生誕200周年!ヴェルディの生涯をたどって: その1 ~ ブッセートの天才少年

2013年はオペラ史にそびえ立つ二人の巨人、ヴェルディワーグナーの生誕200周年。どちらを選ぶかちょっと迷ったのだが、今年のテーマとしてはヴェルディにフォーカスして行きたいと思う。

ジュゼッペ・ヴェルディは1813年10月10日、カルロルイージャ夫妻の長男として、イタリア北部エミリア=ロマーニャ州の中心都市パルマにほど近い町、ブッセート近郊の レ・ロンコーレ村 に生まれた。

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 ブッセートの町

当時はフランス皇帝ナポレオンの直轄領であったこの地域で、ヴェルディ一族は、祖父の代から宿屋を始め商売を手広く営んでいた。一族には特に音楽家はいなかったようである。

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 レ・ロンコーレに残るヴェルディの生家

幼い頃から音楽に興味を示し、家にあった家庭用のチェンバロ、スピネットを弾く事に熱中していたジュゼッペ少年は、村で唯一の教会であるサン・ミケーレ教会のオルガニストが高齢で亡くなった際に、後継のオルガニストに任命された程であった。当時のジュゼッペはわずか10歳であった!

 San Michele
 サン・ミケーレ教会

12歳になり、ジュゼッペは下宿をしてブッセートの中学校に通う事になった。ナポレオン敗北後、パルマ・ピアチェンツァ公国に編入されていたこの町は、人口約2000人の小さな町ながら、ルネッサンス時代にこの地の支配者で、文化・芸術に理解があったパッラヴィチーノ家により、豊かな文化環境が整えられていた。

音楽のみならず、学業全般にわたって優秀な成績を収めていたジュゼッペは町の有力者たちに注目され、その中の一人で、富裕な商人で熱心な音楽愛好家であったアントーニオ・バレッツィはとりわけジュゼッペ少年をかわいがり、自分の店でアルバイトをさせて小遣い稼ぎをさせたり、自宅にあったピアノを自由に使わせてくれたりした。

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町の教会などで自作の発表をしたりして、すくすくと育って行ったジュゼッペは、町の期待の存在となっていった。バレッツィの尽力もあって1832年1月に奨学金を得た18歳のジュゼッペは、周囲の期待を担ってロンバルド=ヴェネト王国の首都、ミラノに留学する事になる。ところが、ここで予想外の事態が発生する。ヴェルディミラノ音楽院の入学試験に落ちてしまったのだ。不合格の理由は彼が既に入学制限年齢の14歳を大幅に過ぎていた事が大きいようだが、ピアノの奏法が自己流だったのも影響したようだ。しかし、これでおめおめと故郷に帰る事など出来ない彼は、当時ミラノ・スカラ座の「マエストロ・アル・チェンバロ(歌手の指導役のような役)」の地位にあった作曲家ヴィンチェンツォ・ラヴィーニャに師事する事となった。

ラヴィーニャから徹底的に対位法を叩き込まれる一方で古典派の大作曲家の作品を研究したり、スカラ座のオペラ公演に通ったりした3年あまりはヴェルディにとって実り多い時期であったようだ。

しかし故郷ブッセートでは、ヴェルディの恩師であったサン・バルトロメオ教会の楽長兼オルガニストであったプロヴェージが亡くなった後の後継者として、ヴェルディを推す進歩派と、その動きを快く思わない主任司祭バッラリーニに代表される守旧派との争いが表面化していた。

この騒ぎはおよそ2年半にわたり続き、ちょうどミラノにほど近いモンツァの楽長職のオファー(しかもブッセートよりもはるかに良い収入条件で)を得ていたヴェルディは大いに悩むが、結局故郷の人々の期待を裏切る事の出来ない彼は、紆余曲折を経てついに1836年3月にブッセートの音楽教師の職を受ける。続いて5月には長年恋仲だったバレンツィの長女、マルゲリータと晴れて結婚式を挙げる。ヴェルディは22歳であった。

      Margherita Verdi

【オペラ 「ナブッコ」(1842年3月9日、ミラノ・スカラ座にて初演)】
Nabucco Sinopoli
ナブッコ: ピエロ・カップッチッリ(Br)
イズマエーレ: プラシド・ドミンゴ(T)
ザッカリーア: エウゲニー・ネステレンコ(Bs)
アビガイッレ: ゲーナ・ディミトローヴァ(MS)
フェネーナ: ルチア・ヴァレンティーニ=テラーニ(S) ほか
ジュゼッペ・シノーポリ指揮ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団・合唱団
1982年録音


生涯に27のオペラを作曲したヴェルディが1842年、28歳の時に発表した3作目のオペラで、オペラ作曲家としての名声が広まるきっかけとなった重要な作品。

この頃のヴェルディは、相次いで妻子を失くし、失意のどん底にあったが、このオペラの成功をきっかけに彼の人生は公私ともに大きく転換していく。

登場人物の心理面での掘り下げや音楽はまだまだ荒削りな面は感じられるものの、輝かしい旋律、バリトンやメゾ・ソプラノに重要な役割を与えるなどのヴェルディの特徴は、すでにこのオペラで発揮されている。

とりわけ有名なのは、「イタリアの第2の国歌」とも言われる第3幕の合唱、「行け、わが想いよ、金色の翼に乗って(Va、 Pensiero、Sull’ali Dorate)で、これを聴くとイタリア人でなくても、胸が熱くなってくる!

シノーポリのCDは、指揮・歌唱ともバランスの取れた名演で、このオペラの良さを心ゆくまで堪能出来るもの。
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本日のスイーツ: Le Pain Quotidien の ラズベリー・タルト

最近マンハッタンで増殖を続けているベルギー発のカフェ・ベーカリー、Le Pain Quotidien ラズベリー・タルト。果物のみずみずしさが嬉しい、ほっとするスイーツです!

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⇒ Le Pain Quotidien のパンプキン・タルト
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2月のコンサートより

2月の注目コンサートより:

★★★ メトロポリタン・オペラ: リゴレット

意欲的な新演出が目立つ最近のメトヴェルディ中期の傑作「リゴレット」トニー賞演出家のマイケル・メイヤーによる新演出。舞台を1960年代のラスベガスに移した斬新な演出は観客にどう受け止められるだろうか。歌手陣はタイトル・ロールにジェリコ・ルチッチをはじめ、ピョートル・ベチャワディアナ・ダムラウというメトらしい豪華な配役。

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メトロポリタン歌劇場、2013年2月12、16(マチネー)、19、23日、4月13、16、20、24、27日、5月1日。チケット:30~450ドル
⇒ ウェブ・サイト

★★  マリス・ヤンソンス指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

円熟期にあるマリス・ヤンソンスが手兵のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団を率いてカーネギー・ホールに登場。

プログラムはこのオーケストラとゆかりの深いマーラーの交響曲第1番に、レオニダス・カヴァコスをソリストに迎えてのバルトークのヴァイオリン協奏曲第2番。現在のトップ水準の演奏が期待される!

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カーネギー・ホール、2013年2月13日。チケット: 22.50~140ドル。
⇒ ウェブ・サイト

★   ヤニック・ネゼ=セギャン指揮フィラデルフィア管弦楽団

今シーズンから名門フィラデルフィア管弦楽団の音楽監督に就任したカナダの俊英、ヤニック・ネゼ=セギャン。昨年秋にカーネギー・ホールで行われたニューヨークの聴衆へのお披露目コンサートでのヴェルディのレクイエムの熱い演奏は高い評価を得たが、今回はフランスのピアニスト、ジャン=イヴ・ティボーデを迎えてのラヴェルのピアノ協奏曲に、今年初演100周年を迎えたストラヴィンスキーの「春の祭典」ほか。前任のエッシェンバッハの時代にはやや停滞も見られ、倒産も経験した同楽団だが、ヤニックの就任により、かっての栄光を取り戻す事が期待されている。期待のコンビによる「ハルサイ」はどのようなエキサイティングな演奏になるだろうか?

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カーネギー・ホール、2013年2月22日。チケット: 19.50~116ドル。
⇒ ウェブ・サイト
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コンサート: ニューヨーク・フィル定期演奏会

ニューヨーク・フィルの1月末の定期演奏会に登場したのは、チェコの名匠、クリストフ・フォン・ドホナーニ

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1984年から2002年までの18年間音楽監督を務めたクリーヴランド管弦楽団とのコンビで高い評価を得たドホナーニもすでに83歳。最近は毎年のようにニューヨーク・フィルに客演しているが、今回のプログラムはオール・ベートーヴェン・プログラムで、バレエ「プロメテウスの創造物」序曲で始まり、ラドゥー・ルプーを独奏者に迎えてのピアノ協奏曲第1番に、交響曲第5番というラインアップ。

序曲に続いて演奏されたルプーピアノ協奏曲第1番は、キラキラと輝く美音を駆使した、軽やかな演奏。昨年ニューヨーク・フィルに客演した際に弾いたブラームスピアノ協奏曲第1番で見せた、重厚で巨匠風な演奏とはうって変わった演奏で、曲の性格が違うという事は勿論あるとはいえ、非常に興味深かった。

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プログラム後半、メインに据えられた運命交響曲は、ドホナーニらしい正攻法の演奏で、この傑作の素晴らしさを素直に堪能出来る演奏。クリーヴランド管弦楽団時代は、早目のテンポですっきりとした演奏が特徴的だったが、最近はじっくりとしたテンポで曲の良さを自然に語らせるといった方向に変わって来ているように思う。

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第15,493回 ニューヨーク・フィルハーモニック定期演奏会
指揮: Christoph von Dohnanyi
All-Beethoven Program
Overture to Geschopfe des Prometheus、Op.43
Piano Concerto No.1 in C major、Op.15
(ピアノ独奏: Radu Lupu)
Symphony No.5 in C minor、Op.67
2013年1月31日、エイヴリー・フィッシャー・ホール
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冬のレストラン・ウィーク: Mercer Kitchen

今回訪れたのは、ソーホーMercer Kitchen

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ミシュラン三ツ星シェフ、Jean-Georges Vongerichtenが1998年に、Mercer Hotel にオープンしたこの店は、開店直後からトレンディ・レストランとして人気を博し、現在でもトレンディ・エリア、ソーホーの人気レストランの一つ。

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この店のレストラン・ウィーク期間中のディナー・コース(38ドル)は、前菜2種・メイン3種・デザート2種から選べるようになっている。

【前菜: Crispy Gulf Shrimp with Herbs and Citrus-Chili Sauce】

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軽く衣をつけてフライにした海老だが、火の通し方がうまく、海老の旨味をストレートに引き出している一品。ちょっとスパイシーなタルタルソースも良く合う!

【メイン: Miso Glazed Hake with Bok Choy and Lime】

コスト的に手頃なのか、レストラン・ウィーク期間中に一躍ポピュラーな存在となるメルルーサ(タラ)。味噌に漬けた後にソテーされていて、ちょっと和風に振った感じだが、味は確か。

【Crnchy Baked Organic Chicken with Glazed Carrots and Tarragon】

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こちらはフライド・チキンを店流にアレンジした感じだが、やはり身がジューシーで、カリッとした衣とのバランスが良く、旨い!

【デザート: Warm Molten Chocolate Cake,Vanilla Ice Cream】

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チョコレート・フォンダン・ケーキ。ナイフを入れると、チョコレートがトロッと流れ出して来る様が良い!見た目以上に濃厚なケーキで、レストランのデザートとしてふさわしい感じ。

【デザート: Warm Pecan Cinnamon Bun、Espresso Ice Cream and Creme Fraiche Frosting】

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シナモン・ロールを上手にレストランのデザートに仕立て上げている一品。中はしっとりとしていて、ソースが旨く引き立て役となっている。

メイン・ダイニングは地階にあるのだが、満席の盛況ぶりで、バーエリアにも人が鈴なり。ミッドタウンと違い、やはりおしゃれな人が多い感じで、今だにトレンディー・レストランとして健在である事が印象づけられた!

 Mercer 3

Mercer Kitchen
99 Prince Street (@ Mercer St.)
Tel.212-966-5454
朝食: 7AM~12PM
ランチ: 11:30AM~3:30PM (なお、3:30~5:30PMも営業)
ブランチ: 11AM~4PM (日のみ)
ディナー: 5:30AM~12AM (金・土: ~1AM)
通常はアラカルト
Zagat 評価: 22/22/19/$54 (料理/内装/サービス/予算)


 Mercer 4
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