生誕200周年記念! ワーグナーの生涯をたどって: その7 〜 バイエルン国王 ルートヴィヒ二世

1864年3月に父王のマクシミリアン二世の後を継いだ弱冠18歳のルートヴィヒ二世。1863年に出版された「ニーベルングの指輪」の序文でワーグナーが、「この作品の上演を実現してくれる君主が果たして現れるだろうか」と締めくくったのを読んで、これを自分の使命と考えるようになっていた。

 Ludwig II

バイエルン国王になって最初に行ったのが、借金取りの追及を逃れて姿をくらましていたワーグナーを探し出す事で、ワーグナーの前にプフィスターマイスターが現れたのもこのためであった。

      Wagner in 1867
      1867年頃のワーグナー

バイエルン国王という強力なスポンサーを得たワーグナーは、早速ベルリンにいたハンス・フォン・ビューロー夫妻の一家をミュンヘンに呼び寄せ、「ニーベルングの指輪」の作曲を再開させる。ビューローの妻コージマは、程なくしてワーグナーの子供を身籠ることになる…

      Cosima von Bulow
      コージマ・フォン・ビューロー

1865年には、長らく上演の目処が立っていなかった「トリスタンとイゾルデ」の初演がバイエルン宮廷劇場で行われ、ビューローの素晴らしい指揮のおかげもあって、素晴らしい成功を収める。

 Tristan und Isolde
 初演時の主役二人

そのような中、ワーグナーに肩入れする国王への反感も強まり、ルートヴィヒはやむなくワーグナーに対し、国外退去命令を出さざるを得なくなる。
 
コージマとその3人の娘を伴ってスイスに移動したワーグナー、1867年10月には「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を完成させる。その間、コージマとの間に次女が生まれ、作曲中だった「マイスタージンガー」にあやかって、エヴァと名付けた (長女はイゾルデと名付けられている)この後、1869年には長男ジークフリートが誕生している。

 Wagner and Cosima

1868年6月にはバイエルン宮廷劇場「マイスタージンガー」の初演が行われ、大成功を収める。続いて中断していた「指輪」の作曲を再開し、71年にはようやく「ジークフリート」を完成させるのだが、4部作の完成を待ちきれなかったルートヴィヒは、ワーグナーの反対を押し切って、「ラインの黄金」「ワルキューレ」の初演を強行する。4部作の一括上演にこだわっていたワーグナーはもちろんつむじを曲げて、バイロイト祝祭劇場での上演に先立つこの記念すべき上演には立ち会わなかった。

      Rheingold.jpg

一方、1870年7月には、ついにコージマビューローの離婚が成立し、ワーグナーは彼女と8月にルツェルンで結婚式を挙げた。この当時のワーグナーの幸福な心境を反映した「ジークフリート牧歌」は、この年の12月、コージマの誕生日のために作曲されている。

楽劇「トリスタンとイゾルデ」
Kleiber.jpg
ワーグナー: 楽劇「トリスタンとイゾルデ」
トリスタン: ルネ・コロ (T)
イゾルデ: マーガレット・プライス (S)
マルケ王: クルト・モル (Bs)
クルヴェナール: ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ (Br) ほか
カルロス・クライバー指揮ドレスデン国立歌劇場管弦楽団・ライプツィヒ放送合唱団
1980~1982年録音


大作「ニーベルングの指輪」の上演の見込みが全く立たないことから、「ジークフリート」の作曲を中断して、作曲した作品。大作上演の難しさを痛感していたワーグナーは、当初小規模で抒情的なオペラの作曲を考えていて、事実ブラジル皇帝の要望に応えて、本作をイタリア語に翻訳してイタリア・オペラとしてリオ・デ・ジャネイロで上演することを検討していたほどだった。

 Rio de Janeiro Opera House

ところが作曲を進めるうちに、構想は膨らみ続けて、結局他の作品に負けず劣らずの大作となってしまった。

 Met_2014090514064879a.jpg
 メトの舞台

作品の長さに反して、少ない登場人物、簡素な舞台のなかで繰り広げられる内容は、ひたすら主人公二人の内面の世界を描き出す内省的なもので、オペラとしては極めて異色なさくひんとなっていて、オペラの枠にとどまらない、まさに楽劇と呼ぶに相応しいもの。

 Bayreuth_20140905140903dc2.jpg
 バイロイト音楽祭での舞台

内省的とは言っても、指導動機の徹底やトリスタン和声と呼ばれる不協和音・半音進行や無限旋律を多用した独特な響きから生み出される音楽はまさに陶酔の極致。当時のワーグナーマティルデ・ヴェーゼンドンクとの不倫が破局を迎えていた事と、傾倒していたショーペンハウアーの厭世哲学の影響が色濃く滲んでいて、現世では決して成就することのない愛を死によって成就させようとする男女の姿を、他の誰もが成し遂げ得なかった方法で描き出している。

 Vienna_20140905141324778.jpg

1974年から76年にかけてバイロイト音楽祭トリスタンを指揮して話題を呼んだカルロス・クライバー。彼の唯一のワーグナーもののスタジオ録音は、1980年から82年にかけてドレスデンで録音されたこのトリスタンで、この音楽に没入し過ぎることなく、精妙な響きで主人公たちの心の動きを繊細に描き出しているのが好ましい。
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