オペラ: ヴェルディ スティッフェリオ@メトロポリタン・オペラ

今週は先週に引き続き、ヴェルディのあまり上演される事がないオペラのひとつ。スティッフェリオは不貞の過ちを悔いる妻を、旅から戻った牧師の夫がさんざん悩んだ末に許すという、当時では多分考えられないようなストーリーの作品で、当局からは厳しい検閲にあったようだ。そうしたこともあったのか、1850年の初演は失敗に終わり、ヴェルディは楽譜の破棄をエージェントに命じた程であった。その後1857年に、ヴェルディは「アロルド」として改作を図り、これは多少成功したようだが、オリジナル自体は1960年代に自筆譜が発見されるまで忘れ去られていたとの事である。

私が聴いた1月30日の上演は、メトでは23回目の上演との事。シモン・ボッカネグラでさえ130回上演されているので、いかに本作がこれまで上演される事がなかったかがうかがいしれる。作品自体は最後があまりドラマティックな終わり方ではないので、感銘度がやや落ちる感があるが、音楽自体は中期にさしかかろうとするヴェルディの充実した旋律に彩られ素晴らしい。タイトル・ロールはホセ・クーラ。以前のやや荒削りな歌い方から、力強さはそのままに、感情表現に細やかさが増した感があり、感銘を受けた。指揮はドミンゴ。前週はバリトン役に挑戦したりと相変わらずの活躍ぶり。指揮の方はあまり評判が良くないが、今回はヴェルディの輝かしい旋律をしっかり歌わせてなかなかの出来栄えであった。演出はジャンカルロ・デル・モナコ。メトの聴衆が好みそうな重厚で正攻法の演出。

         Verdi: Stiffelio(1850年初演)
         演出: Giancarlo del Monaco
         指揮: Placido Domingo
         Stiffelio: Jose Cura (T)
         Lina: Sondra Radvanovsky (S)
         Stankar: Andrzej Dobber (Br)   
         Raffaele: Michael Fabiano (T)
         2010年1月30日、メトロポリタン歌劇場  
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テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

オペラ: シモン・ボッカネグラ@メトロポリタン・オペラ (ドミンゴのバリトン・デビュー!)

あまり上演される機会がないヴェルディ中期の傑作オペラ。1970年代後半にクラウディオ・アバドミラノ・スカラ座で上演してから、再評価されるようになった。

元々は1857年に完成・ヴェネツィアフェニーチェ劇場で初演された作品だが、初演は大失敗に終わり、その後1881年にヴェルディ晩年の傑作であるオテロファルスタッフの台本作家でもあるアリゴ・ボイトの協力を得て大幅に改訂し、スカラ座で再上演されたものが現在上演されているものである。

音楽的には男性低音歌手3役に主要な役割を当てている点が特徴であるが、今回のメトの上演はなんとプラシド・ドミンゴがタイトル・ロールであるシモン・ボッカネグラ(通常はバリトンの役)に初挑戦するという事で話題を呼んでいるもの。

     Simon Boccanegra 2010 1

元々ドミンゴはバリトンでデビューしようとしていた事もあって、期待は大きかったが、結論から言うと、低音域でも充実した声を誇るドミンゴといえども、根本的にはテノール歌手なので、ヴェルディのバリトン役を歌うにはやや荷が重かったか、という印象を受けた。

1幕のシモンと実の娘アメーリア(ソプラノ)との二重唱や、2幕終盤のアメーリアの恋人ガブリエーレ(テノール)も加わった三重唱において、ヴェルディが想定していたであろう、声の対象の妙・効果が現れない。

3幕のフィナーレでの見せ場、アメーリアの祖父フィエスコ(バス)との感動的な二重唱も今ひとつしっくりとした感がなかった。もちろん、舞台上でのドミンゴの存在感はさすがではあったが。

ジョルダーニピエチョンカら他の歌手陣は声も美しく総じて見事な歌いぶりであったが、フィエスコ役のモリスは声の衰えが感じられた。指揮は音楽監督のレヴァイン。いつものように充実した響きであったが、音量がやや大き過ぎ、歌手とのバランスが悪いように感じられた(席の位置にもよるのだろうが)。

       Verdi: Simon Boccanegra (1857年初演・1881年改訂再演)
      演出: Giancarlo del Monaco
      指揮: James Levine
      Simon Boccanegra: Placido Domingo
      Amelia Grimaldi: Adrianne Pieczonka
      Gabriele Adorno: Marcello Giordani
      Jacopo Fiesco: James Morris
      Paolo Albiani: Patrick Carfizzi
      2010年1月22日、メトロポリタン歌劇場


CD: 何といってもこの作品のリバイバルの立役者、アバドとミラノ・スカラ座のコンビに
    よるものが、充実した歌手陣の素晴らしい歌唱と相俟ってダントツの1枚。
    特にガブリエーレ役のカレーラスの情熱的な歌唱は聴きもの!
       ⇒ アバド盤 Simon Abbado
    
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テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

オペラ: R・シュトラウス 「ばらの騎士」@メトロポリタン・オペラ

ここのところ非常に寒い日々が続いているニューヨーク。この日(1月9日)はメトのマチネーでばらの騎士を観る。フレミング・グラハム・シェーファーという定番?の組み合わせで聴く終幕の三重唱は格別。いつ聴いても感動する音楽である。今回の指揮はエド・デ・ワールト。76年にロッテルダム・フィルを振って録音しているので、この作品が得意なのかも知れない。これまで数回聴いたレヴァインの指揮と較べると、すっきりとした音楽運びの中で、それとなくR・シュトラウスの音楽が持つ豊潤さが表れてくるような演奏で、非常に好感が持てた。オックス男爵役のアイスランドのバス歌手シグムンドソンも見事な歌いっぷり。メリルの演出はオーソドックスかつメト特有の豪華な舞台で、抵抗感なく楽しめる舞台となっていた。

      R.Strauss: Der Rosenkavalier (1911年初演)
      演出: Nathaniel Merrill
      指揮: Edo de Waart
      Princess von Werdenberg: Renee Fleming (S)
      Octavian: Susan Graham (MS)
      Sophie: Christine Schafer (S)
      Baron Ochs: Kristinn SIgmundsson (Bs)
      Faninal: Thomas Allen (Br)
      Singer: Eric Cutler (T)
      2010年1月9日、メトロポリタン歌劇場
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テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

映画: それでも恋するバルセロナ

ペネロペ・クルーズが本年度のアカデミー助演女優賞を受賞した、ウディ・アレン監督のラブ・ロマンス映画。

       Vicky Cristina Barcelona

アレン監督得意の軽妙なタッチの作品。ハビエル・バルデム「ノーカントリー (07年)」でのサイコな殺し屋役とは打って変ってプレーボーイの画家役でいい味を出している。

最近のアレン映画で特徴的な、ナレーションを通じて映画が進行する形を取っているが、これが却って感情の流れを断ち切ってしまうきらいがあるように思う。また、この映画で扱っているテーマとアレン監督特有な饒舌なセリフが合っていない印象を受け、あまり楽しめなかった。

以前の映画で感じられた、軽妙で皮肉の利いたウィットがなくなっているような気がするが...  ⇒ 6/10点

       それでも恋するバルセロナ
       Vicky Cristina Barcelona (08年・米)
      監督: Woody Allen
      キャスト: Rebecca Hall、Scarlett Johansson、
            Penelope Cruz、Javier Bardem ほか
      上映時間: 97分


ウディ・アレン監督の作品では、やはりニューヨークの雰囲気に満ち溢れる77年の「アニー・ホール」 ~この作品でのダイアン・キートンは最高!~ や79年の「マンハッタン」が素晴らしかった。
⇒ アニー・ホールAnnie Hall ⇒ マンハッタンManhattan
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ジャンル : 映画

オペラ: カルメン@メトロポリタン・オペラ

今シーズンのメトのカルメンは、アンジェラ・ゲオルギューをカルメン役に迎えての期待の新演出であったが、肝心のゲオルギューがキャンセル。今回は病気のためではなく、夫であるロベルト・アラーニャと離婚協議の最中であることが明るみになったことが原因らしい。このため、何人かの歌手で代わりをつとめることになり、本日はラトヴィアのメゾ・ソプラノ、エリーナ・ガランチャがカルメン役に。

     Met100312.jpg

メトでのカルメンは1996年以来、ゼッフィレッリの演出で上演されていたが、豪華だがどこか焦点の定まらない舞台で、初演時より評判は良くなかった。今回の舞台は、イギリスの舞台演出家リチャード・エアー(94年のコヴェント・ガーデンでの椿姫~ゲオルギューが有名になった上演~でも演出)。基本的に脚本に忠実に添った演出かつ、ゼッフィレッリのものよりずっとすっきりした舞台で、音楽の素晴らしさを邪魔しない演出と感じた。

最近とみに活躍の場を広げている注目のガランチャであるが、きれいに整った歌いぶりであるものの、どこかエモーションが伝わってこない感じでやや物足りなさを感じた。美しい舞台姿(整った顔立ちであまりジプシーらしさを感じさせない)も一因なのかも知れない。今後の進化に期待しよう。

     Carmen 2010 1
     カルメン役のガランチャ

ドン・ホセ役はロベルト・アラーニャであったが、私生活でのゴタゴタを乗り越えて素晴らしい歌唱を披露してくれた。やはり良いフランス人歌手が歌うと、この作品は一段と輝きを増す。この点ではいかなドミンゴでも敵わないと思う。

ミカエラはバーバラ・フリットリで、清楚さを出しながら充実した歌唱を披露。エスカミーリョ役のポーランドのバリトン、マリウス・キーチェン(最近では、小沢征爾音楽塾のカルメンにも出演)は、最初のアリア(第2幕の闘牛士の歌)ではやや不安定なところが見られたものの、その後はまずまず安定した歌いぶりであった(舞台姿も中々良い)。

     Carmen 2010 2
     アラーニャとフリットリ

指揮はカナダの新進指揮者、ヤニック・ネゼ=セギャン。きびきびした音楽運びに好感が持てた。

     Carmen 2010 4
     ネゼ=セギャン

このオペラは、1幕の前奏曲に代表されるように、派手なグランド・オペラとの印象がつきまとうが、全編を通じて、ビゼーの天才が遺憾なく発揮された素晴らしい作品だと思う。彼は36歳で若死にしたこともあるのかも知れないが、一般的に知られている作品が他には「アルルの女」しかないのが、本当に不思議。

     Carmen 2010 3

        Bizet: Carmen (1875年初演、パリ・オペラ コミーク)
        演出: Richard Eyre
       指揮: Yannick Nezet-Seguin
       Carmen: Elina Granca
       Don Jose: Roberto Alagna
       Micaela: Barbara Frittoli
       Escamillo: Mariusz Kwiecien
       2010年1月8日、メトロポリタン歌劇場


DVD/CD: DVDでは87年のメト上演盤(レヴァイン指揮、バルツァ、カレーラス、ラミー)が良いと
       思う。バルツァのカルメンは奔放なイメージで、歌唱も素晴らしい。カレーラスも頼りない
       ドン・ホセらしさを良く出している。
        ⇒ メト盤(87年) Bizet Carmen Levine

        CDでは78年のアバド盤(ベルガンサ、ドミンゴ、ミルンズ)。ベルガンサはバルツァ
        などの濃厚なカルメンに較べ、より穏やかな表現だが、全体的に初演当時のオペラ・
        コミック(グランド・オペラとして上演されていないはず)での雰囲気をより良く表わし
        ているのではないかと思う。
        ⇒ アバド盤(78年) Bizet Carmen Abbado
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