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イリーナ・メジューエワさんのピアノ名曲案内: その8 〜 シューマンのトロイメライ

人気ピアニスト、イリーナ・メジューエワさんの著書「ピアノ名曲案内」に沿って、本で紹介された曲を聴いていくシリーズの第8回、8月はシューマンのピアノ曲集「子供の情景」からあまりにも有名な「トロイメライ」

 Mejoueva_201809082303193ed.jpg

メジューエワさんによると、シューマンロシア人が好きな作曲家の一人だそうで、その音楽に込められているロマンチックな気質がロシア人の心情に合うらしい。シューマンの音楽を比較的早くに評価したのも、ムソルグスキーリムスキー・コルサコフロシア5人組の作曲家達だそう。

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 ムソルグスキー

ドイツの作曲家にしては珍しく、伝えたい内容が形式に収まりきらないという点でも、ラフマニノフチャイコフスキーなど、ロシアの作曲家に通ずるものがあるとの事だが、確かにシューマンの、特にピアノ曲を聴くと、音楽が古典派の作曲家が発展させてきた音楽形式に収まりきらないという点が、なかなか曲の印象を捕まえづらいという事に通じているように感じられる。同時代のショパンの曲はすぐに耳に馴染むのだが、シューマンのピアノ曲が(個人的に)とっつきにくいと感じるのはそのせいだろうか。

 Schumann.jpg
 シューマン

そうしたシューマンの音楽、特にピアノ曲の中でも、平易な内容で一番親しまれていてるのが、子供の情景

 Schumann_2018090823381735c.jpg

クララ・ヴィークとの結婚を控えた幸福な時代を反映しているかのように、シューマンの作品の中では比較的平易な曲想で、穏やかさと優しさが感じられる曲集だが、メジューエワさんが言っているように、子供が弾くために書いた曲というより、大人が子供を見つめて作曲した、大人のための音楽といった趣き。

      Robert and Clara

全曲中、最も有名なトロイメライは、そのロマンチックな曲想が素晴らしく、小品ながら名曲というにふさわしい作品。

メジューエワさんは、ここではそのトロイメライにフォーカスを当てているが、私は全曲を聴いての感想。聴いたのは次の4枚:

アルフレッド・コルトー盤 (1953年 録音)
Cortot.jpg

メジューエワさんが第一に推薦しているのが、往年のフランスの名ピアニスト、アルフレッド・コルトー(1877〜62年)の演奏。私が入手したのは、彼の晩年、1953の録音。コルトーといえば、ミスタッチの多さや個性的なテンポ・ルバートが有名だが、初めて聴いたこの録音(実はコルトーの演奏を聴くのもこれが初めて!)では、曲が平易であるせいか、ミスタッチも目立たない。コルトーを特徴づけるテンポ・ルバートもそれほど目立つわけではなく、割合かっちりと弾いている感じだが、その中から曲に込められたロマンが立ち上ってくる様は感じられる。

 Cortot_20180909001031c6a.jpg

ただ、残念ながらメジューエワさんが「子供の情景といえばコルトー」とコメントされているほどのものは感じられなかったので、念の為、ユーチューブで彼の1930年代の演奏を聴いてみたら、こちらの方がテンポの取り方やメロディーの歌わせ方・呼吸の取り方が自由で、断然ロマンに満ち溢れている感じ。これを聴くとメジューエワさんのコメントも理解できます。

ウラディーミル・ホロヴィッツ盤 (1987年 録音)
Horowitz the Poet

同じく推薦盤に挙げられているのが、ホロヴィッツのもの(この他にはシュナーベルハスキル)。私が持っているのは前回ご紹介したシューベルトの晩年のソナタのCDに一緒に入っている、晩年のライブ盤だが、こちらもシューベルトと同じく飄々と、軽やかに弾かれた演奏だが、その中からシューマンがこれらの小曲の一つ一つに込めたロマンや詩情が溢れんばかりに立ち上ってくるのが素晴らしい! この演奏には本当に魅了された。

 Horowitz_2018090900401374a.jpg

この他に私が持っていたのは次の2枚:

マルタ・アルヘリッチ盤 (1983年 録音)
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ダイナミックで切れ味の鋭い演奏で知られるアルヘリッチだが、この演奏は殊の外柔らかいタッチで弾いたアルヘリッチとしては優しさが感じられる演奏。CDのジャケットで見せる優しい表情とマッチしている。その中でも、やはり第3曲「鬼ごっこ」・第6曲「重大な出来事」・第9曲「木馬の騎士」などでは、持ち前のダイナミックさ・スケールの大きさが発揮され、何やら曲のスケールまで越えてしまった感じも。素晴らしい演奏だと思うが、トロイメライなどは、やはり詩情に満ち溢れたホロヴィッツの演奏の方が好き。

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田部京子 盤 (1999年 録音)
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田部京子さんの録音は、遅めのテンポで、丁寧に丁寧に弾き進められていくような感じの演奏。トロイメライなど、1音1音を慈しむかのように弾かれているのが興味深い。第3曲の「鬼ごっこ」は、聴いた中では一番鬼ごっこの感じが出ている演奏で、思わず微笑ましくなった!

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今回聴いた4種の演奏の中で気に入ったのはやはりホロヴィッツ。本当にロマン溢れる素晴らしい演奏だと思いました!
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