病に倒れた2人の歌姫たち ~ 鳴海真希子さんと石野見幸さんを偲んで

鳴海真希子リサイタル
Makiko Narumi Recital
パーセル「しばしの音楽」、フォーレ「ある一日の詩」ほか
ピアノ: トーマス・ホッペ
2001年6月23日、東京・津田ホールにて収録


期待の若手メゾ・ソプラノだった鳴海真希子さんが、軟部肉腫のため、33歳の若さでこの世を去ったのが10年前の4月30日だった。

芸大で日本を代表するソプラノ歌手、伊原直子さんに師事した後、ジュリアード音楽院に留学した鳴海さんは、在学中にメト主催の全米コンクールで準決勝に進出するなどで注目され、2000年には、タングルウッド音楽祭小澤征爾指揮のヴェルディ「ファルスタッフ」クイックリー夫人役に起用されるにいたる。

その後もオーケストラ・コンサートのソリスト、オペラへの出演など、活躍の機会が徐々に広がり始め、2002年10月には、中国の世界的な作曲家、タン・ドゥンの新作オペラ、「TEA」のサントリー・ホールでの世界初演への出演も決定したさなかでの、突然の逝去であった。

ニューヨーク赴任中であった2001年に、ヴァイオリンを習い始めたばかりの娘の先生から、同じジュリアードの出身で闘病中の人の治療費を集めるためにということで、買ったのがこのCD。

2001年6月23日に東京・津田ホールで行われたリサイタルのライブ録音だが、パーセルの歌曲に始まり、フォーレブラームスマーラーの歌曲から、ロッシーニのオペラ・アリアまで、実に幅広い選曲だが、いずれも、深々とした美声で、音楽性豊かに歌いあげていて、新進の歌手とは思えない素晴らしい歌唱を繰り広げていて、一聴して、その世界に引き込まれてしまった。

     Makiko Narumi 2

いまでも毎年、この時期になると必ずCD棚から取りだして聴くこのCD、このまま活動を続けていたら、どんなに活躍しただろうか、と思わずにはいられない。

⇒ 鳴海さんのサイト「ジュリアードの風景」

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石野見幸/カレント
Current.jpg
I’ve Seen That Face Before、I’m a Fool to Want You ほか
石野見幸 (vo)
大石学  (pf)
鷲見和広 (b) ほか
(2006年 録音)


兵庫県出身の石野見幸さんは、ジャズ・ヴォーカリストの伊藤君子さんなどに師事した後、ジャズ・ヴォーカリストとしてデビュー。関西を中心に活動をしていたが、2006年にスキルス性胃がんと診断され、1年あまりの闘病生活の後、2007年11月8日に35歳の若さで亡くなった。

闘病中も舞台に立とうとする姿は、当時NHKなどでも紹介されたため、ご覧になった方もいると思います。

     Miyuki Ishino

抗がん剤の投与を受け、副作用に苦しみながら闘病中だった2006年10月に録音されたのが、このCD。

彼女がリリースした唯一のアルバムとなったこのCDで聴かれる歌声は、とても末期がんで闘病中の人のものとは思えない、力強いもので、生への希望を感じさせるもの。ちょっと落ち込んでいる時など(そういう事があまりある訳ではないのですが...)、このCDを聞いて元気をもらいます。落ち込んでいる場合じゃないぞと...


どちらも音楽にかける想いが一杯詰まったアルバム、ご関心をもたれたら、是非聴いて頂きたいと思います。
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北米興行成績 (2012年4月30日)

トライベッカ映画祭が開催されている中、先週末は4本もの作品が全米公開されたが:

① Think Like a Man (第2週、前週1位)
② The Pirates! Band of Misfits (初登場)
③ The Lucky One (第2週、前週2位) 
④ The Hunger Games (第6週、前週3位)
⑤ The Five-Year Engagement (初登場)
⑥ Safe (初登場) 
⑦ The Raven (初登場)
⑧ The Chimpanzee (第2週、前週4位)
⑨ The Three Stooges (第3週、前週5位)
⑩ The Cabin in the Woods (第3週、前週6位)


興行収入トップが予想されたロマンチック・コメディ、“The Five-Year Engagement”は、予想を大幅に下回る興行収入11.2百万ドルでまさかの5位に沈んだ。ジェイソン・シーゲルエミリー・ブラントが共演したこの映画、観た人の平均評価もB-と今ひとつ。

   Five Year Engagement The Pirates

トップの座は、興行収入18百万ドルで、前週に引き続きアンサンブル・コメディ映画“Think Like a Man”が死守。2位に入ったのが、イギリス発のアニメ映画、“The Pirates! Band of Misfits”で、興行収入は新作中最高の11.4百万ドル。

     Think Like a Man

興行収入7.7百万ドルで6位と低迷したのが、おなじみジェイソン・ステイサム主演のアクション映画、“Safe”平均評価は新作4作中最高のBであった。

   Safe.jpg Raven.jpg

最後の7位に入ったのが、ジョン・キューザックエドガー・アラン・ポーを演じた“The Raven”で、事前予想の12百万ドルを大きく下回る興行収入7.3百万ドルと惨敗。批評家からの評価も最悪のようだが、観た人の平均評価はBと、それほど悪くはなかった。

なお海外では、全米公開に先立って、マーベル・コミックのヒーロー達が勢ぞろいした話題の“The Avengers”が公開され、大ヒットとなっているようだ。

     Avengers.jpg
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生誕150周年! ドビュッシーの生涯をたどって: その3 ~ ローマ留学

1884年、3度目の挑戦でローマ大賞を獲得して2年間のローマ留学の権利を獲得したドビュッシー、喜び勇んで旅立ったかと思いきや、その頃愛人関係にあったヴァニエ夫人と離れ離れになるのが嫌で、ぐずぐずとローマへの出発を延期していた。

       Debussy en 1885
       ローマ大賞当時のドビュッシー

1885年1月末にローマヴィラ・メディチに到着したドビュッシー、受賞作品の演奏などの行事をこなした後は、作曲に専念する訳でもなく、鬱々とした日々を送っていた。ヴァニエ夫人と離れ離れの生活に耐えられない彼は、何とヴァニエ夫人の夫に宛てて、「人嫌いな自分」はローマでは人間関係も作れず、いかに不幸な日々を送っているか、思うのはパリの事ばかり、と切々と記した手紙を送るのであった。ヴァニエ夫人もこの手紙を見るであろうことを見越してのこのやり方、自己中心的なドビュッシーの性格を物語っているようで興味深い。

     Villa Medici
     ヴィラ・メディチ

この生活に我慢出来なくなったドビュッシー、85年4月と7月の2度にわたってフランスに舞い戻り、ヴァニエ夫人と密会したりしていたが、それでも、歌曲を数曲作るなどの作曲活動は続けていた。

滞在期間が規定最短の2年になろうとした頃に、オーケストラとピアノと合唱のための交響組曲「春」を作曲したのだが、オーケストレーションが間に合わず、その部分は下書きのままという状態だった。これについては、楽譜を預けていた印刷所が火事になったため、という言い訳が添えられていたが、そのような記録は残っていないようだ。

こうして、あまり充実していたとはいえない、2年間のローマ留学を終え、1887年 3月、ドビュッシーパリに帰って来たのだった。

【交響組曲「春」】

Debussy Martinon
ドビュッシー: 管弦楽曲全集
ジャン・マルティノン指揮フランス国立放送管弦楽団・同合唱団ほか
1973~4年録音


ローマ留学時代の最後に完成されたこの作品は、ボッティチェリの名作「春」と、彼と同時期にローマに留学していた、絵画部門のローマ大賞受賞者、マルセル・バッシの同名作品に霊感を得て作曲されたもの。前述の通り、楽譜が印刷所の火災によって焼失?した為演奏はされず、結局1913年になってドビュッシーの指示により、弟子のアンリ・ビュセールが、2台のピアノと合唱のスコアからオーケストレーションを施したもの。なお、その際合唱は省かれている。

       Henri Busser
       Henri Busser (1872~1973)

全体で約16分程のこの曲は2部に分かれていて、弦楽器と木管を中心にした、どこか夢見るような雰囲気を漂わせている第一部と、一転して春を迎えた喜びを表わすような華やかなな第二部が続く。嬰へ長調という、珍しい調性を採用しているが、ハ長調から最も遠いこの調のおかげで、全体的にくぐもった感じを受け、そのため、この作品を受け取った学士院からは、「芸術作品の真実の最大の敵であるあのあいまいな印象主義に、ドビュッシーは注意すべきである」という酷評を受ける事となった。

フランスの名指揮者、マルティノンによるドビュッシーの管弦楽曲全集は、かねてより名盤として知られているもので、今年リリースされたSACD盤ではオリジナルのアナログ・マスターから丁寧なりマスタリングを施したと説明されているだけあって、見違えるように音が良くなっている。勿論、この「春」も第一部の春の香気を漂わせる表現など、素晴らしい演奏!
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メランコリア ~ ラース・フォン・トリアー監督が描く独自の終末

昨年のカンヌ映画祭でプレミエ上映されたデンマークの鬼才、ラース・フォン・トリアー監督の最新作で、終末を迎えた地球の姿を描いている。ヒトラーに共鳴するという発言で、トリアー監督が映画祭から追放処分となる中、主演を演じたキルステン・ダンスト主演女優賞を獲得している。全米では昨年11月に限定公開されている。

       Melancholia Poster

巨大惑星「メランコリア」が地球に接近する中、ジャスティン(ダンスト)は姉クレア(シャルロット・ゲンズブール)とその夫ジョン(キーファー・サザーランド)が所有する豪邸で盛大な結婚式を行う。

     Melancholia 1

大勢の招待客が集まった豪勢な結婚式なのだが、なぜかジャスティンは虚ろな表情で、心ここにあらずといった感じで、姉夫婦を苛立たせる。

     Melancholia 2

それからしばらく経って、クレアは深刻なうつ病にかかってしまったジャスティンを自宅に受け入れることに。地球にさらに接近してきたメランコリアが、地球に激突する可能性が高まり、クレアを始め周囲の人間が冷静さを失っていく中、逆にジャスティンは落ち着きを取り戻していく...

     Melancholia 3

トリアー監督らしく、個性的な作品。映画の冒頭、スローモーションとCGを駆使して、地球終末の瞬間が淡々と描かれていくが、これが素晴らしく詩的で美しい!同じカンヌ映画祭で上映されたテレンス・マリック監督「ツリー・オブ・ライフ」でも映画の冒頭に同じような映像が続けられていた(但し、こちらは地球の始まりをイメージ)が、それより数段美しい映像!

     Melancholia 4
     冒頭繰り広げられる幻想的な映像の数々!

物語は、ジャスティンの結婚式を描いた前半と、地球の終末を前にしたジャスティンクレア一家の生活を描いた後半の2部構成だが、冒頭に見せられた映像が後半のストーリー展開の伏線になっていくという心にくい演出。

     Melancholia 5

ジャスティンよりはるかに常識人であるクレアが、メランコリアが地球に接近するにつれ、冷静さを失い、笑気を失っていく過程が淡々と、しかし見る者を映画の中に引き込んでいくように物語が進んでいく。さすが、トリアー監督ならではの作品! ダンストも見事な演技で印象に残る。  ⇒ 9/10点

メランコリア
Melancholia (2011年・デンマーク)
監督: Lars von Trier
キャスト: Kirsten Dunst, Charlotte Gainsbourg, Kiefer Sutherland, Alexander Skarsgard, Stellan Skarsgard, John Hurt, Charlotte Rampling, Jesper Christensen, Udo Kier ほか
上映時間: 135分
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映画: Postcards From the Zoo @ トライベッカ映画祭

2001年9月11日の同時多発テロで打撃を受けたトライベッカ地区を再び活性化させるため、ロバート・デニーロらが提唱して2002年に始まったトライベッカ映画祭。年々参加作品も増えて、今ではトライベッカ地区だけでは収まりきらず、ダウンタウン一帯で開催されるようになっている。11回目に当たる今年は長編映画だけでも92作品が参加して4月16日から29日まで開催された。

     Tribeca Film Festival
     映画祭創設者の一人、デ・ニーロ

映画祭も終わりに近づいた4月28日に、インドネシアから出品された “Postcards From the Zoo” というファンタジー映画を観に行った。

       Postcards Poster

本作はインドネシアエドウィン監督の新作で、今年2月に開催された第62回ベルリン国際映画祭でプレミエ上映されている。

     Tribeca Film
     本作が上映されたイースト・ヴィレッジの映画館

インドネシア・ジャカルタラグナン動物園。少女ラナ(ラディア・シェリル)は、幼い頃に両親に置き去りにされて以来、この動物園の中で育ってきた。

     Postcards 1

動物園の中には、彼女の他にも様々な人が住みついていて、お互いに助け合いながら暮らしている(日本の動物園ではあり得ないですね)。そんなある日、彼女は最近住みついたカウボーイ姿の青年(ニコラス・サプートラ)に心を奪われる。

     Postcards 2

彼女は、マジシャンらしいその青年のアシスタントをする事になり、置き去りにされて以来、初めて動物園の外に出る。

     Postcards 4

こう書いていくと、物心ついてから初めて人間社会に触れた少女の心の動きを描いた映画というふうに思われるが、この映画は特にこれといったストーリ展開があるわけではなく、淡々と動物園の情景、外界の情景が描かれていき、ラナの心の動きはつかみにくい。

     Postcards 3

ファンタジー映画“らしさ”は何となく伝わってくるが、どことなく焦点が定まっていない感じが強い作品。お金を稼ぐためか?、彼女は風俗店で働いたりするが、これもなぜなのか良く分かりにくい。でも、ラナを演じたラディア・シェリルは大きな瞳が印象的な女優さんで、映画の中ではひときわ存在感を放っていた。

     Postcards 6

映画では、どう見ても少女にしか見えなかったが、今年32歳になるのだという。驚きました!  ⇒ 6/10点

     Postcards 5
     ベルリン国際映画祭で。エドウィン監督(右)、共演のサプートラ(左)と

       Postcards From the Zoo
       (2012年・インドネシア)
      監督: Edwin
      キャスト: Ladya Cheryl、Nicholas Saputra、Abizars、
            Adjie Nur Ahmad、Klarysa Aurelia Raditya ほか
      上映時間: 96分


       Tribeca Film 2
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