ハクソー・リッジ 〜 戦場における信仰を描いたメル・ギブソン監督の秀作!

第2次世界大戦中のアメリカ軍で、信仰のため銃を持たずに沖縄戦に従軍した実在の兵士を描いたメル・ギブソン監督の最新作。2016年のヴェネツィア国際映画祭でプレミエ上映され絶賛された後、全米では同年11月に公開され、公開週に興行ランキングの3位にランクインしている。今年のアカデミー賞では、作品・監督・主演男優賞(アンドリュー・ガーフィルド)など6部門でノミネートされ、録音賞と編集賞の2冠に輝いている。

      Hacksaw Ridge Poster

子供の頃に、激しやすい性格から兄を傷つけてしまった事がきっかけで、深い信仰心を持つようになったデズモンド(ガーフィールド)。愛国心の強い彼は、青年になって第2次世界大戦が勃発すると、進んで軍隊に志願する。

 Hacksaw 1


厳しい訓練には持ち前のガッツでついていくデスモンドだが、人を傷つけてはいけないという強い信念から銃を持つことを拒否したために、周囲と軋轢が生じ、軍法会議にもかけられてしまう。妻ドロシー(テリーサ・パーマー)や父トム(ヒューゴ・ウィーヴィング)の尽力で、ようやく銃を携行しないでの従軍が認められる。

 Hacksaw 2

そして戦争末期1945年5月、所属部隊の衛生兵として沖縄戦に派遣される事となったデスモンドは、グローヴァー大尉(サム・ワーシントン)に率いられ、仲間の兵士たちとともに沖縄に上陸するが、彼らの眼の前にはハクソー・リッジ(日本では前田高地)と呼ばれる難攻不落の断崖絶壁がそびえていた。デスモンドたちは、太平洋戦争で最も激戦と言われた過酷な戦闘に身を投じる事になる…

 Hacksaw 3

太平洋戦争中、最大の激戦地の一つと言われた沖縄戦の前田高地の戦いを舞台にしたメル・ギブソン監督の最新作は、この監督らしく、クライマックスのハクソーリッジの攻防戦のシーンでは、最新の撮影技術を駆使したリアルで壮絶な戦闘シーンが繰り広げられる。

 Hacksaw 4

しかし、この映画の中心はその戦闘シーンにあるのではなく、極限状況の中でも自分の信仰を貫いたデスモンドの姿。砲弾や銃弾が飛び交う中、丸腰で高地と崖を往復し、多数の仲間の兵士を救護していく姿は、戦闘シーンが壮絶であるだけに、ひときわ印象強く浮かび上がってくる。

 Hacksaw 5

スパイダーマン・シリーズへの出演を続ける事を断り、本作やマーティン・スコセッシ監督「沈黙」(16年)への主演で、演技派俳優としての地歩を着々と固めているガーフィールドの抑えた演技は素晴らしく、この信じられないような主人公の行動にしっかりとした現実感を与える事に成功している。

 Hacksaw 6

第1次世界大戦に従軍し、そのトラウマから抜け出せないでいるデスモンドの父親トムを演じたウィーヴィングや先輩士官たちを演じたワーシントンヴィンス・ヴォーンらも好演。最近はお騒がせ芸能人といったイメージが先行していて、俳優としても監督としてもあまりパッとした作品がなかったメル・ギブソンだが、これは久々の秀作!

 Hacksaw 7

ハクソー・リッジ
Hacksaw Ridge (2016年・オーストラリア/アメリカ)
監督: Mel Gibson
キャスト: Andrew Garfield, Teresa Palmer, Hugo Weaving, Sam Worhington, Luke Bracey, Vince Vaughn, Ryan Corr, Rachel Griffiths, Richard Roxburgh, Luke Pegler, Richard Pyros, Ben Mingay, Firass Dirani, Damien Thomlinson, Matt Nable, Robert Morgan, Nathaniel Buzolic ほか
上映時間: 139分


⇒ ギブソン出演作「マチューテ・キルズ」(13年)感想

⇒ ガーフィールド主演作「アメイジング・スパイダーマン2」(14年)感想

⇒ ウィーヴィング出演作「ホビット 決戦のゆくえ」(14年)感想オススメ!

⇒ ワーシントン主演のスリラー「崖っぷちの男」(12年)感想

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ジャッキー/ファーストレディ最後の使命 〜 ナタリー・ポートマンの熱演で描かれる知られざるジャックリーン・ケネディ像

1963年11月に発生したジョン・F・ケネディ米国大統領の暗殺事件から彼の葬儀までの4日間の、ジャックリーン・ケネディ大統領夫人の知られざる姿を描いた作品。監督はチリ出身のパブロ・ララインで、ナタリー・ポートマンジャックリーンを演じて話題となった。2016年のヴェネツィア国際映画祭でプレミエ上映され、最優秀脚本賞に輝いた後、全米では12月に限定公開されている。今年のアカデミー賞では、主演女優賞(ポートマン)をはじめ 3部門でノミネートされたが、受賞はならなかった。

      Jackie Poster

1963年11月22日、遊説のためテキサス州ダラスを訪れた米国大統領ジョン・F・ケネディ(キャスパー・フィリップソン)と夫人のジャックリーン(ポートマン)だが、市内をオープン・カーでパレード中に狙撃され、大統領は暗殺されてしまう。

 Jackie 1

悲しみにくれる間もなく、葬儀の取り仕切りから副大統領のリンドン・ジョンソン(ジョン・キャロル・リンチ)の大統領就任式への立会い、ホワイトハウスからの退去まで、あらゆる難題をこなしていくジャックリーン

 Jackie 2

父親の死を理解出来ない子供たちの姿に心を痛めるジャックリーンだが、そのような中、ジョンの弟で司法長官のロバート(ピーター・サースガード)や秘書官のナンシー・タッカーマン(グレタ・ガーウィグ)にサポートされながら、亡き夫が歴史から忘れ去られず、アメリカ国民の心の中に、いつまでも残り続ける存在となるよう、行動を開始する…

 Jackie 3

在任期間が3年未満であったにも関わらず、リンカーンルーズベルトに続く人気を維持しているケネディ。その裏に夫人ジャクリーンの知られざる奮闘があったという、興味深いストーリーの映画で、ヴェネツィア国際映画祭最優秀脚本賞に輝いただけあって、誰もが知っている歴史的事件に違った側面から光を当てたストーリー展開は秀逸。

 Jackie 4

身振りや話し方まですっかり変えて、ジャックリーンになりきったナタリー・ポートマンの熱演は、さすがにアカデミー主演女優賞にノミネートされただけあって、見ているこちらが引き込まれる素晴らしさ!

 Jackie 5

これは、ポートマンの演技を見るべき映画(彼女の表情のクローズアップを多用しているのが、そうした面を強調している)だと思うが、そこにフォーカスを当てた分、あまりにもドラマチックな史実を題材にした映画の割には、そうしたドラマチックな起伏は少ない(意図的にそうした面を避けた意図があるであろう事は理解出来るが)。  ⇒ 8/10点

 Jackie 6

ジャッキー/ファーストレディ最後の使命
Jackie (2016年・アメリカ/チリ/フランス)
監督: Pablo Larrain
キャスト: Natalie Portman, Peter Sarsgaard, Greta Gerwig, Billy Crudup, John Hurt, Max Casella, Beth Grant, Richard E. Grant, Caspar Phillipson, John Caroll Lynch, Julie Judd, Brody and Alden Weinberg, Mathilde Ripley, Barbara Foliot ほか
上映時間: 99分


⇒ ポートマン出演作「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」(13年)感想

⇒ サースガード出演作「マグニフィセント・セブン」(16年)感想オススメ!

⇒ ガーウィグ出演作「ローマでアモーレ」(12年)感想

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ムーンライト 〜 今年のアカデミー作品賞獲得!

ブラッド・ピットが製作陣に名を連ね、各地の映画祭で絶賛された新鋭バリー・ジェンキンズ監督の作品。2016年9月のテルライド映画祭でプレミエ上映された後、全米では10月に限定公開されている。作品賞を発表し間違えるという前代未聞の事態が発生した今年のアカデミー賞では、8部門にノミネートされ、見事作品賞の栄冠に輝いたのを始め、助演男優(マハーシャラ・アリ)・脚色賞も受賞している。

      Moonlight Poster

マイアミの貧困地域で、麻薬常習者のシングル・マザー、ポーラ(ナオミ・ハリス)と一緒に暮している少年シャロン(アレックス・R・ヒバート)

 Moonlight 1
 麻薬に溺れる母ポーラ(ハリス 〜 アカデミー助演女優賞にノミネート)

ポーラからは育児放棄され、「リトル」とあだ名をつけられて学校の子供たちからいじめを受けている彼は、唯一の友人ケビン(ジェイデン・パイナー)と、偶然いじめられている彼を助けてくれた麻薬ディーラーのホアン(アリ 〜 出演時間は短いが印象的な演技!)とそのガールフレンドのテレサ(ジャネール・モネイ)たちだけが心の支えだった(第1部: リトル)

 Moonlight 2

ティーンエイジャーとなったシャロン(アシュトン・サンダース)ホアンはドラッグ絡みで殺されてこの世にはいないが、テレサは相変わらず彼には優しく接してくれている。学校では未だにいじめを受けている彼だが、友人として変わらず接してくれているケビン(ジャレル・ジェローム)に次第に特別な感情を持つようになるのだった… (第2部: シャロン)

 Moonlight 3

3部作構成で、孤独で繊細なLGBTの黒人小年の成長の軌跡を描いた作品。主人公シャロンは3人の俳優がそれぞれぼ部で別々に演じているが、映画を通じて彼が見つめる他人・外の世界が一貫しているのが、この映画を一本芯の通った作品とするのに貢献しているように思う。そういう意味では、「6才のボクが、大人になるまで。」(14年)と同じ系譜の作品だろうか。

 Moonlight 4
 ホアンが殺された後も、シャロンに優しく接するテレサ

映画の舞台は麻薬や暴力がはびこるマイアミアトランタの貧困地域なのだが、そうしたすさんだ地域を舞台にしていても、画面には不思議に静謐感と透明感・詩情が漂っている。その中で成長していくシャロンの心が観る者に染み入るように伝わり、共感を感じさせるところがこの映画の良さだろうか。

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 大人になってから久しぶりにケビン(右: アンドレ・ホランドと再会するシャロン(左: トレヴァンテ・ローズ

ジェンキンズ監督の繊細な感性が生かされたいい映画だと思うが、アカデミー作品賞作品としては、もう少し強く心に迫るものが欲しい感じがする。映画としては、作品賞の候補にもならなかったクリント・イーストウッド監督の、これぞ映画といった感じの「ハドソン川の奇跡」の方が完成度が高いだろうか(好き嫌いの問題と言われればそれまでなのだが)。白人偏重と騒がれた昨年のアカデミー賞の影響があったのかも知れない。  ⇒ 8/10点

 Moonlight 6

ムーンライト
Moonlight (2016年・アメリカ)
監督: Barry Jenkins
キャスト: Trevante Rhodes, Ashton Sanders, Alex Hibbert, André Holland, Jharrel Jerome, Jaden Piner, Naomie Harris, Janelle Monáe, Mahershala Ali, Patrick Decile ほか
上映時間: 111分


⇒ 前代未聞の騒動に見舞われた今年のアカデミー賞

⇒ 「6才のボクが、大人になるまで。」(14年)感想オススメ!

⇒ 「ハドソン川の奇跡」(16年)感想傑作!!!

⇒ ハリス出演作「007 スペクター」(15年)感想

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マンチェスター・バイ・ザ・シー 〜 ケイシー・アフレックがアカデミー主演男優賞を獲得!

「ギャング・オブ・ニューヨーク」(02年)の脚本などで知られるケネス・ロナーガン監督が、ケイシー・アフレックを主演に迎えて撮りあげた人間ドラマ。 2016年のサンダンス映画祭でプレミエ上映されて高い評価を得た後、全米では11月に限定公開され、上映館数が拡大された公開5週目に興行ランキングの6位にランクインしている。今年のアカデミー賞では、作品・監督賞を始め6部門でノミネートされ、アフレックが見事主演男優賞に輝いている。

      Manchester by the Sea

ボストン郊外で便利屋をして生計を立てている孤独な男リー(アフレック)は、兄のジョー(カイル・チャンドラー)が急死したとの報を受け、生まれ故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーに戻ってくる。

 Manchester 1

兄の遺言で、16歳になる甥のパトリック(ルーカス・ヘッジズ)の後見人を引き受ける事になった彼は、彼の面倒を見るために故郷にとどまるうちに、自身が周囲に心を閉ざすきっかけとなった過去の痛ましい事件と向き合う事になる…

 Manchester 2

米国東部、マサチューセッツ州の冬の陰鬱な空の下、過去に自分が引き起こした悲劇から、周囲に心を閉ざしてしまった男が、甥との交流を通じて過去と向き合っていく姿を、淡々と追った映画。

 Manchester 3

といっても、陰鬱なままの映画というわけではなく、いきなり同居する事となったリーパトリックのちぐはぐでコミカルな会話が、画面に軽やかさをもたらしていて、重苦しい映画になるのを防いでいる。

 Manchester 4

悲しさを内に秘めながら孤独に生きてきた男を演じるアフレックはさすがだし、アカデミー助演男優賞に輝いたヘッジズ、出番は少ないながら同じくアカデミー助演女優賞に輝いたリーの元妻ランディ役のミシェル・ウィリアムズらも説得力のある演技で映画を引き締めている。いい映画だと思うが、どことなくアカデミーの会員が好きそうなストーリーで映画を作りました、という印象を受けるのは私だけだろうか…  ⇒ 8/10点

 Manchester 5

マンチェスター・バイ・ザ・シー
Manchester by the Sea (2016年・アメリカ)
監督: Kenneth Lonergan
キャスト: Casey Affleck, Lucas Hedges, Michelle Williams, Kyle Chandler, Ben O'Brien, Gretchen Mol, C.J. Wilson, Tate Donovan, Kara Hayward, Anna Baryshnikov, Heather Burns, Erica McDermott, Matthew Broderick, Oscar Wahlberg ほか
上映時間: 137分


⇒ アフレック出演作「ザ・ブリザード 」(16年)感想

⇒ ウィリアムズ出演作「オズ はじまりの戦い」(13年)感想

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ガール・オン・ザ・トレイン 〜 エミリー・ブラントが熱演するイギリス版「ゴーンガール」!

世界的ベストセラーとなったイギリスポーラ・ホーキンズのミステリー小説の待望の映画化。主演に起用されたのは、エミリー・ブラントで、監督は「ヘルプ 心がつなぐストーリー」(11年)で注目されたテイト・テイラー監督。全米では2016年10月に公開され、公開週に興行ランキングのトップに立っている。

      Girl on Train Poster

アラサー女性のレイチェル(ブラント)は、夫トム(ジャスティン・セロー)との結婚生活に破綻し、仕事もクビになって大学時代の友人、キャシー(ローラ・プレポン)が住むニューヨーク郊外、ハドソン川沿いにある町のアパートに身を寄せている。

 Girl 1

やるせない寂しさをまぎらすために、アルコールをあおり、毎日のようにあてもなくマンハッタン行きの電車に乗って、車窓から見える一組の幸せそうな夫婦の生活を覗き見するのが日課となった彼女。

 Girl 2

ある日、彼女が理想の夫婦と思っていた妻の方の不倫現場を目撃したレイチェル、電車を降りて真偽のほどを確かめようとした彼女だが、その女性・メーガン(ヘイリー・ベネット)の殺人事件に巻き込まれてしまう…

 Girl 3

イギリス版「ゴーンガール」とも評された小説を映画化した本作、レイチェルメーガン、それにトムの現在の妻であるアンナ(レベッカ・ファーガソン)と、それぞれ訳ありのアラサー女性3名の独白が絡み合いながら、ミステリアスに物語が展開していき、なかなか見応えがある。

 Girl 4

特に主演のエミリー・ブラント。相変わらずの目ヂカラの強さで、アルコール依存症でストーカー気味の負け組女性という特異なヒロイン像を説得力豊かに演じている。但し、映画全体としては「ゴーンガール」のようなエッジーな感じはそれほどなく、確かに最後のエンディングには驚かされるが、ちょっと唐突感を感じさせる点もなきにしもあらず。このシーンに持っていくためには伏線をもう少し丁寧に張った方が良かったような感じ。そうは言っても全体的にはなかなかのサスペンス・スリラー!  ⇒ 8/10点

 Girl 5

ガール・オン・ザ・トレイン
The Girl on the Train (2016年・アメリカ)
監督: Tate Taylor
キャスト: Emily Blunt, Haley Bennett, Rebecca Ferguson, Justin Theroux, Luke Evans, Allison Janney, Édgar Ramírez, Lisa Kudrow, Laura Prepon, Darren Goldstein ほか
上映時間: 113分


⇒ 「ヘルプ 心をつなぐストーリー」(11年)感想 〜 オススメ!

⇒ ブラント出演作「スノーホワイト/氷の王国」(16年)感想

⇒ ヘイリー出演作「マグニフィセント・セブン」(16年)感想

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