生誕200周年!ヴェルディの生涯をたどって: その2 〜 行け、わが想いよ!

1836年4月にマルゲリータと結婚式を挙げたヴェルディは、ミラノへの短い新婚旅行から戻ると、早速ブッセートの音楽教師としての仕事を始めた。

ヴェルディは音楽教師の仕事を真面目にこなし、ブッセートや近隣の町の教会などの依頼に応じて数々の宗教曲などを作曲したが、元々田舎町の枠に収まる筈のない才能は、次第に現状に大きな不満を持つようになっていった。

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 ブッセートのヴェルディ広場

ブッセートで勤勉に働くかたわらで、ミラノの劇場の事を片時も忘れることのなかったヴェルディは、アマチュアの詩人、アントーニオ・ピアッツァの台本をもとにオペラを書き上げた。オペラの題名は「ロチェステル」というものだったが、弱冠22歳であった無名の作曲家のオペラを上演してくれるような劇場はなかなか見つからない。

ヴェルディが退屈なブッセートでの生活を悶々と送っている間に、37年には長女ヴィルジーニア、38年には長男イチリオが生まれるが、イチリオが生まれた1か月後に、ヴィルジーニアが病気で亡くなってしまう。

ヴェルディは傷心の妻を連れて、1か月ほどミラノに滞在するが、そこで自分はブッセートにいるべきではないと確信するにいたり、ミラノから戻って程なくして、ブッセート市長宛に辞表を提出し、1839年2月、一家でミラノに移り住む事を決心する。

こうしてミラノに出てきたヴェルディは自作のオペラを上演してもらうためにミラノ中を駆け回るが、なかなかチャンスはやって来ない。

諦めかけたヴェルディは家族と共にブッセートに戻る事まで考えるが、そのような中、友人の一人が、人を介してスカラ座の総支配人、バルトロメーオ・メレッリ「ロチェステル」の楽譜を手渡す事に成功し、メレッリに紹介された詩人テミストークレ・ソレーラにより台本にも手が加えられ、題名も「オベルト、サン・ボニファーチョ伯爵」変えられたこのオペラは、スカラ座のオフ・シーズン中、1839年11月17日に記念すべき初演が行われた。

 La Scala
 ミラノ・スカラ座

このオペラは拍手をもって迎えられ、新進作曲家のデビュー作としてはまずまずの成功を収めることが出来、その1か月前に長男のイチリオを病気で失っていたヴェルディ夫妻に大きな喜びをもたらした。気を良くしたメレッリは、引き続きヴェルディに新作オペラ3曲の作曲を依頼する。

ところが、その依頼は、フェリーチェ・ロマーニの台本による「一日だけの王様」というオペラ・ブッファの作曲だった。ロマーニドニゼッティ「愛の妙薬」ベッリーニ「ノルマ」などの傑作の台本を手掛けた高名な台本作家であったが、イタリア独立の機運が盛り上がっていた当時のミラノにはまったくなじまないこのオペラは、1840年9月に初演されるが、惨憺たる失敗に終わってしまう。

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6月に彼を支え続けてくれた妻マルゲリータを病気で失っていたヴェルディは打ちのめされ、二度と作曲の筆を取らないとまで思いつめ、メレッリに契約の破棄を申し出るが、太っ腹のメレッリは約束通り「一日の王様」の作曲料を満額支払ったばかりか、ヴェルディに対して、再び作曲する気になるまで契約は破棄せずに待っていると告げたのだった。

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      メレッリ

その年の冬、街で偶然ヴェルディに出くわしたメレッリはそのまま彼をスカラ座に連れていき、一冊の台本を渡した。後年のヴェルディの言葉によれば、気乗りがしなかったものの、無理やりその台本を持って帰らされた彼は自宅に戻り、何気なく台本をめくってみると、一つの言葉が目に入ったそうだ。

「行け、わが想いよ、金色の翼に乗って」

その言葉に引き入れられるように台本を読み始めた彼は、再び作曲の筆を取る事を決意する。ヴェルディ最初の傑作、「ナブッコ」の誕生であった(いささか出来過ぎの話のような気がしますが)。

【オペラ「アッティラ」(1846年3月17日、ヴェネツィア・フェニーチェ劇場にて初演)】
Attila Muti
オペラ「アッティラ」
アッティラ: サミュエル・ラミー (Bs)
オダベッラ: シェリル・ステューダー (S)
フォレスト: ニール・シコフ (T)
エツィオ: ジョルジョ・ザンカナーロ (Br) ほか
リッカルド・ムーティ指揮ミラノ・スカラ座管弦楽団・同合唱団
1989年録音


ヴェルディ9作目のオペラで、1846年3月にヴェネツィアフェニーチェ劇場で初演されている。すでにこの頃のヴェルディの名声は、「ナブッコ」「エルナーニ」の成功によって確立されていたが、エルナーニの初演以降、作曲依頼の殺到により、体調も思わしくなく、作品の密度もそれまでのものに較べ低い状態が続いていた。

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 フェニーチェ劇場

本作は初期のヴェルディを特徴づける愛国心を鼓舞するような歴史劇で、久々にヴェルディらしい、たくましく輝かしい音楽が展開される。

最近まであまり上演される事がなかった作品だが、ミラノ・スカラ座の音楽監督に着任したムーティが積極的に取り上げてから、世界の主要歌劇場で上演されるようになってきた。ムーティはよほどこの作品が気に入っているらしく、彼の在任期間中はスカラ座の電話の待ち受けの音楽がこの作品だった程。2010年にメトに初めて登場した際の演目にも、この作品を選んでいる。

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 ムーティ

この役のタイトル・ロールを得意にしているサミュエル・ラミーが出演したこのCDも、ヴェルディの輝かしい音楽を雄弁に歌わせていて秀逸。ラミーの歌唱も素晴らしい!

⇒ メトでの「アッティラ」感想
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テーマ : クラシック
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4月のコンサートより

今年のニューヨークは寒さが長引いていて、日本とは違い、桜の開花はもうちょっと先のようです。4月は暖かくなれば良いのですが...

さて、ニューヨークの音楽シーズンも早いもので終盤に入って来ましたが、4月も注目のコンサートが目白押し

★★★ メトロポリタン・オペラ: ニーベルングの指環

賛否両論を巻き起こしたロベール・ルパージュの演出によるメトハイテク・リング、それでも現在を代表するリングのプロダクションである事は間違いなく、4日がかり、15時間に及ぶ公演は修業の観があるものの、やはり一度は見るべきもの。

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今回は歌手陣も初演時の顔ぶれから大きく入れ替わっており、それぞれがどのようなワーグナー歌唱を聴かせてくれるのか楽しみ。願わくば、舞台進行に合わせて様々に形を変えていく45トンにも及ぶ金属製の舞台装置があまりきしみ音を発生させませんように!

メトロポリタン歌劇場、4月6・13・20・23日(サイクル I)、4月25・26・29日・5月2日(サイクル II)、5月4・6・8・11日(サイクル III)。チケット:55~450ドル(単券)。
⇒ ウェブ・サイト
⇒ リング序夜「ラインの黄金」感想
⇒ リング第1日「ワルキューレ」感想
⇒ リング第2日「ジークフリート」感想
⇒ リング第3日「神々の黄昏」感想

★★  マウリツィオ・ポリーニ リサイタル

ここのところ、2年連続で病気のために来米公演がキャンセルとなっている巨匠ポリーニ。今年もニューヨークでは2回の公演がカーネギー・ホールで予定されているが、果たして大丈夫だろうか。4月21日のコンサートはショパンドビュッシーの前奏曲集第1巻。5月5日のコンサートはオール・ベートーヴェン・プログラムと、どちらも、現在最高のピアニストの一人の芸術を聴くにはうってつけのプログラム。

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4月21日・5月5日、カーネギー・ホール。チケット: 21~130ドル。
⇒ ウェブ・サイト

⇒ 2010年のカーネギー・ホールでのリサイタル感想

★   ティーレマン/ドレスデン・シュターツカペレ

近年、ドイツを代表する指揮者となってきているクリスチャン・ティーレマンが、主席指揮者を務めているドイツ最古のオーケストラ、ドレスデン・シュターツカペレを率いて来米。2回のコンサートではブラームスブルックナーという、このコンビが得意とするプログラムで、ドイツ音楽の神髄を聴かせてくれる事は必至!

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4月17日・19日、カーネギー・ホール。チケット: 19.50~116ドル。
⇒ ウェブ・サイト
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映画: ゼロ・ダーク・サーティ

「ハート・ロッカー」(08年)アカデミー作品賞(女性としては史上初)・監督賞など 6部門で栄冠に輝いたキャスリン・ビグロー監督の最新作。全米では昨年12月に限定公開され、全米公開に拡大された公開4週目に興行成績のトップに立っている。2013年のアカデミー賞では、作品賞など5部門でノミネートされ、音響編集賞を受賞している。

      Zero Poster

2001年のアメリカの同時多発テロの首謀者であるウサーマ・ビン・ラディンの行方を長年追い続けている捜査チームに、CIAアナリストのマヤ(ジェシカ・チャスティン)が加わった。

 Zero 1

巨額の予算が投入され、懸命にビン・ラディンの行方を追い続ける捜査チームの活動をよそに、世界各地でテロにより人々の血が流される中、抜群の情報収集力と分析力で、マヤは一歩ずつビン・ラディンの居場所を特定していくが...

 Zero 2

前作「ハート・ロッカー」同様、極限状況の中にある人間をサスペンス感あふれるタッチで描いた秀作。160分近い長編ながら、最後まで緊迫感が途切れることなく、終盤のクライマックス、ビン・ラディンの隠れ家を急襲する場面まで観る者を引っ張っていくビグローの力量はさすがの一言。

 Zero 3

冷徹にビン・ラディンの居場所を突き止めていくマヤを演じたチャスティンアカデミー主演女優賞ノミネートも納得の熱演。本当に幅広い役柄に対応出来る女優さんで、ハリウッドで引っ張りだこになっているのもうなずける。

 Zero 4
 
ここでは異文化の対立など、真面目な主題は扱われておらず、エンタテイメントに徹しているが、その面では一級の作品。しかも、単純なアクション・サスペンス映画の枠を超えて、人間がキッチリと描かれているのが好ましい。置かれている状況は違うのだが、どちらも極限状況の中で生きていて、しかもその中でしか生きられないような人物を描いている点で、前作の「ハートロッカー」と共通しているように感じられるのが、興味深かかった。

 Zero 6

冷徹に任務をやり遂げた後、マヤが不意に見せる涙が印象に残る。 ⇒ 9/10点

 Zero 5

ゼロ・ダーク・サーティ
Zero Dark Thirty (2012年・アメリカ)
監督: Kathryn Bigelow
キャスト: Jessica Chastain、Jason Clarke、Joel Edgerton、Jennifer Ehle、Mark Strong、Kyle Chandler、Edgar Ramirez、James Gandolfini、Chris Pratt、Callan Mulvey、Fares Fares ほか
上映時間: 158分


⇒ 「ハートロッカー」感想

⇒ チャステイン出演の“The Debt”(10年)感想
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今週のジュリアード・プレカレッジ

今週のプレカレッジイースターの週末で休みだったが、来週リサイタルが控えている娘は特別にレッスンをしてもらう事に。

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リサイタルのプログラムはバッハの無伴奏ソナタ第1番フォーレのソナタ第1番シベリウスの協奏曲(第1楽章)を経て最後にヴィエニャフスキーのスケルツォ・タランテラと盛りだくさん。今週は1週間学校が休みだったので、ある程度はさらえたらしいが、これだけの曲を同時にこなさなければならないのは結構大変そう...

一方、夏に受ける予定のコンクールの審査用DVDのために、ジュリアードの録音スタジオを借りて録画どり。生徒の演奏の収録用にちゃんと録音スタジオを完備している所が、ジュリアードの凄いところ。こちらはベートーヴェンのソナタモーツァルトのコンチェルトシベリウスのコンチェルトとまたまた盛りだくさん。

来週の学内リサイタルが終わると、翌週は高校のチャリティ・コンサートでバッハのシャコンヌを弾き、その次の週はニューヨークの高校生の室内楽フェスティヴァルに参加してシューベルトのカルテットと、息つく暇もない忙しさ。高校の宿題も相変わらずとてつもなく大変そうなので、本当に体力勝負の毎日が続いています。
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本日の一杯: Tabata のガーリック・ラーメン

マンハッタンのラーメン店でも安定した仕事が際立っている Tabata で、ガーリック・ラーメン(9ドル)にトライ。

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汁のないまぜ麺で、特製油で和えたシコシコの麺の上に大量のガーリック・チップ、細かくしたチャーシュー、ネギが載せられている。これらをかき混ぜて頂くとやはり旨い。ニューヨークではまだまだまぜ麺は希少価値なので、これは嬉しい一杯。

但し、2ドル増しで大盛りにしたが、麺の量はほぼ2倍。完食するのは結構大変でした...

⇒ 前回訪問記
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