トリスタンとイゾルデ @ メトロポリタン・オペラ 〜 メトのシーズン開幕!

メトの新シーズンもいよいよ開幕。今シーズンのオープニングは、ワーグナーの大作、「トリスタンとイゾルデ」

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そのトリスタンポーランドの演出家、マリウシュ・トレリンスキの手になる新演出で、指揮にはなんとサイモン・ラトルイゾルデには満を持してニーナ・シュテンメというメトらしい豪華な布陣!

      Tristan 02

2010年〜11年シーズンのメト・デビュー(ペレアストメリザンド)以来の登場となったラトル。すでにバーデン=バーデン・イースター音楽祭ベルリン・フィルの演奏会(演奏会形式上演)でもこの作品を取り上げてきているし、2010年のプロムスでは、ピリオド楽器のオケを率いて第2幕を演奏したりしているのだが、予想通り、ロマンチックな演奏とは対極にあるような音楽作りで、各声部が明瞭に聞き取れる精妙で室内楽的な響きで、テンポの伸び縮みは勿論あるし、迫力も十分なのだが、全体的にすっきりと、決して重くならないように音楽が流れていく印象。従来のワーグナー演奏のイメージとは一線を画しているところが、いかにもラトルらしく、これはこれで私は好ましく思ったのだが、分厚い響きで押す前音楽監督のジェームズ・レヴァインの演奏に慣れたオールド・ファンにはかなり違和感があったようで、第2幕が終了した際には、メトとしては珍しくブーイングが出ていた。

 Tristan 03

さて、ラトルと共に大きな期待がかけられたイゾルデ役ニーナ・シュテンメ、昨シーズンの「エレクトラ」メトに久々に登場して絶賛を博したのが記憶に新しいが、今回の公演でも、今を代表するワーグナー歌手としての力量を遺憾なく発揮した素晴らしい歌唱だった。

 Tristan 04

彼女の美点は、フォルテでも決して声が粗くならず、低音域から高音域まで、暖かみのある美しい声質でムラなく歌い上げる事が出来る事。オーケストラがフォルティッシモで鳴っていても、それを突き抜けて声が伸びていくのを聞くと鳥肌が立つ感動で、ラストの「愛の死」など、情感のこもった名唱だった!もっとメトに出演して欲しいソプラノの一人だが、残念ながら今シーズン以降の出演は決まっていないようだ。

 Tristan 05

トリスタン役は、オーストラリア出身で、最近ヘルデンテナーとして頭角を現してきているスチュアート・スケルトンで、イゾルデ役以上に難役と言われるこの役を、スタミナ切れになる事なく、最後まで歌い切る健闘ぶり。

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決して強靭で力強い声というわけではなく、どちらかといえば叙情的かもしれないが、良く通る声で、声を張り上げる事なく歌えるところが彼の美点。第3幕第1場、30分近くにわたって歌い続けるテノール殺しの場面など、エネルギーが切れて絶叫調になるテノールも見られる中、しっかりと歌い上げていたのは見事!

 Tristan 07

主役二人以外で、相変わらず好きのないメトらしい配役陣の中でやはり印象に残ったのが、マルケ王役のルネ・パーペで、深々とした声でマルケ王の哀しみを見事に歌い出していた。

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ブランゲーネ役のエカテリーナ・グバノヴァクルヴェナール役のエフゲニー・ニキーチンらもそれぞれ手堅い歌唱で脇を固めていた。

 Tristan 09
 Tristan 10

メトの2014年〜15年シーズンの「イオランタ/青ヒゲ公の城」の演出が高い評価を得たマリウシュ・トレリンスキの舞台は既に今年のバーデン・バーデンでのイースター音楽祭でプレミエ上映が行われたもので、時代設定をより新しい時代に移し、映像や客席も含めた照明ワークを多様した現代的な演出で、特にトリスタンイゾルデ二人の心理状態を浮かび上がらせようとした意図が見えるものだが、個人的には訴求力がやや弱く、必ずしも説得力のあるものではなかったように思われた。

 Tristan 11

それにしても2回の休憩を挟んで5時間強の長丁場。こんな事を言ったら世のワグネリアンの方たちに間違いなく叱られると思うが、ワーグナーの作品を聴くと、もう少し短い時間で自分が語りたい事を語れないのかと思ってしまう。自分の天才さをこれでもかと展開しようとする、一種の自己顕示欲の強さをその音楽に感じるのは私だけだろうか(もちろん素晴らしい作品なのですが)。。。

 Tristan 12

Tristan und Isolde (1865年、ミュンヘン・宮廷劇場にて初演)
演出: Mariusz Trelinski
指揮: Sir Simon Rattle
Isolde: Nina Stemme
Tristan: Stuart Skelton
Brangane: Ekaterina Gubanova
Kurwenal: Evgeny Nikitin
King Marke: Rene Pape
Melot: Neal Cooper
A Shepherd: Alex Richardson
A Sailor's Voice: Tony Stevenson ほか
2016年10月8日、メトロポリタン歌劇場


⇒ ラトルのメト・デビューとなった「ペレアスとメリザンド」感想

⇒ トレリンスキ演出のメト「イオランタ/青ヒゲ公の城」感想

⇒ パーペ出演のメト「マクベス」感想

⇒ シュテンメ出演のメト「エレクトラ」感想

⇒ グバノヴァ出演のメト「アンナ・ボレーナ」感想
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