映画: ブラック・スワン ~ ナタリー・ポートマンの鬼気迫る演技が印象的なサイコ・スリラー

表面上は華麗なバレエの世界を舞台に、主演のナタリー・ポートマン今年のアカデミー賞で主演女優賞を獲得したほか、作品賞や監督賞など4部門でノミネートされたサイコ・スリラー。米国では昨年12月に限定公開から出発したものの、その内容が高く評価された事から、その後ロングランとなった。

       Black Swan Poster

ニューヨークのバレエ団に所属するバレリーナー、ニナ(ポートマン)。完璧主義の彼女は踊りは優れているのだが、感情を踊りに表わすのが苦手で、踊りが冷たいという評価に悩んでいる。

     Black Swan 1
     なかなか主役になれないニナ

バレエ団の芸術監督、トーマス(ヴァンサン・カッセルは、新制作となる次の「白鳥の湖」公演でこれまで主役を務めて来たベス(ウィノナ・ライダーに代わってニナを主役に抜擢する。

     Black Swan 3
     エキセントリックで過保護な母親

だが挫折した元ダンサーの母親(バーバラ・ハーシーのもとで過保護に育てられた生真面目な彼女は、白鳥役は完璧に踊れるものの、魔性の象徴たる黒鳥の踊りをうまく表現することができない。トーマスによる厳しい稽古が続く中、自分とは正反対なタイプのライバル、リリー(ミラ・クニスの台頭もあって、徐々にニナの精神はプレッシャーに押しつぶされいき、やがて幻覚を見るようになる...

     Black Swan 4
     ニナとは正反対で、奔放なタイプのリリー

とにかく、この映画のために過酷な減量をこなし、1年半の間バレエの特訓を受けたポートマンの鬼気迫る熱演が光る作品。生真面目なニナがバレエのために自分を狂気の淵まで追い込んでいく様がじっくりと描かれていて、見ていて痛々しい程。

     Black Swan 5

特に、筋肉が悲鳴を上げ、骨がきしむような音を効果的に使っている事が、余計「痛さ」を増幅させていて、時々、画面を見るのがつらくなる...

     Black Swan 6

ミッキー・ロークの復活作となった「レスラー(08年)」ダーレン・アロノフスキー監督、主人公が狂気の淵へと落ち入っていく様を丹念に描く事によって、サスペンス感も同時に生み出す事にも成功していて見事な演出ぶり。

また、カッセル・クニス・ハーシーらの共演者がそれぞれの役のキャラクターをしっかりと表わした演技でポートマンの脇を固めている。

今この瞬間も、ニューヨークのどこかで、最高の芸術のために極限まで自分を追い込んでいる人が何人もいるのだろう。そんな事に思いをはせたりもしました...

いい映画だと思うが、あまりの痛々しさ(精神的にも、肉体的にも)に、もう一度見るのは躊躇しそうな感じ。その分減点です...  ⇒ 7/10点

       ブラック・スワン
       Black Swan (2010年・アメリカ)
      監督: Darren Aronofsky
      キャスト: Natalie Portman、Mila Kunis、
            Vincent Cassel、Barbara Hershey、Winona Ryder ほか
      上映時間: 108分
関連記事
スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

今週のジュリアード・プレカレッジ

そろそろ学年末に近づき、それぞれの授業で試験があるため、準備がかなり大変となって来た。

     Juilliard 012211

弦楽アンサンブルの方は5月14日の発表会に向けて仕上げの段階。

室内楽のシューベルトのソナチネの方も大分仕上がって来ているものの、こちらは発表の機会がなさそうで、ちょっと残念...

レッスンの方も急ピッチで進んでいる。この後の曲として、サラサーテのチゴイネル・ワイゼンヴィエニャフスキーのスケルツォ・タランテラの小曲に加え、サンサーンスの3番のコンチェルトヴュータンの5番のコンチェルトと盛りだくさん。

大分軌道に乗って来たようで、レパートリーも今後充実して行きそう。5月一杯で今学期も終わるが、夏の間もしっかり頑張ってほしい!
関連記事

テーマ : バイオリン
ジャンル : 音楽

没後100周年: マーラーの生涯を辿って ~ 交響曲第4番

ウイーン音楽院卒業後に初めて得たバート・ハルの楽長職で音楽家としてのキャリアをスタートさせたマーラー、その後ライプツィヒブダペストハンブルクと順調に出世階段を上がっていった彼にとって、最後の階段は音楽界の最高峰、すなわちウイーン宮廷歌劇場だった。

     Wiener Staatsoper
     ウィーン宮廷歌劇場(現在のウィーン国立歌劇場)

夏休みの期間中は、自分が滞在しているシュタインバッハの近くにあるバート・イシュルで夏休みを過ごしているウイーン楽壇の巨匠・ブラームスを訪問するのを欠かさず、ユダヤ教徒であることが障害になっているとみると、カトリックに改宗する事も厭わなかった(97年2月。但し、マーラーはある人への手紙の中で1891年には既に改宗しているなんて嘘をついている...)。

       Brahms_20110501092345.jpg
       ブラームス

こうしたなりふり構わぬ努力が実って、1897年4月に、ウイーン宮廷歌劇場の常任指揮者のポストを獲得する。

就任披露は5月に上演された「ローエングリーン」で、たった1度のリハーサルしか許されなかったにもかかわらず、センセーショナルな成功を収め、同年10月には、他の先輩常任指揮者3人を飛び越して、音楽監督に任命された。

音楽監督に就任したマーラーは、精力的に劇場改革に取りかかる。彼が導入した改革は以下のようなもの:

 ① 開演後には客席を暗くする
 ② オーケストラ・ピットも照明を落とし、ピットを深くする事により目立たないようにした
 ③ 開演に遅れた客は序曲、或いは第1幕終了後まで入場を許さない
 ④ 歌手たちに雇われて義理の拍手を送るサクラたちを排除
 ⑤ それまでカットだらけで上演するのが普通だったワーグナーなどの長大な作品を
   ノーカットで上演


現代の我々にとっては、当たり前のようなものであるが、当時の人々にとっては、かなり大胆な試みととらえられたようだ。ちなみに、同じ頃、ミラノ・スカラ座の音楽監督に就任した名指揮者、アルトゥーロ・トスカニーニも同様の試みを行っていたことは興味深い。

       Toscanini.jpg
       トスカニーニ

こうした改革を進める中、1898年秋からは、ウイーン・フィルの指揮者も兼任する事となったが、こちらのほうは自分のやり方を押し付けようとするマーラーと、自主独立の気風を尊ぶ楽員たちとがうまく合わず、結局3シーズン後にはそのポストを去ることになる。

     VPO and Musikvereinsaal
     ウィーン・フィルと本拠地のムジークフェラインザール

また、マーラーは、ウイーン・フィルの指揮者に就任したのを機会に、自身の作品を取り上げようとした。

1899年4月には第2交響曲、1900年1月には「少年の魔法の角笛」を取り上げ、いずれも好評だったものの、同年11月の第1交響曲の評価は散々で、当時のウイーン楽壇の大御所であった批評家ハンスリックには「我々の内、どちらかは気が狂っているに違いない。そして、それは私ではない。」とまで酷評された。

続く1901年2月の「嘆きの歌」も「人間の声の自然な本性に対する犯罪」とこき下ろされ、以降、マーラーは自作の交響曲の初演は決してウイーンで行わなかった。

       Mahler aka 1903
       1903年、ウィーン時代のマーラー

またこの頃、ハンブルク時代に深い関係にあって実質的な婚約者だったソプラノ歌手、アンナ・フォン・ミルデンブルクウィーンに押しかけてこないよう、色々と画策するなど、まさに公私ともに?多忙な日々を送っていたマーラーなのであった。

     Anna von Mildenburg
     アンナ・フォン・ミルデンブルク

【交響曲第4番ト長調】

1896年に第3交響曲を完成させた後、ウイーンへの移籍などで多忙だったためか、しばらく作曲の時間が取れなかったマーラーだが、1899年の夏から4番目の交響曲の作曲に取り掛かり、翌1900年の夏に完成させている。

もともと、この交響曲の構想は、第3交響曲の作曲中に芽生えていて、当初この曲の第7楽章として考えていた楽章を膨らませていって発展させたのが、第4交響曲である。

一聴すると、マーラーのそれまでの交響曲に比べ明るく、伸びやかに聞こえる曲であるが、当初「天上の生活」と題されたソプラノの独唱付きの第4楽章などは、浄化された天上の様子を歌うというよりは、歌詞などは俗世間にまみれた天上といった様相を呈しており、ドイツ南部の民族舞踊であるレントラーを採用したスケルツォ楽章である第2楽章も、全音を上げて調律された独奏ヴァイオリンが「死神の旋律」を奏でるなど、パロディやアイロニーに彩られた独特な曲である。

手元にあったこの曲のCDは以下の4種:

① アバド/ウイーン・フィル、シュターデ(MS) (77年録音)
② シノーポリ/フィルハーモニア管、グルベローヴァ(S) (91年録音)
③ ブーレーズ/クリーヴランド管、バンゼ(S) (98年録音)
④ インバル/東京都響、半田美和子(S) (09年録音)


いずれも高水準の演奏だと思うが、中ではインバルのものが一番陰影に富んでいて、この曲に込められたパロディやアイロニーを良く表現していると思う。ただ、惜しむらくは、半田美和子のソロがやや弱い感じ。この4楽章のソロでは、かってLPで聴いたハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管アメリングが素晴らしい歌唱を披露してくれていた。

   ⇒ インバル盤 Inbal.jpg


シノーポリ盤インバル盤より伸びやかな演奏であるが、細やかなニュアンスにも不足しておらずなかなかの演奏。また、ここでのグルベローヴァのソロは素晴らしい。

   ⇒ シノーポリ盤 Sinopoli_20110501094434.jpg
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

オペラ: オルフェオとエウリディーチェ@メトロポリタン・オペラ

18世紀のオペラの改革者として有名なグルックの代表作、「オルフェオとエウリディーチェ」をメトに聴きに行く(4月29日)。

     Met 042911

南ドイツに生まれ、ウイーンやパリで活躍したグルック(1714~87年)は、それまでのイタリア・オペラで主流だった、カストラートら歌手たちの技量を見せる事を主眼にしたものから、ドラマの内容を重視し、音楽も物語を生かす事を主眼に作曲されるべきだとし、当時のイタリア・オペラの主流派だったピッチーニらと対立した。

彼が提唱した「オペラの改革」をきっかけに近代オペラの歴史が始まったことから、近代オペラの創始者としてオペラ史上では有名な存在となったが、その割には彼の作品はなかなか上演の機会に恵まれない。私自身も、この「オルフェオ」を聴くのは今回が初めてだった。ちなみに、このオペラは日本人により初めてオペラが上演された時の作品だった(1903年)。

メトでの上演の歴史は結構古く、1885年にはドイツ語バージョンが上演され、このオペラを高く評価していたトスカニーニは1909年から14年にかけてメトで度々この作品を振っていた(昨シーズンまでの全93回の上演中24回も振っている)。

今回の上演は、アメリカの舞踊家、マーク・モリスの演出・振付により2007年にプレミエが行われたもので、音楽は1762年初演の際のイタリア語によるオリジナル・バージョン。従って後年付け加えられた有名な「精霊の踊り」は演奏されない。

       Orfeo ed Euridice 1

さて、このオペラは登場人物がわずか3人とシンプルな構成の作品なのだが、単純ながら流麗な旋律で彩られる音楽は、登場人物の感情を強く表現していて、心に直接的に訴えてくる感じ。初演時にはカストラートによって歌われ、通常はメゾ・ソプラノが歌う事の多い主役のオルフェウス役、今回はアメリカのカウンター・テナー、デイヴィッド・ダニエルズが演じたが、カウンター・テナーとしては力強い歌唱で、この役にこめられた感情を良く表出していたと思う。

オルフェオに較べ、出番が少ないオイリディーチェ役はイギリスのソプラノ、ケイト・ロイヤル。やや暗めの声でオルフェオに見捨てられたと思いこむオイリディーチェの悲しみを良く表現していた。

     Orfeo ed Euridice 2

3人の歌手達によるアリアの部分以外に、合唱やバレエの比重も高い作品だが、マーク・モリス振付のバレエは、モダン・ダンス風で、ちょっとピンとこない感じ。但し、舞台を見降ろす感じで設置された塔状の建物に歴史上の人物の扮装をした合唱団が配され、舞台で展開されるギリシャ神話の世界を見守るというコンセプトはちょっと面白い。

     Orfeo ed Euridice 3

初めて聴いた作品だったが、音楽が持つ強い感情表現が印象的で、全体的には意外に楽しめる作品だった。指揮はピッツバーグ・オペラの音楽監督を務めているアントニー・ウォーカーで、今回がメト・デビュー。

      Orfeo ed Euridice 4
     Orfeo ed Euridice 5

       Orfeo ed Euridice (1762年初演、ウイーン・宮廷劇場)
      演出: Mark Morris (デビュー!)
      指揮: Antony Walker
      Orfeo: David Daniels
      Euridice: Kate Royal
      Amore: Lisette Oropesa
      2011年4月29日、メトロポリタン歌劇場
関連記事

テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

ニューヨーク・スイーツ: Eilleen’s Special Cheesecake ~ ニューヨークいちのチーズケーキ

ニューヨーク名物のチーズケーキ。Junior’sをはじめ、数ある有名店の中で、我が家のお気に入りは、ソーホーに小さな店を構えているEileen’s Special Cheesecake

       Eileens 1

ソーホーとリトルイタリーが隣接するあたりにあるCleveland Placeに、1976年にオープンした本当にこじんまりとした店。

クイーンズに住んでいたオーナーのEileenさんが母親のレシピを使って近隣のデリのためにチーズケーキを作り始めたのが1973年。口コミでその美味しさはあっという間に広まり、マンハッタンで自分の店を開く事を決意。店を開いたこのCleveland Place界隈は当時他に店も無く、荒れていた地域だったらしいが、とにかくマンハッタンで自分の店を持ちたかったEileenさん、家賃が安かった事が決め手になり、思い切って店を開いたとの事。

以来、New York Magazineでベスト・チーズケーキに選ばれた事を始め、マンハッタンのベスト・チーズケーキ・リストに必ず名前が乗るほどの存在になった。

        Eileens 2
     本当にこじんまりとした店内

フルーツをトッピングしたものやチョコレート風味のものなど、色々なチーズケーキが置かれている中で、いつも選ぶのは、やはりプレーンのもの。

      Eileens 3
      これは6インチ(4~5人用)のもので12ドル

個々のチーズケーキの特徴は、ねっとりと濃厚なJunior’sのチーズケーキなどに較べ、とにかく口当たりが滑らかで、味わいが軽い事。バニラの香りがほんのりと漂うのもアクセントとなっていて極めて美味。

     Eileen Cheesecake

それほど頻繁にチーズケーキを食べる事はないのだが、ここのは時々無性に食べたくなります...

       Eileen’s Special Cheesecake
       17 Cleveland Place (near Spring & Lafayette)
      Tel. 212-966-5585
      月~金: 9AM ~ 9PM
      土・日: 10AM ~ 7PM
関連記事

テーマ : ニューヨーク
ジャンル : 海外情報

プロフィール

アルページュ

Author:アルページュ
FC2ブログへようこそ!

カレンダー
03 | 2011/04 | 05
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード