ったらしいが、1年間かけて作り上げたという脚本は、個性的なストーリーでありながら、不自然さを感じさせる事がなく、見事な完成度。

 Lady Bird 5

アカデミー助演女優賞にノミネートされた母親役のローリー・メトカーフも印象に残る演技であった。2017年に公開された映画の中でも、トップの作品の一つ。  ⇒ 9/10点

レディ・バード
Lady Bird (2017年・アメリカ)
監督: Greta Gerwig
キャスト: Saoirse Ronan, Laurie Metcalf, Tracy Letts, Lucas Hedges, Timothée Chalamet, Beanie Feldstein, Stephen McKinley Henderson, Lois Smith ほか
上映時間: 93分


⇒ ガーウィグ主演作「ミストレス・アメリカ」(15年)感想

⇒ ローナン主演作「ブルックリン」(15年)感想傑作!!!

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ダンケルク 〜 クリストファー・ノーラン監督の本領発揮!

クリストファー・ノーラン監督の最新作で、第2次世界大戦初期の1940年にフランス・ダンケルクから大軍を撤退させるため、連合国側が実行したダイナモ作戦を描いた戦争映画。全米では2017年7月に公開され、公開週から2週連続で興行ランキングのトップに立っている。

      Dunkirk Poster

第二次世界大戦初期の1940年。イギリス、ベルギー、カナダ、フランスからなる連合国軍は、フランスダンケルク海岸で多くの将兵がドイツ軍に包囲されたため、ダイナモ作戦を発動して部隊を撤退させる準備をしていた。

 Dunkirk 1

所属していた部隊がダンケルクの町でドイツ軍の攻撃によって壊滅した英国陸軍二等兵のトミー(フィン・ホワイトヘッド)は、武器も失い一人撤退作戦中のダンケルクの砂浜にやってくる。

 Dunkirk 2

一方イギリス本国では、兵士を収容する軍艦が払底していた事から、ありとあらゆる民間船を徴用する事を決定し、ドーソン(マーク・ライランス)も、息子のピーター(トム・グリン=カーニー)、その友人ジョージ(バリー・コーガン)と共に、自身の小型船に乗り込んでダンケルクに向けて出港する。

 Dunkirk 3

また、英国空軍のパイロットであるファリア(トム・ハーディ)コリンズ(ジャック・ロウデン)らの小隊は、撤退行動を阻害するドイツ空軍を牽制するため、スピットファイア戦闘機で出撃するのだった…

 Dunkirk 4

戦争映画ながら、大規模な戦闘シーンは一切ない異色の作品で、陸(若い兵士)、海(初老の一般市民)、空(空軍パイロット)という三つの視点に絞って、第二次世界大戦史上名高い作戦(特にイギリス人にとっては大事な史実らしい)を描いていく。

 Dunkirk 5

作戦全体の推移を描かず、視点人物(ゲーム・オブ・スローンズのようですね)が見ているものしか描いていないため、かえって臨場感と姿が見えないドイツ軍に対する恐怖感が高まり、観ているものもその場に居合わせているかのような錯覚に襲われるところは、さすがノーラン監督といったところで、凡百の映画監督では到底及ばないであろう抜群のセンス!

 Dunkirk 6

描くものを切り詰めて1時間半という時間にまとめた事も、作品の緊密度を高めるのに役立っていて、ここはクリント・イーストウッド監督の快作「ハドソン川の奇跡」(16年)と通ずるところがある。若き兵士を演じたホワイトヘッドライランスハーディらの演技も良い。

 Dunkirk 7

それにしても、これまでSF映画中心に作品を発表してきたノーラン監督、意表をつく戦争映画の新作だったが、ここでも彼らしい高い水準の出来栄えで、今やハリウッドで最も目が離せない監督の一人である事をきっちり証明した!他にケネス・ブラナーキリアン・マーフィーらが出演。  ⇒ 9/10点

ダンケルク
Dunkirk (2017年・アメリカ/フランス/イギリス)
監督: Christopher Nolan
キャスト: Fionn Whitehead, Mark Rylance, Tom Hardy, Kenneth Branagh, Cillian Murphy, Tom Glynn-Carney, Jack Lowden, Harry Styles, Aneurin Barnard, James D'Arcy, Barry Keoghan ほか
上映時間: 106分


⇒ ノーラン監督の前作「インターステラー」(14年)感想オススメ!

⇒ ライランス主演作「BFG」(16年)感想オススメ!

⇒ ハーディ出演作「レヴェナント: 蘇えりし者」(15年)感想オススメ!

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女神の見えざる手 〜 ジェシカ・チャスティンの演技に圧倒される!

アカデミー作品賞受賞作「恋におちたシェイクスピア」(98年)「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」(12年)などで知られるジョン・マッデン監督の最新社会派サスペンス映画。米国では2016年11月に限定公開され、上映館数が拡大された公開3週目に興行ランキングの11位にランクインしている。また、主演のジェシカ・チャステインは2017年のゴールデン・グローブ賞でドラマ部門女優賞にノミネートされた。

      Miss Sloane Poster

ワシントンの大手ロビー会社で活躍するエリザベス・スローン(チャステイン)は、顧客の依頼を実現するためなら、手段を選ばず実現させる凄腕のロビイスト。

 Sloane 1

ある日、会社が銃擁護派団体と組むことになり、エリザベスはそのロビー活動の指揮を取る事を指示される。当然その仕事を受けるかと思いきや、彼女はいきなり部下4人を引き連れてロドルフォ・シュミット(マーク・ストロング)が経営する銃規制派の小さなロビー会社に移籍してしまう。

 Sloane 2

圧倒的に不利な状況の中、彼女は卓越したアイデアと決断力で、銃擁護派が圧倒的に有利な状況を覆すところまで持ってくるが、前の会社によって、彼女の過去のロビー活動に関する不正疑惑と共にプライベートまでもが暴露され、一転して窮地に立たされるのだが…

 Sloane 3

銃規制派に転じたロビイストが、巨大権力をバックにした銃擁護派に挑んでいくという、アメリカの今の時勢にピッタリの題材で、最後のドンデン返しも含め、両者の駆け引きがスリリングに描かれていて、思わず最後まで映画の中に引っ張り込まれてしまう。

 Sloane 4

とにかく主演のジェシカ・チャスティンが圧倒的な存在感で、まさに彼女に始まり彼女に終わるというぐらい、彼女の演技は際立っている。私は全く引き込まれたが、人によっては、アクの強いヒロイン像に抵抗感を覚えるかも知れない。

 Sloane 5

最近出演している作品ではいずれもその演技が高く評価されていて、今後も目が離せない女優さん!  ⇒ 9/10点

 Sloane 6

女神の見えざる手
Miss Sloane (2016年・アメリカ)
監督: John Madden
キャスト: Jessica Chastain, Mark Strong, Gugu Mbatha-Raw, Alison Pill, Michael Stuhlbarg, Jake Lacy, Sam Waterston, John Lithgow, David Wilson Barnes, Raoul Bhaneja, Dylan Baker, Christine Baranski, Chuck Shamata, Douglas Smith ほか
上映時間: 132分


⇒ マッデン監督の前作「マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章」(15年)感想

⇒ チャステイン出演作「スノーホワイト/氷の王国」(16年)感想

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