原節子を偲んで 〜 小早川家の秋

日本を代表する女優だった、原節子さんが、先日95歳で亡くなった。私が彼女が出演している映画を見たのは、当然ながら彼女が引退してもう随分経った後だが、「東京物語」(53年)「晩春」(49年)など、巨匠・小津安二郎監督の代表作での、その清楚な立ち居振る舞いは、忘れられない印象を残している。今回は、そのさんを偲んで、これまで観たことがなかった「小早川家の秋」を。

 Setsuko Hara

この作品は、小津監督が、長年所属していた松竹から東宝に招聘されて、1961年に制作した映画。原節子笠智衆ら、当時の「小津組」の俳優さんに加え、森繁久彌新珠三千代など、当時の東宝のスターが大勢出演した事でも、小津監督の作品としては異色作となった。なお、これが原節子が最後に出演した小津作品となった。

      Kohayakawa Poster

京都の造り酒屋・小早川家の跡取り息子だった長男は早くに亡くなり、その未亡人の秋子(原)に親戚の北川(加東大介)が再婚話を持ってくる。相手の磯村(森繁)は鉄工所の社長で男やもめだが、ちょっとお調子者。

 Kohayakawa 1

一方で、次女の紀子(司葉子)も婚期を迎えて縁談が持ち込まれるのだが、彼女は大学時代の友人で、札幌に転勤することになった寺本(宝田明)に思いを寄せていて、縁談には気乗りがしない。

 Kohayakawa 2

一方、小早川家の当主・万兵衛(中村鴈治郎)は最近、行き先も告げずにこそこそと出かけることが目立つようになった。心配する長女の文子(新珠)とその夫の久夫(小林桂樹)に言われ、店員の丸山(藤木悠)が後を尾けるが、万兵衛に気づかれてしまう。文子の心配通り、万兵衛はかつての愛人・佐々木つね(浪花千栄子)とその娘・百合子(団令子)の家に通っていたのだった…

 Kohayakawa 3

当時の東宝のスターが綺羅星のごとく出演している事からも、東宝の並々ならない意気込みが感じられる作品だが、映画としては、老いらくの恋に走る老人を中心に、それを取り巻く人々の狂想曲といった趣きの映画。

 Kohayakawa 4

但し、決して騒々しい映画にならず、軽やかながら、常に映画に気品が漂っているのが、さすが巨匠の技といったところ。独特のローアングルで、磨き抜かれた構図が醸し出す映像の美しさは比類がなく、本当に引き込まれる。但し、アドリブを得意とする俳優だった森繁久彌にとっては、小津流の考え抜かれた演出は馴染めず、かなり反抗して現場を困らせたらしい。

 Kohayakawa 5

アンサンブル・ドラマなので、原節子が中心になっているわけではないのだが、やはり彼女が画面に現れると、映画の気品が上がる感じがする。やはりオーラを持った女優さんなのだろう。明るく、清楚で、上品ぶっているわけでは全くないのに、気品がある。こういった女優さんは今はいなくなってしまった… 映画は、肩の力が抜けた小津作品としてなかなかのもの。 ⇒ 8/10点

 Kohayakawa 6

小早川家の秋
(1961年・日本)
監督: 小津安二郎
キャスト: 原節子、司葉子、新珠三千代、中村鴈治郎、小林桂樹、森繁久彌、加東大介、宝田明、浪花千栄子、団令子、藤木悠、白川由美、山茶花究、杉村春子、望月優子、笠智衆、東郷晴子、島津雅彦、遠藤辰雄、内田朝雄 ほか
上映時間: 103分
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