没後100周年: マーラーの生涯をたどって ~ 交響曲「大地の歌」

1908年1月、マーラーワーグナー「トリスタンとイゾルデ」でメトへのデビューを果たした。

     Metropolitan Operahouse
     当時のメトロポリタン歌劇場

舞台はまだまだ古色蒼然たるものであったものの、すでにこの頃から、メトには一流の歌手が集まっていて、彼は「トリスタン」のほか、「フィデリオ」「ドン・ジョヴァンニ」「ワルキューレ」「ジークフリート」に登場、素晴らしい音楽を披露して聴衆を魅了した。

     Mahler.jpg

メトでのマーラーは、(誤診だった)心臓病の発作を恐れてか、あまり怒らなくなり、ウィーンでの「暴君」伝説を聞いて身構えていた楽団員は拍子抜けするほどであった。また、マーラーニューヨークでの社交界でも注目の的で、とりわけ美人で知的なアルマは一躍社交界の寵児となった。

ニューヨークでの音楽活動を順調に開始出来たおかげで、マーラーは前年に受けた大きな打撃から立ち直りつつあった。前年から開始していた交響曲「大地の歌」もこの年には完成し、続いて、彼の交響曲の総決算ともいうべき、第9交響曲の作曲に取りかかるのであった。

【交響曲「大地の歌」】

マーラーの9番目の交響曲であるが、通し番号を持っていないこの曲、最近までベートーヴェンブルックナーが9曲までしか交響曲を書けなかった事から自分も死ぬ事を恐れたマーラーが番号を付けなかったという妻・アルマの証言が良く知られていたが、実際のところは、あまりその事を意識していた訳ではなく、もともとオーケストラ伴奏付きの歌曲として構想が進められて事が番号が付けられなかった理由のようだ。確かに、モーツァルト(41曲)やハイドン(104曲)らの例もあるにも関わらず、ベートーヴェンブルックナーの例だけをもってして、マーラーが9番目の交響曲に番号を付けるのをためらったと考えるのは不自然な気がする。

作曲過程にしても、彼の交響曲の作曲の仕方は、夏休み中に簡易スコアを完成させ、オペラ・シーズン中にフルスコアを仕上げるという過程を取っていたのに対して、本作は彼の歌曲と同じく、ピアノ伴奏譜を完成させてから、オーケストレーションを行うという過程を取っていて、その事からも当初は交響曲として構想された訳ではない事が伺われる。

この曲は、周知の通り、中国の詩をもとに作曲されている事から、東洋的な厭世感や無の境地を表わした音楽と評される事が多いが、素材として使ったのは、ハンス・ハイルマンによる中国の詩のドイツ語訳集「中国抒情詩集」を対象に、ハンス・ベートゲがヨーロッパの読者に受け入れられやすいように、ヨーロッパ風の叙事詩に作り替えたいわば創作詩集である「シナの笛」をベースに、マーラー自身がかなり自由に作り替えた詩である事に留意する必要がある。

いってみれば、当時のヨーロッパ人が抱いていた東洋観に触発されて作曲された西洋人マーラーのオリジナル作品といった方が正しいようだ。

ただ、そうして出来あがった作品は、交響曲と歌曲という、異なるジャンルを総合した、しかもマーラー独自の美感に溢れた素晴らしい作品に仕上がっている。

手元にあったCDはこの7枚:

① カラヤン/ベルリン・フィル、ルートヴィヒ(A)・コロ(T) (74年録音)
② テンシュテット/ロンドン・フィル、バルツァ(MS)・ケーニッヒ(T) (82~4年録音)
③ ジュリーニ/ベルリン・フィル、ファスベンダー(A)・アライサ(T) (84年録音)
④ ベルティーニ/ケルン放送響、リポブシェク(MS)・ヘップナー(T) (91年録音)
⑤ シノーポリ/ドレスデン・シュターツカペレ、ヴェルミリオン(A)・ルイス(T) (96年録音)
⑥ ブーレーズ/ウイーン・フィル、ウルマーナ(MS)・シャーデ(T) (99年録音)
⑦ ティルソン・トーマス/サンフランシスコ響、スケルトン(T)・ハンプソン(Br) (07録音)


アルトとテノールの組み合わせで演奏される事の多いこの曲だが、トーマス盤はテノールとバリトンの組み合わせで演奏。演奏自体は精彩に溢れた素晴らしいものだが、女声が加わった方が、曲間のコントラストがついて個人的には好み。

カラヤン盤は相変わらず、古典・ロマン派の延長線上でこの曲を捉えた演奏で、ちょっと整理され過ぎたような印象。

残りの5枚はいずれも素晴らしい演奏で甲乙つけ難いが、強いていえば、独唱が素晴らしいベルティーニ盤でしょうか。これは来日した時のサントリー・ホールでのライブ録音。私は別のマーラー・プログラムを聴いたが、この時演奏された交響曲第1番も素晴らしかった!

⇒ ベルティーニ盤 Bertini_20110926065538.jpg こちらは全集版。単独盤は廃盤のようです... 
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

映画: 噂のモーガン夫妻

サラ・ジェシカ・パーカーヒュー・グラントが共演したラブコメディー。北米では2009年12月に公開され、公開週の4位が最高と、興行面ではあまりパッとしなかった。

       Morgans Poster

不動産会社を経営するメリル(パーカー)と弁護士のポール(グラント)モーガン夫妻は誰もがうらやむセレブ・カップルだったが、ポールの浮気がきっかけで現在は別居状態。

     Morgans 1

何とかよりを戻そうとするポールは、ある晩メリルを食事に誘うが、その帰りに殺人事件を目撃してしまい、二人ともFBIの目撃者保護プログラムの下、ワイオミング州の片田舎に住む保安官の家に移送される事になる...

     Morgans 2

ストーリーは典型的なラブコメものだが、主人公が離婚の危機に瀕している中年カップルという点がちょっと目新しい。都会の生活しか経験した事がない二人が、勝手の違うど田舎での生活に四苦八苦する様はそれなりにコミカル。

     Morgans 3

但し、映画としては全体的に低調な感が否めない。原因はセリフに魅力がない事にあるのだと思う。いいラブコメには、必ず記憶に残るようなしゃれたセリフがあったりするのだが、この作品での二人のやり取りはかなりありきたりで、盛り上がりそうで盛り上がらない。

     Morgans 4

セリフが平凡でも、俳優の魅力で何とかなったりするものだが、パーカーの演技は平板な感じではじけ方が足りない。ラブコメにはあまり向いていない女優さんという印象。一方、グラントはこの手のラブコメものには天性の才能を発揮する俳優だと思うが、年を取ったせいなのか、はたまた共演者のせいなのか、ここでは精彩を欠いている印象。

リラックスして見れる映画ではあるが、公開時にヒットしなかったのもうなずけるような内容でした。保安官夫妻を演じたサム・エリオットメアリー・スティーンバージェンは味のある演技で存在感を示している。監督はラブコメもののベテラン、マーク・ローレンスだが、前作の「ラブ・ソングができるまで」(07年)「トゥー・ウィークス・ノーティス」(02年)の方がよっぽど面白かった。  ⇒ 6/10点

     Morgans 5

       噂のモーガン夫妻
       Did You Hear About the Morgans? (09年・アメリカ)
      監督: Marc Lawrence
      キャスト: Sarah Jessica Parker、Hugh Grant、
            Sam Elliott、Mary Steenburgen、
            Elisabeth Moss、Michael Kelly ほか
      上映時間: 103分


⇒ ラブ・ソングができるまで(07年) Music and Lyrics
  ここでのドリュー・バリモアはキュートさでパーカーにかなり差をつけている。
  落ちぶれた中年ロッカーを演じたグラントも王道の演技。好きな作品です。

⇒ トゥー・ウィークス・ノーティス(02年) Two Weeks Notice
  サンドラ・ブロックはキュートさはないが、私生活では負け組のキャリア・ウーマン
  といった役を演じさせると抜群の存在感。グラントも相変わらず達者な演技。
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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

ニューヨークのレストラン: Socarrat Paella Bar  ~ チェルシーの人気タパス・バー

9月の最終日、会社の打ち上げで同僚と共に訪れたのが、文字色チェルシーにある人気タパス・バー、Socarrat Paella BarZagatガイドで、ニューヨークのタパス・バー・ベスト8にランクインしている人気店。

     Socarrat.jpg

我々が到着したのは7時半頃だったが、店はお客さんでいっぱいで、テーブルが空くのを待っている人が多数。我々は幸いにも予約をしておいたので、すんなりと席に着くことが出来た。

狭い店内はハイ・チェアーと小さめのテーブルが配され、レストランというよりは、バーのような雰囲気を醸し出している。

     Socarrat 2
-

まずは、ドライ・シェリーで乾杯した後、タパスを適当に頼む。タパスは、生ハムやスペイン風オムレツ、コロッケなど、代表的なものは一通り揃っている感じ。値段は6~10ドルぐらいで、やや高めかな、といった印象。

     Boquerones.jpg
     Boquerones: Spanish White Anchovies
     Garlic Shrimps
     Garlic Shrimps
     Sauteed Mashrooms
     Sauteed Mashrooms
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     Tocino: Braised Pork Belly
     Tortilla.jpg
     Tortilla

どれも丁寧に作られていて美味。中では Tocino という豚バラを煮込んだものが特に気に入った。

締めはやはりパエリアで。この店は、Paella Barと銘打っているだけあって、パエリアの種類が豊富で、常時8種類を用意しているようだ。今回頼んだのは、イカ墨のパエリア。イカ墨で炊き上げた魚介類のパエリアだが、イカ墨の甘みが程よくご飯のしみ込んでいて満足の行く味わい。

     Black Rice Paella

食事が終わって我々が店を出る頃にもテーブルが空くのを待つお客さんがいっぱいいた。シェリーとタパスのおかげで、忙しかった1週間の疲れが吹き飛びました。

       Socarrat Paella Bar 
       259 West 19th Street (Btw 7 & 8)
      Tel.212-462-1000
      営業時間: 12PM ~ 11PM
      ランチ・ディナーともにアラカルト
      Zagat評価: 23/17/19/$48 (料理/内装/サービス/予算)
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テーマ : ニューヨーク
ジャンル : 海外情報

北米興行成績 (2011年9月26日)

先週末も全米公開が4本と、相変わらず新作ラッシュが続く北米映画シーンだが:

① The Lion King 3-D (第2週、前週1位)
② Moneyball (初登場)
③ Dolphin Tale (初登場)
④ Abduction (初登場)
⑤ Killer Elite (初登場)
⑥ Contagion (第3週、前週2位) 
⑦ Drive (第2週、前週3位)
⑧ The Help (第7週、前週4位)
⑨ Straw Dogs (第2週、前週5位)
⑩ I Don’t Know How She Does It (第2週、前週6位)

前週トップだった「ライオン・キング」の3D映像化版、“The Lion King 3-D”が好調さをキープし、興行収入22.1百万ドルでトップを維持。

     Lion King 3D

同作と1位を争うとみられていた、松井選手が所属するオークランド・アスレチックスのGM、ビリー・ビーンブラッド・ピット主演で描いた“Moneyball”は、興行収入20.6百万ドルとわずかに及ばず2位。僅差の3位には、20.3百万ドルを稼いだ感動作、“Dolphin Tale”がランクインした。

   Moneyball.jpg Dolphin Tale

両作品とも評判は良く、“Moneyball”出口調査での平均評価はAで早くも来年のアカデミー賞の候補作品との声が挙がっており、“Dolphin Tale”平均評価は満点のA+で、“Soul Surfer”“The Help”に続く今年3本目の満点評価作品となった。

続いて4位には、「トワイライト」シリーズでブレイクしたテイラー・ロートナー主演のアクション映画、“Abduction”が入ったが、興行収入は11.2百万ドルと期待を下回る成績。平均評価もB-とあまり良くない。

   Abduction.jpg Killer Elite

続いては、ロバート・デ・ニーロジェイソン・ステイサムクライヴ・オーウェンらのスターを集めたアクション・スリラー、“Killer Elite”が興行収入9.5百万ドルで5位に入った。こちらの評価はBとまずまず。

限定公開作では、ジェラルド・バトラーがスーダンで戦争孤児たちを助けるために奔走する宣教師に扮した“Machine Gun Preacher”ニューヨークロサンゼルスの4館で公開され、評判が良かったようだ。

        Machine Gun Preacher
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ジャンル : 映画

今週を振り返って

9月19日(月)

テレビ業界のアカデミー賞、エミー賞が昨日発表されたが、今年は Mad Men Modern Family の年だったよう。

ドラマ・シリーズ部門で4年連続の受賞となった Mad Men は、映画専門チャンネル、AMC製作のオリジナル・ドラマで、1960年代のニューヨークの大手広告代理店を舞台に、そこで働く人々の人間模様をスタイリッシュに描いたドラマ。

     Mad Men

一方のコメディ部門で2年連続の受賞となった Modern Family は、ロサンゼルス郊外に住むある家族を舞台に、現代の社会の様相をコミカルに映し出したドラマ。

     Modern Family

まったくタイプの異なるドラマ・シリーズだが、いずれも結構面白い内容です。

一方、ヤンキースの守護神、マリアノ・リベラ投手が本日の対ツインズ戦で、ついに大リーグ記録となる通算602セーブを達成。まだまだ衰える気配のないリベラ投手、これからどこまで記録を伸ばす事が出来るだろうか。

      Rivera breaks Save Record

9月21日(水)

バルセロナ郊外の一つ星レストラン、L‘Esguard のオーナーシェフ、Miguel Sanchez Romeraが注目のニューヨーク進出。彼自身の名前を冠したレストランをミッドタウン・ウェストにあるDream Hotel にオープンさせた。 つい最近惜しまれながら閉店となったあのエル・ブジの流れをくむ、素材を分子レベルまで分解して再構築する料理はニューヨーカーに受け入れられるのだろうか? コースは全11皿、245ドルと高価。

     Romera 1

9月22日(木)

不透明感を増すヨーロッパの政府債務問題と米国景気。本日も株価がまたまた大幅下落...

     Stock Plunge

9月23日(金)

今週は国連総会開催で、各国要人が多数ニューヨークを訪れていたため、マンハッタンは厳戒態勢。フィフス・アベニューもバリケードが置かれたり、警官がそれこそブロックごとに配置されたりしてものものしかった。野田首相は取り敢えず無難なデビューだったようだが、当地のニューヨーク・タイムズではコロコロと変わる日本の首相と政界について相当皮肉った記事を載せていた。

     Security Tighten at Fifth Avenue

9月24日(土)

いよいよコンサート・シーズンの開幕!というわけで、本日はニューヨーク・フィルの定期演奏会を聴きに行く。音楽監督のアラン・ギルバートの指揮で、曲目はマーラー没後100周年を意識してか、交響曲第2番。終演後、観客は総立ちで拍手を送り、大いに盛り上がりました!

     NYPO 0924 2

コンサートに先だって、リンカーン・センター界隈にある人気レストラン、Telepan で食事。先日、サンデー・ブランチで訪問して気に行ったこの店だが、通常のディナーも地元産の食材にこだわった料理で満足度の高い内容だった。

     Telepan_20110929114828.jpg
     
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