ロメオとジュリエット @ メトロポリタン・オペラ 〜 注目の新演出とスターの地位を確立したヴィットリオ・グリゴーロ

あまりにも有名なシェイクスピアの名作をオペラ化したグノーのロマンチックな作品、ロメオとジュリエット。比較的マイナーなオペラの割にはメトでは人気の高いこの作品、2011年以来6年ぶりとなる今シーズンの舞台はバートレット・シャーによる新演出となった。

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今回の恋人たちを演じるのは、ヴィットリオ・グリゴーロディアナ・ダムラウという、注目の顔合わせ。

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まずはロメオ役のグリゴーロ「パヴァロッティ2世」との触れ込みで登場した2010年のメト・デビュー(ラ・ボエ−ム)時は、声のコントロールが十分ではなく、やや不安定な歌いぶりだったが、最近は安定感が増し、今回は持ち前のイタリアン・テナーらしい美声と豊かな声量で、若々しく情熱的にこの役を歌っていた!

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そしてジュリエット役のダムラウ。いつも安定感抜群の彼女なのだが、今回は声帯がやや疲れているような感じで、高音域で少し声が硬くなり、詰まり気味に聞こえるなど、ムラのある歌いぶりと感じたが、それでも存在感はさすがで、情感豊かにこの役を歌いきっていた。

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ロマンチックなデュエットのシーンなどは二人の息もピッタリで聴きごたえ十分、よほど満足のいく舞台だったのか、終演後にグリゴーロが思わずダムラウを抱き上げたほど!

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基本的にこの二人中心に展開されるオペラだが、脇を固める歌手陣もローレンス神父ミハイル・ペトレンコらが手堅い歌唱で主役を盛り立てていた。中でも、狂言回し的存在のステファーノ役のヴィルジニー・ヴェレスの伸びやかな歌唱が印象的だった。

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指揮は日本でもおなじみのジャナンドレア・ノセダ。フランス音楽のイメージはあまりない人だが、持ち前のダイナミックな音楽づくりはそのままに、グノーのロマンチックな旋律もよく歌わせていた。

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メトでもすっかりおなじみの存在のシャーの舞台は、すでに2008年のザルツブルク音楽祭でプレミエ上演され、ミラノ・スカラ座などでも上演されたものだが、少し平凡な感じだろうか。個人的には、以前のギイ・ ヨーステンのロマンチックさ満点の舞台の方が好み。

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今回の上演で、グリゴーロの時代を担うイタリアン・テナーとしての地位を確立させた感じ。今後も楽しみです!

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Romeo et Juliette (1867年、パリ・リリック劇場にて初演)
演出: Bartlett Sher
指揮: Gianandrea Noseda
Juliette: Diana Damrau
Romeo: Vittorio Grigolo
Frere Laurent: Mikhail Petrenko
Stephano: Virginie Verrez
Tybalt: Diego Silva
Paris: David Crawford
Capulet: Laurent Naouri
Mercutio: Elliot Madore
Gertrude: Diana Montague
Gregorio: Jeongcheol Cha
Benvolio: Tony Stevenson ほか
2017年1月21日、メトロポリタン歌劇場


⇒ 2011年公演感想

⇒ シェア演出のメト「オテロ」感想

⇒ グリゴーロ出演・シェア演出のメト「愛の妙薬」感想

⇒ ダムラウ出演メト「真珠採り」感想

⇒ ペトレンコ出演・シェア演出のメト「セヴィリアの理髪師」感想

テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

セヴィリアの理髪師 @ メトロポリタン・オペラ 〜 カマレーナ最後の伯爵役!

今やすっかりメトの人気舞台の一つとなった、バートレット・シャー演出のセヴィリアの理髪師

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今シーズンは、アルマヴィーヴァ伯爵に今やすっかりスターとなったハヴィエル・カマレーナフィガロにこの役を得意とするペーテル・マッテイ、ロジーナに、近年注目を集めている南アフリカ出身の新星、プリティ・イェンデという、メトならではの豪華キャスト!

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やはり注目は、今回のメト公演を最後に、アルマヴィーヴァ伯爵役から引退すると宣言しているカマレーナ。あのフローレスをも凌ぐ力強いコロラトゥーラで一躍スターダムに上がった彼だが、私が行った日はやや不調だったのか、声のコントロールにムラがあったような印象。それでもメトパヴァロッティを超える3度のアンコールに応えた輝かしく伸びやかな美声はやはり素晴らしく、観客から盛大な拍手を浴びていた。この後に控えている清教徒も楽しみ!

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フィガロ役のマッテイも、声の威力は相変わらずで素晴らしい歌唱。いつもに比べ、少し歌が粗い感じもしたが、最近はなかなか彼のようなフィガロの歌唱には出会えない!

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本来はメゾソプラノ役のロジーナを歌ったのは、リリック・ソプラノとして最近注目を集めている南アフリカ出身のプリティ・イェンデ。伸びやかな美声はなかなかのものだが、この役は私としてはメゾソプラノの方が好み。。。

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ドン・バルトロ役のマウリツィオ・ムラーロドン・バジリオ役のミハイル・ペトレンコはそれぞれ芸達者ぶりを存分に発揮していて、こういったところにも隙がないのが、メトの凄いところ!

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指揮はメトロッシーニものをほぼ一手に引き受けている感があるベテランのマウリツィオ・ベニーニ。彼の指揮ではすでにこのオペラを数回聴いているのだが、今回は速い部分が妙にせわしなく早すぎる感があり、音楽の収まりが悪い印象。どうしたのだろうか。

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Il Barbiere di Siviglia (1816年、ローマ・アルジェンティーナ劇場にて初演)
演出: Bartlett Sher
指揮: Maurizio Benini
Figaro: Peter Mattei
Rosina: Pretty Yende
Almaviva: Javier Camarena
Dr. Bartolo: Maurizio Muraro
Don Basilio: Mikhail Petrenko ほか
2017年1月18日、メトロポリタン歌劇場


⇒ 2014年公演感想

⇒ ベニーニ指揮のメト「ロベルト・デヴリュー」感想

⇒ マッテイ出演のメト「タンホイザー」感想

⇒ カマレーナがアンコールに応えたメト「ドン・パスクワーレ」感想

テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

ナブッコ @ メトロポリタン・オペラ 〜 全盛期のレヴァインを思わせる熱演!

2016年最後のメトでのオペラは、ヴェルディの出世作、ナブッコ

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今回の上演は、前音楽監督のジェームズ・レヴァインに、タイトル・ロールにはプラシド・ドミンゴという、かってのゴールデン・コンビの共演が目玉だったのだが、ドミンゴヴェルディ・バリトン役にどうしても違和感を拭えない私は、ジェリコ・ルチッチが出演した日を選択。

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そのルチッチだが、声の威力はなかなかなのだが、相変わらず感情表現の幅が感じられない薄口の歌唱。2015年11月のリゴレットでは、一皮むけたかと思われたのだが、また元に戻ってしまったようで残念。やはりドミンゴの回にすればよかったか…

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ナブッコと並んで、このオペラで重要な役割を果たすアビガイッレ役ウクライナのソプラノ、リュドミラ・モナスティルスカ。私が彼女を聴いたのはメト・デビューだった2012年12月のアイーダ。その後もメトに出演していたにもかかわらず、何故か聴く機会に恵まれなかったのだが、今回久しぶりに彼女の歌唱を聴いたが、持ち前のスケールの大きさ、声の美しさに加え、この役に必要な激しい感情表現も十分で印象深かった!

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この他、フェネーナ役ジェイミー・バートンイズマエーレ役ラッセル・トーマスザッカリア役ドミトリー・ベロセルスキーは、それぞれ安定した歌唱。特にトーマスの伸びやかな歌声が好ましかった。

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実はこの日一番目立ったのは指揮のレヴァイン。全盛期を彷彿とさせる気力みなぎる音楽作りで、ヴェルディの雄弁な音楽をものの見事に表現していた! この前聞いた「アルジェのイタリア女」では、音楽に生気が欠ける印象を受けたのが気がかりだったのだが、少し安心。

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そして忘れてはならないのが合唱。イタリアの第二の国家と言われる「わが想いよ、金色の翼に乗って行け」メトの合唱団が感動的に歌ってくれて、観客の盛大な拍手に応えてアンコールも!2001年にプレミエ上演が行われたエリジャ・モシンスキーの大がかりな舞台は、この作品のスケールにふさわしいものと感じられる。

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Nabucco (1842年、ミラノ・スカラ座にて初演)
演出: Elijah Moshinsky
指揮: James Levine
Nabucco: Zeljko Lucic
Abigaille: Liudmyla Monastyrska
Fenena: Jamie Barton
Ismaele: Russell Thomas
Zaccaria: Dmitry Belosselskiy
2016年12月30日、メトロポリタン歌劇場


⇒ 2011年10月の前回上演感想

⇒ ルチッチ出演のメト「サロメ」感想

⇒ モナスティルスカ出演のメト「アイーダ」感想

⇒ レヴァイン指揮のメト「アルジェのイタリア女」感想

テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

サロメ @ メトロポリタン・オペラ 〜 パトリシア・ラセット渾身のサロメ

今回のメトは、2008年〜09年シーズン以来8年ぶりの上演となるR・シュトラウスのサロメ。前回赴任時にもなぜかサロメは上演されなかったので、メトで聴くのは今回が初めて!

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今回のサロメでは、アメリカ出身だがドイツの歌劇場を中心に活躍しているキャサリン・ネーグルスタッドの注目のデビューが予定されていたのだが、残念ながら病気でキャンセル。代わって、メトではおなじみのパトリシア・ラセットサロメ役を務める事になった。

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メトで様々な役をこなし、常に安定したパフォーマンスを披露しているイメージの強いラセットだが、最近はその声にも衰えが見えてきた中、ソプラノの役の中でも名うての難役を、しかも代役としてのチャレンジ! サロメといえばドラマティック・ソプラノの役だが、同時に少女らしさも表現しなければならない難役、ラセットは声の威力では物足りないが、決して無理をしない歌い方で、それでいて感情表現には気迫がこもっていて、まさに入魂の歌唱! 彼女の最近の歌唱としてはベストと思わせる出来だった!

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ヨカナーン役ジェリコ・ルチッチ。2015〜16年シーズンのリゴレットで、感情表現に深みを見せ、一皮むけたと思わせたのだが、今回は、また昔の味の薄い歌い方に戻ってしまった感じで残念。但し、この役はそういった難しい感情表現が要求されるわけでもないので、それほど気にならなかったのも事実ではあるが。

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ヘロデ王役ドイツのテナー、ゲルハルト・シーゲルはこの役を得意にしているだけあって、安定した歌いぶり。

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その他の歌手陣で目立ったのはナラボート役中国の若手テナー、カン・ワンで、オペラ前半だけの出演ながら、若々しい美声が印象的だった。

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指揮はトロントカナディアン・オペラ・カンパニーの音楽監督を務める Johannes Debus。こちらはまとまった音楽作りだとは思ったが、どことなく特徴がなく、可もなく不可もなしといった印象。

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2004年にプレミエ上演が行われたユルゲン・フリムの舞台は、時代設定を紀元前から近代に移し替えたものだが、はっとさせるような場面はなく、やや凡庸に感じられるものの、退廃的な雰囲気は十分伝わってきて特に違和感は感じさせない。サロメが有名な「七つのヴェールの踊り」の前にキャバレーの歌手みたいなタキシードに着替えてから踊り出すのは面白い。

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Salome (1905年、ドレスデン・宮廷劇場にて初演)
演出: Jurgen Flimm
指揮: Johannes Debus (デビュー!)
Salome: Patricia Racette
Jochanaan: Zeljko Lucic
Herod: Gerhard Siegel
Narraboth: Kang Wang (デビュー!)
Herodias: Nancy Fabiola Herrera ほか
2016年12月17日、メトロポリタン歌劇場


⇒ ラセット出演のメト「道化師」感想

⇒ ルチッチ出演のメト「リゴレット」感想

⇒ シーゲルがヘロデ王を歌ったウィーン国立歌劇場演奏会 感想

テーマ : オペラ
ジャンル : 音楽

遥かなる愛 @ メトロポリタン・オペラ 〜 印象深い現代オペラ

毎シーズン、必ずレパートリーに現代オペラを1作入れてきているメト、今シーズン上演されたのはフィンランドの女流作曲家カイヤ・サーリアホ「遥かなる愛」

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レバノン出身の作家アミン・マアルーフの脚本をベースに、2000年のザルツブルク音楽祭で初演されたこのオペラ、今回がメト初演で、演出はメトリング・シリーズを手掛けたシルク・ド・ソレイユ^のロベール・ルパージュ

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12世紀のフランス・アキテーヌ地方現リビアのトリポリ、それに海を舞台に展開されるこのオペラ、アキテーヌ・ブライユの領主ジョフレ・リュデルは、貴族階級の享楽的な生活に嫌気がさし、永遠かつ真実の愛を渇望していたところ、海を渡ってきた巡礼の旅人から、まさにリュデルの望むような女性(トリポリ女伯クレマンス)が遥かなるトリポリに存在する事を知る。

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クレマンスへの想いが募ったリュデルは遠いトリポリまで彼女に会いに行く事を決意するが、トリポリまでの船上でリュデルは、愛する人への渇望と、現実にその人と会う事への恐れとの間で苦悩する。苦悩のあまり重い病気にかかったリュデルは、瀕死の状態でトリポリにたどり着く…

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中世の吟遊詩人が語る叙事詩のように物語が語られていき、ドビュッシーペレアスとメリザンドにも世界が通じるように感じられるこのオペラ、とにかく繊細で独特な響きの音楽が印象的で、一見起伏があまりないようなストーリーにも関わらず、ドラマの展開にぴったりと寄り添いながら、聴き手を最後まで引っ張っていく凝縮力が凄い!

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リュデル役はメトでの活動を着実に広げてきているアメリカのバス・バリトン、エリック・オーウェンズリュデルの繊細さと情熱を良く表現し、なかなかの歌唱!

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クレマンス役はこれもメトでの活動の幅を着実に広げてきているアメリカのソプラノ、スザンナ・フィリップスで、こちらも声の美しさを生かしてしっとりとこの役を歌い上げていた。

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巡礼の旅人役はアメリカの中堅ソプラノ、タマラ・マムフォードで、こちらも手堅い歌唱。

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オペラに登場する人物は3人だけなのだが、合唱が効果的に使われていた。LED照明を駆使した海の間から顔を出して歌う様はなかなか幻想的であった!

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指揮は、最近注目を集めているフィンランド出身の女性指揮者、スザンナ・マルッキ。メトの指揮台に上がった4人目の女性指揮者との事だが、統率の取れた指揮ぶりで、オーケストラから色彩豊かな音楽を引き出していて印象的だった。彼女はこの秋、ジュリアードのオーケストラにも客演していて、ニューヨークの音楽シーンでも急速に名前を知られてきている。

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約4万個のLEDライトを使用した海をセットの中心に据えたルパージュの演出は、今の時代らしいビジュアルを重視したもので、やはり出身のシルク・ド・ソレイユの舞台を彷彿とさせるもの。このオペラのストーリーにはピッタリの幻想的な舞台だった。

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久しぶりに素晴らしい現代オペラを観ることが出来たという感じ。もう一度観たいという作品にはなかなか出会えないのだが、この作品は是非メトで再演して欲しいと思いました!

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 左から脚本のマルーフサーリアホ

L'Amour de Loin (2000年、ザルツブルク音楽祭にて初演)
演出: Robert Lepage
指揮: Suzanna Malkki
Jaufre Rudel: Eric Owens
Clemence: Suzanna Phillips
The Pilgrim: Tamara Mumford
2016年12月10日、メトロポリタン歌劇場


⇒ メトの2014-15年シーズンに上演された「クリングホッファーの死」感想

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