生誕200周年! ヴェルディの生涯をたどって: その5 〜 傑作の誕生

1849年にローマ「レニャーノの戦い」の初演を終えたヴェルディは、パリに戻り早速次の仕事であるナポリ・サン・カルロ劇場のための新作に取りかかった。シラーの戯曲「たくらみと恋」を題材にした「ルイザ・ミラー」は、それまで数作続いた愛国主義的なオペラから一転して、人間の心理描写に重きを置いた題材に関心を戻した作品となった。

 San Carlo

このオペラで聞かれる情感豊かな旋律、重唱のアンサンブルの見事さは、初期の作品から大きく進歩していて、ドラマと音楽が緊密に結びついた後の傑作群の誕生を明らかに予感させる作品であったが、当時のナポリの観衆にはその真価は必ずしも十分に理解されなかったようで、初演は大成功とはいかなかったようだ。

ヴェルディ「ルイザ・ミラー」の作曲に熱中している間、ローマフランス・オーストリア・スペインらの共同軍による進行を受け、1849年7月に陥落した。イタリア統一の夢が遠のいた事に幻滅したヴェルディは、ナポリでの初演が終わると、パリには戻らずに、ストレッポーニを伴って、故郷のブッセートに戻った。

しかし、保守的な田舎町のブッセートで、ストレッポーニの存在とその過去は人々の好奇の眼の格好の的となってしまい、居心地の悪さを感じたヴェルディは、1845年に購入した屋敷に閉じこもるようになる。

「ルイザ・ミラー」の次の作品として、しばしシェイクスピア「リア王」のオペラ化を模索したものの、物語が複雑でオペラには向かないと判断したヴェルディは関心を、その頃初演されたばかりの戯曲「牧師」に向けた。自邸に閉じこもる毎日の中で、シェイクスピアの世界に深く傾倒していたヴェルディは、妻の不義を知った牧師の苦悩を描いたこの戯曲にも強く惹かれたようだ。

こうして、1850年11月に「スティッフェリオ」と名付けられたその新作オペラは、トリエステグランデ劇場で初演されたが、カトリックの国にとってはスキャンダラスな内容が、町の有力者から圧力を加えられ、台本に細かな修正を余儀なくされた結果、その真価が正しくは伝わらなかったようだ。

 Trieste_20130714111400.jpg

スティッフェリオと並行して、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場のために作曲を続けていたもう一つのオペラが、ヴェルディ最初の傑作、「リゴレット」ヴィクトル・ユーゴー「王の悦楽」を原作としたこの作品は「スティッフェリオ」同様、当局の検閲と闘う羽目になる。

王の放蕩を扱った原作自体が初演当時のパリでスキャンダルとなり、上演禁止となっていただけに、ヴェネツィア当局は最初に提出された台本を却下。台本の大幅な変更を頑として受け入れないヴェルディと当局との間に立たされた劇場側の必死の交渉で、最小の変更だけで済んだ台本をベースに完成され、「リゴレット」と題されたこの新作オペラは1851年3月に初演され、センセーショナルな成功を収める事となった。

 La Fenice

しかし、リゴレットの空前の成功のなか、故郷ブッセートにおける彼とストレッポーニに対する視線はますます冷たいものになってきていて、その空気に耐えられなくなった二人は、リゴレットの初演後、サンターガタに購入した広大な農園に移る。

 SantAgata.jpg

周囲の雑音から解放されたヴェルディは、次の新作、「イル・トロヴァトーレ」の作曲に取りかかる。1851年から52年のかけての冬の間、パリに滞在して最新の音楽界の情勢に触れながら、作曲の筆を進めたヴェルディは、このジプシーの老婆の異常な物語を1852年中に完成させ、翌年1月にローマアポロ劇場で初演させ、これも空前の成功を収める事となる。

次に待ち構えていたのは、初演を数週間後に控えたヴェネツィアのための仕事だった。ヴェルディが「私の荒野」と呼んだ冬の荒涼たるサンタガータで台本と向き合い、ジュゼッピーナも構わずひたすら作曲に励んだ彼は、予定よりは遅延したものの、何とか1853年3月には初演にこぎつける。

「リゴレット」を作曲した頃から、従来のオペラでは決して対象となり得なかった特異な人物の、きれいごとではない心の動きを描くようになったヴェルディ、娼婦を主人公においたこの「椿姫」は、初演時こそ、歌手陣の問題もあって期待したような成功を収める事は出来なかったものの、各地で上演を重ねるにつれ、評価は高まる一方で、古今東西のオペラの中でも最も上演頻度の高い作品となった。

歌劇 「リゴレット」
Sinopoli Rigoletto
リゴレット: レナート・ブルゾン (バリトン)
ジルダ: エディタ・グルベローヴァ (ソプラノ)
マントヴァ公爵: ニール・シコフ (テノール)
ジュゼッペ・シノーポリ指揮 ローマ聖チェチーリア音楽院管 (1984年録音)


「椿姫」「トロヴァトーレ」とともに、ヴェルディの中期3大傑作のひとつであるリゴレット

このオペラは異形の道化であるリゴレットを物語の中心に据えた、ヴェルディのそれまでの作品には見られなかった型破りの作品だが、この尋常でない世界が強い緊張感とドラマを生み出す元となっていて、これに聴き手の心に直接突き刺さってくるような音楽がつけられている。

彼の音楽やメロディはどちらかとと言えば単純なのだが、物語が持つドラマを聴き手の心にストレートに伝えてくる音楽。物語は現実離れしているのに、そこで歌われている感情には疑いもなく真実がこもっている、そんなマジカルな世界を作り出している稀有な作品で、特に終幕のラストの四重唱は登場人物それぞれの異なる心理状態が見事に一つの音楽となっていて、本当に心を揺さぶられる。

シノーポリの演奏は、タイトル・ロールのブルゾンをはじめとする粒揃いの歌手陣(特にシコフは彼のレコーディングの中でもベストの出来映え)と、シノーポリの登場人物の心理状況にビビッドに反応した生き生きとした音楽作りで、個人的にはこのオペラの最も好きな録音の一つ。

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北米興行成績 (2013年7月29日)

先週末は人気アクション映画シリーズ、「X-メン」の最新作が登場、前週に驚くべきヒットとなってトップに立った“The Conjuring”に挑戦したが:

① The Wolverine (初登場)
② The Conjuring (第2週、前週1位)
③ Despicable Me 2 (第4週、前週2位)
④ Turbo (第2週、前週3位)
⑤ Grown Ups 2 (第3週、前週4位)
⑥ Red 2 (第2週、前週5位)
⑦ Pacific Rim (第3週、前週6位)
⑧ The Heat(第5週、前週8位)
⑨ R.I.P.D. (第2週、前週7位)
⑩ Fruitvale Station (第3週、前週圏外)


その「X-メン」シリーズの第6弾、“The Wolverine”は興行収入53百万ドルでトップに立ったものの、これはこれまでのシリーズのオープニング成績としては最低のもの。観た人の平均評価はA-と良好なだけに、今後どこまで盛り返す事が出来るだろうか。

      Wolverine.jpg

その他は大きな順位の変動がない中、限定公開でスタートした“Fruitvale Station”が先週末から上映館数を1064館に拡大し、10位にランクインしたのが注目される。

 Fruitvale Station

限定公開作では、ウディ・アレン監督の最新作、“Blue Jasmine”ニューヨークロサンゼルスの6館で公開され、評判が良いようだ。

      Blue Jasmine
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インデアンカレー 〜 大阪発の独特なカレー!

1949年に大阪で創業した老舗カレー店。むかし大阪に出張した際に、昼食でたまたま立ち寄って印象に残った店で、その後丸の内にも出店したので、時々昼に行ったりしていた。大阪出身者にとっては、懐かしい味らしく、いつもお客さんで一杯!

 Indian Curry

一口食べると、まず甘さを感じさせ、その後に辛さが伝わってくる、他にはない独特の味なのだが、妙にクセになる味。久しぶりに食べたが、旨かった!

インデアンカレー
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新しくなったパレスホテルでディナー

2012年5月に全面改装されて再オープンした東京パレスホテル。私にとっては、昔新婚旅行に出発する前に宿泊した思い出の場所で、その後も勤務先のオフィスに近かったので、地下にあったアイビー・ハウスのカレーを何度となく食べに来た懐かしい場所。皇居に面した抜群のロケーションのホテルだが、改装して、一段と素晴らしいホテルになった感。今回は1回にあるダイニング、グランドキッチンにお邪魔してディナー。

 Grand Kitchen 1
 Grand Kitchen 2

伊勢海老を旬の野菜と共に軽くポーチした一品、デザートともなかなか高水準の出来でした!

グランドキッチン
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本日のスイーツ: Financier Patisserie のエクレア

マンハッタンのスイーツ・ショップの中でも、安定したクォリティで評判の良い Financier Patisserie。 これはチョコレートとアーモンド風味のエクレア

 Eclair_20130721100236.jpg

チョコレートにアーモンドの甘みが加わり、普通のチョコレート・エクレアとは違う新鮮さ!
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